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3-77.「今朝はいつもとは違う」

 浴場で体を綺麗に洗われた俺は、その後自室に戻りソファーで寛いでいた。


 帰ってきた時には既にローザ。サーシャ。ミゲルの3人が待機しており、俺は優雅に2種類目の眠気覚ましの紅茶を飲んで朝食までの時間を過ごしている。


 起きてから一時間程使用し続けている目と頭を休める為、ソファーに着いてからローザが真っ先に用意した紅茶に口を付け瞼を閉じる。

ーー味はいつも通り美味しい。しかし飲み過ぎて朝食が入らなくなってはいけないので、今飲むのはこの一杯だけ。茶菓子も用意させない。


 そしてふと、紅茶を注いだローザらを見ると、いつもはメイドや執事らしく静かに立っている3人が何か言いたげな様子だ。


「おはようローザ、サーシャ、ミゲル。何か私に伝えたい事でもあるのか?」


「「「おはようございます殿下」」ーーはい、私達は殿下の仰られた通り今朝の件で伝えたい事がございました」


「そう。聞くから話しなさい」


 朝の挨拶を揃えた3人は顔を見合わせ、ローザが代表して話を続けた。

 何かあったのだろうか?


「エマさんを除いた私達三名は、昨夜早い時間に休みを頂いたのに、殿下が起きられた時間に御部屋に居らず部屋で眠っておりました。

 常に殿下に仕えるという私達の務めを怠る事になってしまいました、本当に申し訳ございません」


 エマというのは婆やの名前だ。


 3人は割と幼い頃からいつも俺の起きる頃には部屋に居た。取り敢えず目醒めてから今までは皆勤賞だ。

 彼女らは「務めを怠った」事を重視しているけど、


「ふぅん……そうか、」


 そうでもない俺はこんな感想だ。


 だってただ俺が早寝早起きした結果、ローザ達が起きるのが後になっただけなんだから。

 それに婆やは居たので問題もなかった。


「私は問題にしていないから気にするな。

 婆やにはお前達を早く起こさないように伝えていたし、今朝の私の起床時間の方が早いのは当然の事だ。それに、お前達のいない静寂な朝を体験出来たのは有意義だったんだ」


 どうせ「早い時間に休みをいただいた」と言っても、俺が眠った後に他の仕事を終えてからだったんだろう。なので私の起床時間が早かったのは当然だ。

 ローザ達はいちいち改まって話すから、事態が大事なのかと思ってしまうんだよ。


「そして私が早く起きられなくなるから、お前達は過度に気にするな。良いな?」


「はい」


 本当に申し訳なさそうだったので軽く威圧を加えて、無理やり同意を促した。


 これで3人が同意してくれたから良かったものの、もし頑なだったら早起きする度に今の会話をしなきゃいけなかった。いや俺の威圧を加えた命令に反する事は、この3人に限ってはないだろう。

 もし起これば、それは相当重要な案件の裏付けだ。


 俺が話を終わらせ、話し相手のローザが一歩下がったところでこの話題は終了となる。


 俺はローザが淹れた一杯の紅茶を飲み終え、ソファーから立ち上がった。

 そして自身の胸元辺りに指を当ててローザ達に別の話題を話してみる。


「今朝はいつもより少しだけ早く朝食に向かうとしよう」


 俺が着ている服は『寝て起きてお風呂から上がって、自室に戻って紅茶を飲んでいた間ずっと寝間着』だった。


「わ、分かりました」


 皆、俺の意図を理解して着替えの準備を進める。


 いくら早起きして朝食まで4.50分あると言っても、今の俺には朝自宅以外に時間を潰せる手段もない。

 ふと触れた寝間着の感触が気持ち良かったから摘んでみて、そのふわふわ柔らかい質感を楽しんでいたら準備出来たようだ。


 ローザとサーシャの2人がかりで俺から寝間着を脱がして、ミゲルが持っている服をまた2人が着せていく。

 上半身は下着の上にシャツが着せられ下半身は下着の上に黒地のズボンを履く。

 先程風呂に入ったからがいつもの顔を拭く行程はないが、靴を脱いで靴と靴下を履き替え、シャツの上着を着せてもらう。


 そして最後に用意されているアクセサリーの中から、リズとお揃いのネックレスを飾らせる。

 昨日リズが熱弁してくれた。大きな宝石がはめ込まれた、お揃いの指輪を左手人差し指に付ける。


 昨日は大きくて邪魔だからと付けるのをやめたけど、リズの説明とそれを語るリズ自身を見ていたらなんだか飾りたくなったのだ。

 しかし食事の際に指輪が汚れてしまうかもしれない。俺ははめた指輪を抜いて箱に戻した。


「私が部屋に戻ってきたらその指輪を用意しろ」


「承知致しました」


 着替え終えた俺は机の前に座る。

 ガーベラ王女の支度が終わると思われる時間まで読み慣れた、現在の『アテン・ザ ・ミステル』の貴族家などの情報が書かれた書類に目を通した。





 俺は昨日よりも3分くらい早い時間に、ガーベラ王女の部屋を訪ねた。


「おはようございますガーベラ様。手をとり下さい、早速朝食に向かいましょう」


「はい。ジークエンス様おはようございます」


 ガーベラ王女もこの時間で準備出来ていたようで、カーテシーの後俺の手をとり共に食卓の部屋に向かった。


「今日のドレスもガーベラ様に良く似合っています。赤と黒のドレスでガーベラ様の美しさが引き立てられて、より美しいですよ」


「あ……ありがとうございますジークエンス様。このドレスも陛下とセシリア様より戴いたドレスのうちの一つで私も気に入っています」


 顔を、髪と赤色のドレスと同じ赤色に染めて褒め言葉を受け取ってくれるガーベラ王女。


 ガーベラ王女が着ているドレスは赤が基調で、黒色で細い線の模様が描かれている。

 着ているドレスはほとんどが赤色基調の服だけど、本当にガーベラ王女は美しい。


 と、心の内外問わず彼女を褒めていたら食卓のに到着した。 


 扉を開いて席に座って既に部屋に居たアシュレイ姉様。入って来たリズ。セシリア母様とステイシア母様。に2人で一緒に挨拶をして、最後に入って来た父様には立ち上がり朝の挨拶をする。


「あぁ、おはよう。それでは早速朝食にしようか」


 皆の言葉に答えた父様も席に座り、父の言葉に沿うように朝食が運ばれて来た。

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