3-75.「成人式まで残り2日」
あー、今夜の夕食も美味かった。
俺は紅茶で口を潤しながら、静かな食後の時間が終わるのを待っていた。
ここ最近夕食は連日コース料理が続いてて、今夜のメニューも国内産の食材が使われた料理は美味しかった。
じっくり味わえば、食べ慣れている料理だって改めて美味しく感じるんだ。
今日みたいに料理をじっくり味わった日はホントに、転生したのが大国の王子で良かったなと思う。
日常的にこんな美味しい料理を食べられるのは、この国の王族くらいだろうから。
「今日も美味しい食事であった」
一番最後に食事を終え、メイドに口許を拭われた後の父様の食事終了の宣言。
父は最後に紅茶を一口口に付けてから席から立ち上がり、退出する。
母様達や姉様もそれに続き俺もガーベラ王女の手をとって、リズも誘おうと妹の方に目を移した。
「お兄様……よろしいでしょうか?」
その俺の目の前にはリズが、自分の右手を俺に伸ばした妹が居る。
一緒に部屋までエスコートしようと思っていたけど、リズも部屋まで俺に送って欲しかったみたい。俺は小さなその手をとった。
「先にリズを部屋まで部屋まで送ろう、ガーベラ様もそれで構いませんか?」
「私はそれで構いません」
一応。俺の右手をとっているガーベラ王女に、目配せして聞いて了承を取る。
よって俺が連れ歩くメンバーは、行きと同じくガーベラ王女とリズの2人……と3人分のメイド達となった。
右手のガーベラ王女と左手のリズと一緒に、俺たちは食卓の部屋を出でリズの部屋は向かった。
◇
「リズの部屋まででしたら私も同行しましょう」
部屋を出てリズの部屋に向かう第1歩目。踏み出した3人の前に、俺たちが部屋を出るのを待っていたらしいアシュレイ姉様がいた。
そんな訳で両手が埋まっている俺と、アシュレイ姉様がリズとガーベラ王女と一緒にリズの部屋まで向かう事となり今も一緒に歩いている。
リズの部屋までは長くない道のりだ、互いの衣服を褒め合う会話をしてる間に部屋に到着した。
「おやすみなさいお兄様。お姉様。ガーベラ様」
「おやすみリズ」
「お休みなさい。」
「おやすみなさいリズ様」
リズに「おやすみ」の挨拶をしながら手を振って、リズも俺たち3人に手を振って返してくれる。ガーベラ王女も少し遅れてだがお休みの言葉をかけていた。
そしてリズはメイドのアリスが開いた扉を進んで自室に戻った。
「私も部屋に戻ります、2人ともおやすみなさい」
「分かりました。それではお休みなさいお姉様」
「私も分かりました」
アシュレイ姉様ともここで別れ、それぞれ自室に戻る俺たち。
そしてリズの部屋からガーベラ様の部屋の道のりもまた遠くない。なのでこの短い時間に2人で話す話題も、今日1日の振り返りくらいしかなくなっていた。
「しかし、話し相手に決めたのは私ですけど、ガーベラ様とリズがここまで仲良くしてしてくれるとは想像していませんでした」
「そうでしたか。リズ様は楽しい話を幾つもしてくださって、私の話も聞いてくださって今日は本当に楽しかったです。一つ共通の話題もありましたし」
歩きながら話す。
俺も妹と婚約者の仲が良いのは嬉しいけど、今日だけで6時間以上楽しんで話す程とは考えていなかった。
それに秘密を共有しているんなら友達だ。
「ではおやすみなさいガーベラ様、また明日も部屋まで向かいに行きます」
「ありがとうございます。では、お休みなさいジークエンス様」
話を終えたら丁度ガーベラ王女の部屋に到着した。
部屋の前で互いに就寝前の挨拶を交わして、ガーベラが頭を下げて部屋に戻ったのを確認した俺は3つ隣の自室に戻った。
◇
戻って来たのだが、別に特別今からやらないといけない事が俺にはない。
別に寝ようと思えば眠れるだろうし、何もせずそのまま寝たら良いと思うけどなんだかそれだと暇な時間が勿体無い。
一旦机の前に座って棚にしまってある資料を手にとらず、そこにある事をボケーと眺める。
その後室内を見渡すけど……時間を潰せるようなものは無い。
「もう寝よう」
これとはまた別の椅子に座った俺は、メイド達に服を抜がせさせて寝巻きに着替えさせる。
早過ぎる気もするけどもう暇だし寝る事に決めた。
俺は布団に入ってじっくりと眠気が来るのを待つ、こうしてると眠くなくても絶対に眠くなるものだ。
ベットに入ってから40分まで記録していだが、そのまま夢の世界に入っていった。