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3-73.「ラブコメチック」

 ガーベラ王女の部屋の前には我が王城の女騎士が立っている。 


 それもそのはず、この部屋にはガーベラ王女とリズの2人の王女が居るんだ。部屋の前に騎士くらい配置するのは当たり前だろう。


 俺に礼をする女騎士は視界から流して、扉の前で少し待つ。

 すると中から執事のダン・クランクが扉を開き、ソファーから立ち上がったリズとガーベラ王女が俺の来訪を歓迎する。


「あっ、お兄様っ!」


「ジークエンス様。」


 勢いよく立ち上がったリズは俺の元までかけて来て、レモン色の可愛らしいドレスでカーテシーをとった後俺の手を取り部屋の中まで手を引く。

 一瞬目線が首元のネックレスに止まり小さく「あっ」と声を上げたので、今話題にはしないがお揃いのネックレスに気付いたんだろう。


「来て下さってありがとうございますお兄様! さぁ中で話しましょう!」



 ガーベラ王女はリズの行動力に驚いて、俺の元に近づくかそれともその場でカーテシーを取るか迷っていたようだ。

 その結果ガーベラ王女は少しだけ歩を進めて、リズに手を引かれた俺が近付いて来た所でカーテシーで挨拶をした。


「ご多忙のなか、伺って下さりありがとうございますジークエンス様」


「いえもう今日は予定はありませんから、今からは2人の話を聞きますよ」


「それは嬉しいです」


 ガーベラ王女との会話を終えると、リズと手を繋いだままの俺はもといた席にリズを座らせて2人から2人の間の席を勧められる。

 要するに長椅子にガーベラ王女・俺・リズの順番で座っている訳だ。


 しかし長椅子の両端には1人掛けの椅子があり2人は少し前までそこに座っていたのだろう、ティーカップが正面に置かれている。

 そしてこの長椅子は3人用じゃなくて2人用。このように座れるのはゆったりしたドレスの女性2人までで、間に男1人入れると少々狭くなる。


 『誰か1人を長椅子に座らせたくない』思いからの配慮なのだろう。しかしそれだとガーベラ王女とリズが長椅子に座って、俺が1人掛けに座れば良い話だ。

 なので2人の気持ちはもう一つの推測『ジークエンス様のすぐ横でお茶を楽しみたい』のかもと一瞬考えて、リズの専属メイドのアリスが淹れた紅茶に口を付ける。


「ーーふふっ」


 思い浮かんだ考察がおかしくて笑ってしまう。だって、

 なんだかラブコメチックな展開だなって。



 俺の左に座るリズと、右のガーベラ王女は不意に笑いだした俺を訝しむというか驚いている。

 いや失礼、マイナスイメージの付く他意はないよ。


「なあリズ。お前とガーベラ様は私が来るまで何を話していたんだ?」


「んっと、あっあの話ですか?」


 何か分からないけど多分『あの話』の事だと思う。


「秘密です。」


 ガーベラ王女とアイコンタクトをとったリズ。

 前もって話さないでいようと決めておいた約束ごとなんだろう。


 しかし隣を向いたリズと、体が密着し過ぎないようにガーベラ王女側に寄る俺。体勢が少し変わっただけで2人の体に触れてしまいそうになる。


 避ける動きが不自然にならないように注意を払っているが、相手が婚約者と妹と言えど触れるのをここまで気恥ずかしがるとは俺はウブ過ぎる。状況が効果的過ぎるのもあるんだけど。

 ちなみに王族にはかなり至近距離な間合いだと思う。


 リズが正面を向き直して俺も自然に体勢を元に戻す。

 ガーベラ王女に目配せする為に、リズが体勢を横に向けたのはそんなに長い時間ではない。ほんの数秒だった。


 そしてやっと余裕を持てた俺は、リズともっと話したいので話を続ける。


「秘密なのか?」


「はい。お兄様に話すのは恥ずかしいとガーベラ様が仰っていましたから教えません」


「ふふ……そうか。2人の接点は私くらいしか考えられないから、なんの話で盛り上がっていたのか気になっていたんだよ」


 俺とアシュレイ姉様を加えれば昨日共に王都観光した仲なんだけど、2人だけとなると『ジークエンスと近い関係性の王女』以上の関係を俺は知らないんだよね。


 しかし俺の言葉にリズとガーベラ王女がピクッと反応したのを確認したけど、なんだろう。

 『接点が私くらいしか』で反応していたし話題は俺だったのかな?


「お兄様の事はいいんです別の話をしましょう!ーーそうでした、先程までお兄様はお父様と何をお話しされていたのですか?」


 今の言葉を平面の文字にすると2つの受け取り方が出来るけど、今のニュアンスだと『お兄様が話している話題を変えます』ではなく『お兄様を話題に話していましたけど、今はいいんです別の話をしましょう!』と聞こえた、そう思えた。


ーーうん。女子2人の秘密の話を想像するのは一旦置いておこう。

 リズとガーベラ王女が秘密を共有する程、仲良くしてくれているのが何より嬉しいんだから。


「そうだな。私の決めた家名『フラムガルルーツ』を陛下に了承して頂いた後、私の領地の説明や明日明後日の予定を聞いた。

 他にも色々な事を話されていたが今のリズには教えられないな。リズが成人した時直接陛下に伺いなさい」


 国防の話やセレスティア家の問題や建国記は、例えボカしたとしても簡単には伝えられない。

 それにリズもこの国の王族だ。成人した時に話して貰えるだろうし、話して貰えなかったらその時は俺が教えてやればいい。


「そうなのですねでは別の話をしましょう、このお兄様とネックレスと指輪の話です! お兄様が来る前にガーベラ様とも話したのですよ」


 リズが俺とお揃いの『ダイヤ』のネックレスと指輪の話を始める。

 俺もガーベラ王女も紅茶を飲んで茶菓子のクッキーを食べながら聞いているけど、リズは10分以上時間をかけて熱く熱くその思いを更に熱く熱弁してくれている。


 今日はネックレスしか身に付けていないけど、今度はあの大きな指輪も付けていてやろう。

 俺はそんな事を思いながら、3人でのティーパーティーを楽しんだ。

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