表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/343

3-66.「建国記を語る(2)【激動の人生】」

 魔界の方角へ進んだフラムガル王が見た、見慣れているはずの光景とは……



「『街だ。今まで見て来た街よりも1つくらいが高い、それ程広い街だ。そしてその建築方法は今まで見て来たものと比べかなり先進的で、街と自然が切り離されて建築物が建物として豊かな自然から独立している。

 街の住人は我々と同じ身体の色が単色でない者達の他に、黒や白単色の身体を持つ者に実態を持たぬ者など。一団全員の見聞を合わせて皆は3種類の身体のあり方を知った。』


 王となる前のフラムガル王を含む一団は魔界へ赴いたが、そこに住む住民とは敵対しなかったと書かれている。ただ

『私たちの王さまは人間が嫌いなんです。どうか私たちに関わらないで下さい』

 と王の意向を伝えて注意喚起を行い、初対面であったはずの一団の者達に親切に接したと書かれている。


 魔人や悪魔や魔物のせいで我々は魔性の存在を悪としているが、フラムガル王の生きた時代には魔族なんて種族名で呼ばれていなかった上に大した種族差は無かったのだろう」



 魔界の人が結構親切にしてくれたという情報を、父主観の想像を交えながら語られる。


 過去に存在した魔族がどういう存在だったかは分からない。他種属の過去が判明したってって感じだ。

 だけど『俺が出会った悪魔達は1人を除き全員身体が黒一色だったから魔性の者は全員身体が黒い』ってのは違うかも知れないと考え直した。


 参考にしたのが合計4人の推定悪魔達と少ないので、違っていたかな?


 そして住人の王と言われれば多分だけど、会ったことも見たことも噂も存在しない。この世界の創作小説なんかにも出て来る『魔王』かも知れない。

 魔王の定義なんてまちまちで自称するものでもないから、そこを魔界と決め付けたら王は魔界の王。略して魔王となるのかも。


「お前の言う悪魔は『体全身が黒い』という情報を信じるとすればフラムガル王の時代の魔界には魔族以外の者が住んでいた。もしくは魔族に全身が黒くない存在が居た、または居ると考えられる」


 父も同じ様な事を考えていたらしい。

 思えば魔界とは隣国のような関係であってもおかしくないのに、この国は『魔性の種族』魔族の事を知らな過ぎる。


 そしてひと通り語り終えたと感じたのだろう、父は再び目線を落として続きを語り始めた。



「『一団は争いをしてまで旅を続けたい訳じゃない。更にいくら戦い慣れている戦士がいようとも一団の女・子供・老人のほとんどが非戦闘員だ。一団は進行方向を南東に決め、曲なりに各地を旅しながら現在の旧都辺りまで戻って来た。


 この時後のフラムガル王は成人を果たし、一族一団の中でも特異な『再祝福』を受けた。

 そしてその時のフラムガルや彼と同世代の者は知る、フラムガルはこの世に生まれたその時天啓を受けた一団の婆から「誰よりも激動の未来を歩む事になる」と占われた事を。


 皆はフラムガルが過激と言われた人生で死なないように、信仰するジークハイル神から人生2度目となる祝福を受けた。生まれた直後と成人の時の2度だ。

 しかし天啓を受けた婆が信仰するのも同じジークハイル神。天啓を受けた神と同じ神に願う事になっていたかも知れないと、王となったフラムガルは考えた。

 しかしそれは神のみぞ知るのみ。』」



 要するに戦いを避けて旅をする中で成人を果たした青年フラムガルは、特異な生誕から今後の人生を心配されて異例の再祝福というものを受けた。ってところ。


 父は一度俺とその背後のメイド達を確認すふと、再度目線を本に戻した。



「『だがその日からフラムガルの生活は何も変わらなかった。

 父達と共に狩りや採集に出掛けて食糧を調達し、食事時や寝る前に占われたという自分の未来の事や軽く結婚について考える日々。拠点を移動する時には土地の特徴や特色を逐一学び、その際に何度か魔物に襲われたがその度に犠牲を出さず全て食糧に変えてきた。


 その生活が続きフラムガル青年が成人してから約一年が経過した。

 その年には結婚の適齢期を迎えたハミニスという少女と婚姻が結ばれ、翌年には女の成人を迎えたハミニスが男の子の第一子レーゼンを授かった。

 余りに年若いフラムガルとハミニスの2人の婚姻前の接点は同じ一団の仲間。子供の頃一緒に遊んだうちの1人くらいでしか無かったが、結婚してからの2人の仲は良くお互いの前ではよく喋る夫婦だった。


 しかし天啓は嘘ではない。

 その更に1年後、青年フラムガルが成人を果たして3年目。ハミニスとの結婚2年目の年。 ハミニスは一団の女性達と共に赤ん坊のレーゼンを育てながら、新たに生まれてくる子の事を考えていた。

 フラムガルは父達と共に土地の情報を調べて周囲の町や村の確認。狩りと採集を行い帰路に着くいつも通りの生活を送っていた。


 狩りと採集を終えた時点での装備は、

 獣の解体や木の枝の伐採で使用した金属製の片手剣と、獣の突進をいなす盾。遠距離から射殺す為の弓と矢が20本。

 腰には森での戦闘に便利な頑丈なロープを付け、下半身の関節と胴を守る事と動き易さを重視した狩猟用服を着用している。そしてハミニスから渡された黄と白で編まれた紐を左手首に付けている。


 そして帰路に着くフラムガル達。

 フラムガルは雨も降っていないのに何故か濡れていた岩場に足をかけると、そこでつい足を滑らせて受け身をとり地面に落ちた。

 そこで終われば良かったのだが突如その地面が陥没し、落ちた地点から遠くに見える崖までの地面が崩れ崖に傾れ落ちた』」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ