3-51.「セシリア母様に報告」
セシリア母様の部屋の前。
会話を取り付けさせる為に先行させたローザと母様のメイドのミアは部屋の前で俺を待っていた。
「ローザ、次はステイシア母様の部屋に向かえ」
「はい」
夕食まで余り時間はないので、ローザにはステイシア母様に俺との会談を取り付けて貰う。
ローザは俺に一礼した後ステイシア母様の部屋に向かった。
「ジークエンス様、セシリア妃殿下が中でお待ちしております」
ミアの言葉に片手で答える。そして開かれる扉から部屋の中を進む。
今日セシリア母様の部屋に来るのは今回で二度目だ。
「おかえりなさいジーク。さあ座って、貴方達の王都観光を聞かせてくれるかしら?」
「分かりました」
朝と同じようにソファーを勧めてくれる母様に従って、母様の目の前の位置に座る。
テーブルには紅茶と少しの茶菓子が置かれているが、もうすぐ夕食の時間だからか母様は手を付けていない。
そして、オークション会場で散々飲み食いした俺が夕食のコース料理を意識すれば、今から腹を膨れさせたくない。だから俺も手を付けない。
「最初に全員が帰城した事を伝えておきます。ーーそして聖金貨10枚を用意していただきありがとうございます。アシュレイ姉様達もオークションを楽しんでいました」
「そう。それは嬉しいわね」
帰城報告と大雑把な説明を終えた。
「そして今日のオークションで、母様方から戴いた聖金貨10枚を超える金貨2200枚以上金貨を使いました」
「あら」
俺と同じくセシリア母様にも金銭感覚は無いのだろうか? 俺の『軍資金を2倍以上オーバーした』発言に感嘆詞を一つ発しただけの反応。
もしくは、金貨千枚も2200枚もさして変わらない額なのかな?
「私やステイシアさんの思っていたよりも、貴方達はオークションを楽しんでいたのね。
あと私達が渡した以上の金貨を使ったと言いましたけど、問題は無いですから気にしないでもいいですよ」
「分かりました」
金貨が潤沢にあるからか?
王家が開催しているオークションだからか?
ミゲルの金貨集めは上手くいくという暗示か分からないが、これから金貨の心配はせずに済みそうだ。
しかしアシュレイ姉様とリズとガーベラ王女の3人に買った宝石は格好付けて落札したので自分の金で支払いたいので、後日その旨を添えて金貨1200枚相当の品を母様達に贈ろう。
まあ領主の主な資金源は税収だから、働いて買ったって気分にはならなそうだけどね。
「それでは報告も終えましたので、私はここで失礼致します」
「あらもう終わりなの? 夕食の時間までまだ少しだけ時間が残っていますよ」
「夕食の前にステイシア母様の元にも帰城の報告に向かう予定がありますので。王都観光の話の続きは後日必ず行います」
今夜の夕食はコース料理なので食後のティータイムは短いだろうし、父様もいるので食後の団欒の話題は用意しても話せない。
明日からの予定が埋まっている事が気になるが、母様達と話せるのは最短で明日の朝食後になるだろう。
「その理由なら引き止めません。今日の話の続きは、明日の朝食後にでも聞かせてちょうだい」
「分かりました」
口を潤す為に紅茶を一口含んだ後立ち上がった俺は母様に向かって一礼し、退室の挨拶をしてサーシャと婆やの2人を連れて退室する。
結局紅茶は一口だけ。茶菓子は一欠片も食べなかった。
夕食までは残り1時間くらい。
ステイシア母様に報告を終えた後一旦部屋に戻って、ガーベラ王女の部屋に向かうまで少し休憩するだけの時間は作れるだろう。
そんな事を考えながらふと前を見ると、ステイシア母様の部屋に戻ったローザが帰ってきていた。
「ステイシア妃殿下との会談は結べました、妃殿下は部屋でお待ちしております」
「分かった」
俺は後ろにローザを加え、ステイシア母様の部屋に向かう。セシリア母様の部屋からステイシア母様の部屋からの距離はさして離れていない。