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3-31.「オークション2日目(2)」

「私も一度使ってみたいですしレギオンの剣を狙いましょう。リズとガーベラ様は何か、欲しい品はありましたか?」


「いえ、私は戦いませんのでありません」


「私もありません」



 剣やら鎧やらの武具に興味なしのご様子だった2人からは、まあ分かりきった回答だ。

 レギオンの剣は何十種類も紹介された武具の中の目玉商品と言うから価格レートは高いんだろうけど、姉様の為にも手に入れたい。


 だけどもしかしたら、渡された聖金貨10枚=金貨1000では買えないかもしれない。撤退金額も設定した方がいいだろうけどそもそも金銭感覚が分からないので、そこら辺は姉様に任せよう。



「では早速ですがまずは『魔術付与を施された銀製大剣10本』を、金貨100枚から始めさせて頂きます。購入なされる際は会場付きのメイドより専用の札を受け取って下さい」



 会場の一階を見れば、メイドから番号が書かれたフラッグを受け取る参加者がちらほらいる。それほど悪い買い物でもないらしい。

 俺やアシュレイ姉様やメリアスならず、モナーク兄様やハルト兄様なら一時間もあれば完成させられる品だろうけど。

 まあ俺も、わざわざそんな事に一時間も費やさないけどさ。


 そうでなくともこのオークション会場のメイドだ。

 あの剣10本セットを買う気はないが、最後の目玉商品であるレギオンの剣を買いたい。その為に会場付きのメイドからフラッグを渡して貰う必要があるのだが、そのメイドが見当たらない。


 背後を確認してもそこにいるのは王家のメイドや執事……いた。1人だけジークハイルでもイルシックスのメイド服ではない。ーー正確に言えば、王家のメイド服のマイナーチェンジ版って感じのメイド服を纏った女性が。

 スラリと背が高い上にところどころ肉付きもよく、普段ならクールな表情をしているだろう顔を緊張からか作り笑顔で歪めている。

 ガチガチに震えながら俺に発見された彼女は近くに寄ってくる。



「あのメイドは流暢に話せる様子ではないわね。どうしましょう、私が説明しましょうか?」


「いえ姉様が代わりに説明する必要はありません。あれから話を聞きましょう」



 アシュレイ姉様は一瞬視界に収めたそのメイドを見てそういう。

 確かに彼女はあまりにも緊張し過ぎていると思うけど、だからといってアシュレイ姉様の手を煩わせる必要はない。


 寧ろ姉様に気を遣わせる行動を取るなんてあのメイドは何様のつもりなんだ。俺たちへの対応に緊張するのは構わないが、そのせいで今日仕える主人の手を煩わせるなんて馬鹿らしい。


 そしてアシュレイ姉様の元に歩いてきたメイドは俺たちに一礼し、体の角度を俺に向ける。



「自己紹介は必要ない。オークションに参加するにはお前から札を受け取ればいいのか? 答えろ」


「は、はいぃ!」



 奇声と行動が一々うるさいこのメイド。

 喉に詰まった唾を飲み込んだ彼女は一礼し、王族に対する定形口上を述べたのち話し始めた。





「む、目当ての品がありましたら私がこちら札を渡しますので、こちら『1番の札』を持ったまま今行われていますように支払う金額を宣言して下さい。最後に最高額を宣言されると競り落としとなります」


「なるほどな、御苦労」



 そんな今、行われている例の10本セットの銀製大剣のオークション。金貨100枚から始まった金額は現在金貨300ーーで落札された。

 司会進行のネクローマルの発表によると、競り落としたのは『番号22番』。見下ろせる一階に競り落として浮かれている参加者はいないので恐らく違う所にいるのだろう。


 そしてメイドには、取り敢えず役目は果たしたという事で『御苦労』の言葉に重圧をかけるだけに留めておいた。

 本来わざわざ使用人にねぎらいの言葉をかける必要はないのだが、重圧カモフラージュの為だ。



 メイドが下がれば視線を階下のステージに向く。

 競り落とした22番に向けられた拍手が鳴り止んだ今、10本の剣が落札されると引き続きオークションが始まる。



「続きまして魔術が付与されております聖銀性の鎧。こちらも金貨100枚から始めさせて頂きますーー





 オークションは一つの商品につき5分ずつ程。合計一時間以上をかけてレギオンの剣以外の武具全てが競り落とされた。

 魔術付与されている鎧の次は特殊な剣や槍や盾。そのほとんどが金貨100スタートで更に高値で売れている。

 参加者の彼らから見たら魅力的なのかもしれないけど、思ったよりも高過ぎだ。これはレギオンの剣を金貨千枚で目玉商品を落とせるかギリギリ分からなくなってきたかな?



「では2日目第1部の最後。セキ・セイル神帝国の迷宮よりレギオンの剣でございます。この品は金貨500枚からの始めさせて頂きます」



「金貨500枚から?」


「手に入るか心配になってきましたね」



 それほどの貴重品なんだろう。

 俺は先のメイドを呼び出し、差し出された番号『1』と書いたフラッグを持つ。


 先までの観察結果として数の小さい方から宣言しなくてはいけないので、今回は俺が一番に数を言う事になる。

 だが俺はオークション初心者だ。この金額設定とその価値なら何枚と言えばいいのかよく分からない。550枚くらいで良いかな?


 と、尋ねるようにアシュレイ姉様を見れば一瞬の後頷いてくれた。神通力の他心通を使って考えた結果なのだろう。だとしたらコレで良い。

 そしてステージに立つネクローマルから話題を振られる。



「1番の方お願い致します」


「金貨550枚だ」



 俺の次に呼ばれたのは番号2桁台の男がずらり。幸いな事に、俺に一周する間に増えた金額は100枚よりも少ない。

 最低金額の金貨500枚が高いのか、俺が思っていたよりも人気じゃなかったのかの両方当てはまると思うけど、落とせそうな気がする。



「金貨780枚」



 何周か続ける内に周りはどんどん札を下ろしていき、最後まで残って競り合っていた番号『22番』も札を下ろし、俺はレギオンの剣を落札した。



「1番の方々おめでとうございます。そして落札された商品は直接輸送させて頂きます。

 そして第1部が終了致しましたので、今から第2部が始まるまで休憩となります。2部に向けて英気を養って下さい」



 無事落札できたレギオンの剣は王城に送られるのだろう。

 そして今から休憩だ。長い時間椅子に座り続けて腰痛いし凝り固まっている。部屋にはベッドも用意されている事だしそこで少し休憩しよう。


 残金は金貨220枚。

 平民からしたら超がいくつも付く大金だが、このオークションで何かもう一つ買おうとなると心もとない金額となった。

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