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3-27.「城下まで馬車で」

 ガーベラ王女の部屋の前にはいつもの如く立っている執事のダン。

 彼は部屋の中に俺の訪問を伝えると、それからほんの一分程で扉が開かれガーベラ王女が出てくる。



「早速向かいましょうか」


「はい」



 俺は彼女の手を取ると、外に用意されている城下に向かう馬車まで向かう。

 俺たちと一緒に城下へ行くアシュレイ姉様とリズも、外にある馬車の元に集まってくれるはずだ。


 俺達の後ろにローザやレイラン達も付いて来るが、約10人程いる彼女ら全員が一緒に城下に行く訳ではない。

 城下へは側付きの護衛とメイドを一人につき2、3人。その他はオークション会場で待機となる。

 ちなみに俺は世話係のローザと護衛としてメルティを連れて行くつもりだ。


 階段を降り玄関を突っ切れば、数台の馬車とその周りにできた人だかりーーこの城のメイドや執事達だ。

 アシュレイ姉様とリズは既に到着しているので俺たちが一番最後のようだ。



「姉様もリズも早いですね。どうしましょう、全員揃いましたし早速向かいましょうか?」


「あら、もう出発するの?」



 今から向かう場所には片道30分以上もかかる

 話す時間なら往復1時間以上あるんだ。なら早くこの異世界らしいゴツい馬が引く馬車に乗って行こう。



「はい。この馬車で平民街の噴水広場まで行くには、時間がかかりますから」


「でしたら早く行きましょう。この馬車には私達にセレノン、護衛のメルティで乗ります」



 俺の提案&姉様の言葉で前から、二番目の馬車に俺たちは乗り込んでいく。

 王子王女が4人に姉様のメイド のセレノンと、この高貴なメンバーの護衛を任された俺の騎士候補のメルティ。


 自衛もままならないなもしれない可能性のあるガーベラ王女以外は、全員がメルティよりも剣の腕がある。


 リズの今の実力分からないけど、明らかに俺やアシュレイ姉様よりも弱いメルティに守護させる理由はおそらく2つ。

 武器として剣を持つ彼女は脅し&牽制要員。そしてここにいる騎士及び騎士候補よ中で一番強いのがメルティなので、彼女がこの馬車の護衛役となるのだろう。


 そして騎士及び騎士候補以外は武器を持っていない。

 もし戦闘になったらメルティ達護衛に戦わせればいいし、戦う必要が出来たなら水魔術に氷結魔法を組み合わせて氷の刀でも作ればいいし。



「アシュレイ殿下、ジークエンス殿下、リズ殿下、ガーベラ殿下。この馬車は今からファルの噴水広場に向け出発致します。少しお時間がかかりますので到着までゆっくりお寛ぎ下さい」


「そうね、では早速出発よ」



 セレノンの説明を聞きアシュレイ姉様が出発を宣言する。そして前方で音がなったと思えば馬車は動き出した。

 急に動き出したのに違和感不快感無しの高級馬車の乗り心地。窓が閉めている外の景色は楽しめないが、豪華な車内の効果で小さな部屋の中に集まっているみたいな感じだ。


 皆で話している話題は『ファルの噴水広場とはどんな所でしょう』。在り来たりな疑問ならここにいる誰か一人は分かるものだが、このお喋りには時間潰しの意味もあるので口には出さない。

 でも今回は身分的にも平民街にある広場の詳細が分かる方はこの中には居なさそうだから、この話題は全部推測なのかもしれないね。


 俺的にファルの噴水広場は、あの廊下に飾られている絵の通りであってほしい。

 あの絵には「転生後初めて見た芸術品」補正がかかってる上、流石王城に飾られているだけあって人々の表情と王城を映えさせる色彩と筆のタッチ。その上よく見れば、長い時間をかけて描かれたと分かる細かな線で印象を明るくしている。つまり素晴らしい作品だ。

 その絵のモデルになった場所って事で、俺は忠実再現に期待しているのだ。


 そんな思いの一部を交えながら、車内で取り留めのない会話を続けること約30分。

 アシュレイ姉様から直に話を振られた時以外は静観していたメイドのセレノンが、一つの話題が終わったタイミングで口を開いた。



「この馬車はもうしばらくでファルの噴水広場に到着いたします」


「そう。もう到着なのね」



 セレノンとアシュレイ姉様の会話。

 彼女の言った通りこの5分後に馬車が止まった。



「ファルの噴水広場に到着いたしました。扉が開かれればすぐに馬車を降りましょう」



 すぐ降車しないのは安全性確保の為だ。前後の馬車から同行してきた者が扉を開けて初めて安全に馬車を降りられるというもの。


 また待つ事3分程。

 一瞬前まで話していた話の途中に扉が開けられる。


 軽く咳払いしたアシュレイ姉様は、先に降りるセレノンの手を取り馬車を降りる。

 残り車内にいるのは4人だけ。メルティに先に進ませ、メルティの手を取って馬車と地面の段差を降りる。

 残ったガーベラ王女とリズには俺が手を取らせ、馬車から降りた。


 アシュレイ姉様はどこに行ったかと探すと、馬車の扉の反対の位置にいる。

 姉様は前方の何かを見上げていた。



「おぉ……これは凄い、あの絵の通りだ」



 姉様が見上げるものを見る為、姉様と同じ方向を見た。

 そこにあったのは王城。この位置で見上げれば確かにその偉大さがよく分かった。

 視界の下の方には噴水と水飛沫があり、俺は『ファルの噴水広場』の景色を見ていた。

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