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3-23.「タイトル『ファルの噴水広場』」

 その後『転生』の話は有耶無耶に数時間、頭を振って空っぽにした俺はガーベラ王女との会話を楽しんだ。今は日も暮れ、そろそろ夕食に向かおうという頃合い。

 今話していた話題が終わると、夕食に向かう為に立ち上がった。



「もうすぐで時間です。夕食に向かいましょう」


「はい」



 差し出す手を取ったガーベラ王女の手を引いて部屋を出た。

 食卓の部屋まで道中には3才の頃から飾られている絵がいまだに飾られている。

 絵は俺の身長に合わせた位置に上げられているが、俺が転生初めて見た芸術品に変わりない。


 一つの噴水を囲むようにして屋台と笑いながら売り買いする人々。その後ろに聳え立つ王城の絵。

 当時は読めなかったタイトル名は『ファルの噴水広場』。


 久しぶりに見たそれに目を奪われていたのか。俺の視線の先の絵を見たガーベラ王女が話す。



「この噴水が描かれた絵、凄く美しいです。この後ろの城はジークハイル王城でしょうか、是非見てみたいですね」


「見に行きましょう。私も実際に見た事はありませんが、私たちが王都にいれる時間は長くない。猶予はあと数日ですので早速明日行きましょう」


「え、ありがとうございますジークエンス様」



 ガーベラ王女はこんな一瞬で話が進むと思わなかったのだろう。先日この広場に行けるチャンスがあったが椅子の上で寝過ごしてしまって行けていない。

 リズと一緒に城下を観光した時だ。



「つい先日この絵の広場に行く予定があったのですが、結局行けなかったのですが良い機会です」


「そうでしたか」



 連日の様に明日新しく予定が入ることがなければ、これで念願だったこの噴水広場に行ける。

 『ファルの噴水広場』の絵で止めていた足を動かし、ガーベラ王女の手を引いて食卓の部屋に向かう。

 食事終わりにでも、今後の予定を母様に聞いてみる事にしよう。





 俺たち2人が食卓の席に着くと、待っていた母様が早速食事を用意させた。


 今日の献立は効率重視ないつもとは違い格式重視のコース料理。

 父様もいないのに何故面倒な食事形式を取るのだろう。と、食事を終えた俺は考える。

 全員の食事が終わると早々に最後の食器が片付けられた。



「もう少しでジークは成人しますからね。そんな時期ですからこの食事形式をとっているのですよ」


「そうだったのですか」



 食事終了後のいつもと変わらない紅茶の時間。俺の疑問に心を読んだアシュレイ姉様が答えてくれた。


 つまりガーベラ王女がこの国の食事形式に慣れる為の実習期間って事か。

 父様と一緒に食事をとる時はコース料理も多いのだが毎日毎日それでは面倒だ。というのが総意の意見の元、父様が居ない時は簡単な食事となっている。


 でも一定数以上コース料理も体験しているので、一番回数の少ないリズも完璧に食事出来ているのだ。



「セシリア母様、明日以降の私たちの予定を知りたいのですが教えていただけますか?」


「ええ、いいですよ。」



 母様がそういうと、壁際にいたメイドのミアがセシリア母様に近付いて耳打ちする。内容は俺の今後の予定の話だろう。


 聞き終えたセシリア母様は精査する様に目を瞑る。十秒間目を閉じていた母様は目を開いて話し出す。



「明日の予定はありません。その翌日から成人式までの3日間は、陛下との予定がありますよ」



 明日城下の噴水広場に行ける。言い換えるとその日にしか行けない。

 という事でセシリア母様に礼を言った後、俺の明日の予定が決めた。明日はガーベラ王女と一緒に、リズと行くことができなかった噴水広場に行こうと思う。



「明日の予定はそれでよろしいですか?」


「はい。私もあの噴水広場は楽しみですので」


「お兄様?」



 無事ガーベラ王女との約束を結べました。

 前城下に降りた時みたいにローザ達が付いてくると思うが、婚約者と2人(+α)で出かけるって実質デートじゃないか? 

 ガーベラ王女の事はここに座る誰の事よりも知らないので、彼女と共に出かけれるのは嬉しい。今まで部屋の中で雑談ばかりで、恐らく俺と同じインドア派だろう彼女との会話のネタにもなる外出。


 そう俺とガーベラ王女の会話に疑問を感じたらしいリズが、上半身を俺たちの方に向けて話を続ける。



「噴水広場とは、お兄様の部屋の前に飾られているファルの噴水広場ですか?」


「そうだよ」


「お兄様は私とではなくガーベラ様と行かれるのですね……」



 噴水広場に行く予定は元々、リズと城下を巡るコースの一つだった。


 妹のリズとは行かなかったのに、婚約者のガーベラ王女と行くと言うのだから納得いかないのは当たり前。彼女がブラコンでなくとも、不満があって当然だ。



「そうですね、元々リズがジークと行くはずでしたからね。ですのでジークは明日ガーベラ様とリズと私と一緒に噴水広場に行きましょう。いいてすね?」


「私は構いませんが、ガーベラ様はそれでよろしいですか?」



 みんなの心を読んだらしいアシュレイ姉様の言葉に賛同する。

 でもガーベラ王女はどうなんだろう? と共に行く彼女に姉様やリズが同行していいか聞く。

 そしてなんで姉様も御一緒に?



「元々はリズ様と共に行かれる予定だったとは知りませんでした。はい、私が同行していいのでしたら一緒に行きましょう」



 ガーベラ王女から穿ったOKの返答。

 主体がデートからピクニックに変わり明日は俺にガーベラ王女。妹のリズ。アシュレイ姉様と共に城下の噴水広場に向かうこととなった。


 この会話を見て笑う母様達2人は食事終了の宣言をし、俺達はそれぞれの部屋に戻る。





 今日はコース料理だったので、いつもより部屋に戻ってくるのが遅くなってしまった。


 俺は早速寝間着に着替えさせられているのだが、それをする使用人のうちサーシャとミゲルに命じる。



「サーシャ、ミゲル。お前達は私達が明日の午後から城下に噴水広場に行けるように手配しろ」


「承りました」



 メイドと執事の兄妹に明日の事を丸投げする。翌朝2人に話を聞けば準備完了だ。


 家名を考えるのが面倒なので寝ることにした俺は、そのままベットに入る。

 だけどそれ程眠くない俺は目を閉じたまま、時間をかけてウトウトと夢の中に入っていった。

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[気になる点] 父様と一緒に食事をとる時はコース料理も多いのだが毎日毎日それでは面倒だ。というのが総意の意見の元 ↓ 父様と一緒に食事をとる時はコース料理も多いのだが毎日毎日それでは面倒だ。という総意…
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