1-10.「すごい力を得てしまったっ」
「ジークエンスももう3歳か」
「はい」
「……モナークだけには教えたが、アシュレイとハイルハルトには王権は教えていなかったな。4人にも王権のことを教えようか」
ハルト兄の名前はハイルハルトでニックネームだったらしい。
そう言うと段差を上がり机の前に立ち喋り出した。
「王権は、『国家拘束術』。王が配下を支配する為の、ジーハイル神から与えられた権能だ」
「はい」
「その力を知る為に、まずは体感せよ。
リート・モルガンが代行する。『我が子は右手を上げよ』」
モナーク兄が相槌を打ち、王がそうそうと話を進める。
王が左手を前に出してそう宣言する。と、右手に力が入り、腕が上がった。
「手を下げれるか?」
「い、いえ……」
モナーク兄の言う通りだ。
右手に入ってる力が抜けないし、下にも下がらない。
「この国の者は、この王権に逆らえない。誰も嘘はつけないし、反逆もできない」
「はい」
「宣言を解除する。手を下ろせるぞ」
腕に入っていた力が抜けて手が下がった。
手を上げてるんで、少し疲れたけど痛みはない。
でも、配下になんでも命令できる力って、それ凄すぎないか?
「王権は無闇に使えるものでもない。過去に王権を使い虐殺を行った王も、圧政を敷いた王も、無闇な統治で民を困窮させた王も、総じて天罰を受けている」
「権能とは、ジークハイル神の力だ。あの神の意に添わぬことをすれば、王権は使用者に天罰を与えるだろう。 そうならぬ為に、私は民の為、完璧な統治の為、この王権を正しく使い続けるのだ」
なるほど。過去にそんなことがあったのか。
つまり、私利私欲の為に王国の力を使うなってことかな?
「もう私の力を見ただろう。これでアシュレイもハイルハルトもジークエンスも『王権』を振るえるはずだ。
だが3人はちゃんと歴史書を読んでおけ。過去どんな例で天罰が下ったかが残ってある。
読んで分からないなら使わないでおけ」
そういえばメリアスが、王権は王位継承者でも使えるみたいな話をしてたな。
これで絶対に命令をきかせられる力が手に入ったのか。
実感がないな。
「ああそれと、これは上位の存在には効かない。
ジークエンスは、モナークにもアシュレイにもハイルハルトにも効かないし、
モナークでも、私やセシリア、ステイシアには効かない。
そして、他国の人間には無力だ」
セシリアとステイシアって、この場合は母の名前になるのかな? 2人いるけどそう言うことなのか。
メリアスが言っていた『陛下よりも力が落ちる』ってのは、コレのことかな?
王権ってかなり凄い力じゃないか?
転生日当日に、とんでもない能力をゲットしてしまった。
王の話が終わり、子供たちから先に部屋を出る。なんでも王はこのまま神に祈っているみたいだ。
この後夕食と言うことで、父と母を除いた子供だけで朝食を食べた食卓のある部屋に向かう。