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3-18.「見透かされた本心」

※この話ははジークエンス視点ではありません。 

 ガーベラ視点です。

「そこに座って頂戴。今から貴方だけに話すわね?」



 食事を終えて部屋を出た私は、婚約者であるジークエンス様の姉。

 アシュレイ様に誘われ、貴女の部屋に来ています。


 部屋に招かれソファーまで導かれた私は、早速ですが対面位置に座ったアシュレイ様と話を始めます。


 ですがアシュレイ様が話された後、キーンと筋が張った様に静かになりました。

 なんでしょう。言葉からして盗聴防止の結界を張られたのでしょうか? ですがアシュレイ様から、そんな仕草は見られません。



「結界とは少し違います。ただ私の声が貴方だけに届き、貴方の声が私だけに届く様にしただけです」


「それは! 私の考えを読み初めて見る魔法を使われる。流石はアシュレイ様です、ベルベット姉様から聞いた話の通りです」



 まるで私の心を読んだかの様に、アシュレイ様は私の疑問に答えて下さいました。


 アシュレイ様がこの魔法を使うと全員がこの考えに至ったという理由があるかもしれませんが、ここまでの読心術の達人とは。

 ベル姉様から、アシュレイ様は魔法の分野ではモナーク殿下を超えると言われ、幼い頃から魔術の開発を行っていた実力者と聞いていましたが流石です。


 私も魔法はかなり得意と思っていましたが、ジークエンス様やアシュレイ様を見た今ではそれも話せません。



「ありがとう。分かっていない様ですけど都合がいいわ、私は『貴方の心を読む』件で貴方を呼んだのよ」


「心を読むですか。……それは本当ですか?」


「はい。私の魔法『神通力の他心通』は他人の心を読むことができます」



 心を読む。アシュレイ様の魔法は心を読む。

 ……つまり私が今まで考えていた事は全て、アシュレイ様に伝わっていたという事ですか?

 それなら、何を言っているか分からなかった朝食後の会話の意味も分かりました。


 ですがどうしましょう。私何か知られてはいけないを考えていたでしょうか?

 私はこの城に着いてから3日間の出来事を思い返します。



「全てを読んでいる訳ではないわ。だから貴方も、心を読まれたくない時はそう教えてちょうだい。守りますから」


「は、はい。ありがとうございます」



 心を読むその力に驚きましたが、アシュレイ様のの言葉で一安心です。読まれたくない時は伝えるといいのですから。

 それにジークエンス様もリズ様も、アシュレイ様と仲は悪くありません。これでアシュレイ様が無理矢理心を読んだり、それを悪用しないと分かります。


 そんな私の考えを読んだのかアシュレイ様は「ふふ」と微笑み、長く瞼を閉じたのち話し始めました。



「そしてもう一つ今朝の話よ。まず初めに言いますが、ジークとリズとの間に特別な関係はありません。彼らは兄と妹。

 貴方は二人が特別な関係にあると思っていたけど、それは誤解よ」


「申し訳ございません! 私がジークエンス様を疑ってはいけないはずなのに」


「責めていませんよ。ジークエンスも貴方の誤解に気付いていましたが、私に任せてくれたようですからね。

 なので今日は貴方の話。貴方の知らない貴方の話。」



 今朝、私の婚約者であるジークエンス様の右手を取っているリズ様。

 私はリズ様とジークエンス様が、二人の仲を私に見せつけていると思っていましたが違いました。本当に恥ずかしいです。

 恥ずかしくて耳が熱くなります。


 そしてその後の話は魅力的でした。

 私の心を読んでしまうアシュレイ様の言う、私の知らない私の話の事が。



「聞きますか? 貴方は、貴方の心の中を」


「は……はい」



 私は、自分が本当は何を考えているのか分かりません。この城に来てジークエンス様に会った時からそうなのです。

 私はジークエンス様が好きなのか、そうではないのか。


 自問自答しても、レイランやフルマルンにに尋ねてみても結局分からない。

 その答えが知りたくて、私はそれを知っているアシュレイ様に尋ねてみました。





 アシュレイ様の言葉を私が承諾すると、アシュレイ様は話し始めました。



「貴方の知りたい事は、貴方自身がジークをどのように思っているのか。それを話します。

 貴方は、ジークとの結婚を受け入れています。ですがその心を理解したまま否定する貴方もいる。ですが本心は受け入れている。


 そして今朝、ジークが妹のリズを連れて部屋に来た時に貴方は嫉妬していましたね? でも貴方は嫉妬だけじゃない。

 『婚約者は実の妹と、自分などの結婚を控えた身でありながらいけない関係を持っている』とそう考えながら、こうふ……喜んでいる。


 貴方は素晴らしいですよ。

 妻の務めは一人でも多く世継ぎを産み、育てること。ジークは見て見ぬ振りをして考えていませんが、その務めの為にも婚約者は貴方一人ではいけません。

 二人三人目が必ず必要なのです。貴方はそれを嫌と思いながら許容する。これならば愛そうと考えるジークに応えてあげる事ができるでしょう」



 言葉は長かったですが、一つ一つ区切って話してくれたおかげで凄く分かり易かったです。

 私は結婚を受け入れているから嫉妬して、更に喜んでいる。でもそれは私に合った才能。


 最初私の本性ははしたない女なのかと思いましたが、それを含めて私はジークエンス様に嫁ぐのに適しているのですね……え?



「あのアシュレイ様。それは本当なのでしょうか……?」


「ーーいえ、違いますね。私の言った事は忘れなさい。初夜に間に合わせた方が良いと思いましたがやはりジークに断ってからでないと……」


「しょ……アシュレイ様どう言う事ですかっ」



 何故アシュレイ様が私とジークエンス様のしょ……二人だけのそれを気にするのか。先の話は少し生々しい話でしたけど、確かに大事な務めです。

 私は考えていた事が解決されましたが、アシュレイ様の最後の言葉でまた悩みます。



「ふふ。セシリア母様から長くならないよう言われていますからね。さあ、ジークの部屋に行きましょう。待っているはずよ」


「待って下さい。わ、分かりました!」



 私の様子に「ふふ」と笑ったアシュレイ様は魔法を解いたようで、私たちの声以外の微かな音も聞こえて来ました。

 そして立ち上がったアシュレイ様に背を押される形でこの部屋を出て、ジークエンス様の部屋に向かう事になりました。

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