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3-17.「婚約者がきて3日目の朝」

 睡眠時間が長かったからだろうか、寝起きなのに心がスッキリしている。

 窓から入る日差しの強さ的に、いつもより少しだけ早い起床だろう。



「「おはようございます」」


「あぁ、おはよう」



 覚醒もそこそこに起き上がろうとすると、両脇のローザとサーシャが掛けられている毛布をどかした。

 いつもなら俺を起き上がらせる為に2人のサポートが入るのだが、今日は毛布を戻した。


 なんだ? と再び掛けられた毛布をめくり、布団の中を確認。



「何故その体勢になるんだ?」



 中には昨日一緒にベッドに入った、ネグリジェ姿の妹のリズがいる。

 それはいいのだが、彼女がその薄い服装で肌着と寝間着の間に頭を突っ込んでいるのだ。


 昨日寝る前は寝間着の上から胸板に頭当てていただけなのに、どうしてこうなったんだ。


 呼吸しづらそうなリズを服の間から引き抜き、足を伸ばして枕元に座らせた。

 そしてその後何事もなかったかの如く、2人のメイドは俺を体勢を起こした。



「う……ぅん。おにぃさま」


「寝言か? しかし眠くても早く起きるろ。もう少しで朝食だぞ」


「んぅ」



 ローザ達が俺の身なりを整えている間、「こくりっ……こくりっ」と起きそうだが起きないリズ。

 部屋にいたらしい彼女のメイドのアリスと彼女の婆やが駆け寄り、リズを起こして身支度を整え始める。


 リズがネグリジェを脱いがされドレスに着替えている間に、俺は顔を拭いて上着を羽織り、軽く節々を動かして朝の支度を終えた。



「んう…………あれ、お兄さま? 朝からお兄さま?」


「ようやく目覚めたか。今から朝食だが私と一緒に行くか? それとも先に向かってうか?」


「えと……あ、そうでした。私昨日お兄さまと一緒に……一緒に」



 俺の背後で寝ぼけながら朝の身支度を済ませたリズは、もごもご喋りながらベッドから降り、俺の右手をとり見上げて言った。



「一緒に行きます」



 そして俺達は部屋を出て、ガーベラ王女の部屋へ向かう。

 部屋を出た瞬間に俺達を捉えた、ガーベラ王女の執事のダンは部屋の中にそれを伝えて頭を下げた。


 戸惑っているリズを傍目に、部屋から出て来たガーベラ王女にもお互いに挨拶を。

 そして左手で彼女の手を取り、両手に花となりながら朝食に向かった。



「あのジークエンス様、今日はリズ様も一緒なのですね」


「はい。妹がいて何か迷惑でしたでしょうか?」


「そうではありません。ただ食事以外でお会いするのは今日が初めてでしたので」


「そうでしたね」



 まあ、この後朝食に向かうんだけどね。


 そして右手のリズと左手のガーベラ王女と共に食卓の部屋まで向かった。

 姉様や母様達は3人で来た事に少し驚いていたが、最後のグループだった俺たちが座ると早速朝食が用意された。





 食事中。隣にいるガーベラ王女の様子がいつもと違った。

 怒っているのか喜んでいるのか。それを自分でも自覚できていない様子だった。


 そして食後の紅茶を楽しむ時間。

 食事中にチラチラとこちらを見ていた姉様から話を振られる。



「ねえジーク、ガーベラ様それにリズ。貴方達今日は一緒に入って来ましたけど、何故かしら?」


「『何故』ですか? その理由ならーー」


「ーーいけませんお兄様! 後で、私がお姉様に伝えます」



 リズが話を強引に止め、話の重要度に気がついた俺は、止めてくれなかったら話の途中で言い淀んでいただろうと気付いた。


 俺も説明でリズの名前を出した瞬間にマズいと気付いただろうが、リズが幼い頃に何度か一緒に眠った事があるけど、約束とはいえ成長した妹と一緒に寝たのはマズい。

 そして婚約者の前でそれを伝えるのもマズい。


 多重婚が認められている。

 そして将来は領主なので多重婚がほぼ確定な俺でも、流石に一人目の婚約者と結婚間近でこれは誤解&勘違いが発生しそうな未遂事件だった。

 ガーベラ王女の様子がいつもと違っていたのも、俺とリズが朝から一緒にいたのを誤解しての事だろう。



「分かりました。ガーベラ様も嫌だと思っているだけではないようですから」


「お姉様……あっ、忘れていました」



 アシュレイ姉様の『神通力の他心通』を素で忘れていたリズ。

 姉様の魔法を知らないガーベラ王女は「?」を浮かべているが、姉様が言った『嫌だと思っていない』とはなんだろう? まさか疑った上で、それは別にいいと思っているのか?


 そう考えた俺の心を読んだ感想か、アシュレイ姉様は口を隠して「ふふふ」と笑った。

 俺の考えは的外れだったのだろう。



「ガーベラだけなの? 私には教えてくれないのかしら」


「お母様達にもお教えします!」



 入室の時、アシュレイ姉様と同じくらい母様達も驚いていた。

 姉様と同じく薄々気付いているだろうステイシア母様も、我が娘をからかうように話している。



 俺が良い噤んだせい。ガーベラ王女の態度が複雑だったので。婚約者を左手に妹を右手でエスコートしてそれを見られたから。

 リズの様子もいつもと違ったから。夜一緒に眠ったから。この約束は俺が約束を破ったから。と、その


 ほとんどが俺のせいだから、興味を示した母様達の相手に追われるリズはちょっと可哀想。

 今度、また報いてあげたいな。





 ここまで食後の会話が弾んだのは久しぶりだ。

 久しぶりに長く楽しく喋り終え、朝の食事はこれにて終わり。


 今日の予定は、昨日に引き続いて結婚式の予定確認と、ガーベラ王女に俺の3年を伝える事。そして血液を容器に注いだら終わりだ。



「そうでしたガーベラ様。ジークと共にセシリア母様の部屋に伺う前に、私の部屋に来てくれないかしら? 貴方に知らせたい事があるの」


「え、はい。私は構いません」


「母様はよろしいですか? 彼女だけ私の魔法を知らないので、それを伝えようと思っています」



 アシュレイ姉様は『神通力の他心通』を、他人の心が読める魔法を使えるとガーベラ王女に伝えるようだ。



「私は勿論構いませんよ。ジークもそれで良いですか?」


「はい、私は構いません」



 思えば、ガーベラ王女だけ何を考えているか読まれているのはフェアじゃないからね。


 今日の食後は昨日と同じく、そのまま母様の部屋で成人式と結婚式の進行確認などをすると思っていたが、先に予定が入ったのでリズのフォローでもしておこう。



「分かりました。ではガーベラ様はアシュレイから話を聞いたら、ジークの部屋を訪ねて2人で私の部屋に来なさい。アシュレイもあまり長く話してはいけないわよ?」


「はい。分かっております」


「では私からです。この後リズは私の部屋に来て、私何があったか、教えてね」


「はい。分かっています……」



 俺も含めこの状況に、テーブルを囲む皆が「ふふふ」と静かに笑う。

 そしてステイシア母様の食事終了の言葉で、それぞれ向かう部屋に戻って行った。

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