1-9.「王家の神殿」
メリアスが喋り続けるのを、うつろうつろになりながら聞き流し続けていた。
「ん?」
「おはようございます」
ベットの横にいる、黒髪メイドの婆やが俺に朝の挨拶。
窓から入ってくる日光が暖色系の光になっていて、かなり時間が経っているみたいだ。
「初日でしたし、メリアスの長話で眠くなったんでしょう」
メリアスの魔法以降、何を聞いたか覚えていない。
ついつい寝てたのか。
まあ、幼児には昼寝が必要だからな。
「ちょうどいい時間でしたね。今日は夕食前予定もありましたし。着替えたら行きましょう」
俺は流れるように、ベットから椅子に座り、寝間着から着替えさせる。
朝と違うメイドと執事が俺を着替えさせ、婆やが暖かいタオルで顔を拭く。
上着、ズボン、靴と黒を基調とした服装に着替え完了だ。
扉が開かれ、婆やと一緒にどこかに向かう。
「陛下からは神殿に来るようにと言われております」
階段を下り、朝食を食べた部屋とは逆方向の廊下を歩く。
俺の部屋と同じ棟の、一階の端。
部屋の少し手前から、敷かれていた赤の絨毯から黒の絨毯に変わる。模様は白で描かれてあり、赤の絨毯とは模様が違う。
扉の前には槍と鎧で武装した兵士が立っており、俺を確認すると扉の端にずれて扉が開いた。
◇
「きれいだ」
光がステンドグラスから入り、その光が十字を切っている。
奥には数段段差があり、その向こうに高い机が置かれている。
「あら、今回はジークの方が早かったわね」
「おはようございます」
「お昼寝から覚めてすぐだったのかしら?」
俺が突っ立ってると左横にアシュレイ姉がやって来た。
勿論、服装は朝と同じ黄色いドレスだ。
「モナーク兄さまとハルトが帰ってきてるのを見たから、もうすぐ来るはずよ」
どうやら兄弟揃って、ここで王権の説明を受けるのらしい。
アシュレイ姉の言う通り、2人の兄と、ティアラをつけた母もそれからすぐに入って来た。
広い部屋なのに、いるのは家族5人と少しの使用人達だけで閑散としている。
家族一列に並んで陛下を待っている。
そこに扉が開かれて、メイドと執事たちを連れた男が入ってくる。
おそらく、あれが王だろう。そして父親。
「皆、久しぶりだな」
「はい。陛下もお変わりありませんか」
「ああ」
モナーク兄が頭を下げながらそう言う。
兄が頭を少し下げるのに合わせて、ハルト兄が頭を下げる。
母とアシュレイ姉は、ドレスをつまみ、目を閉じて頭を下げた。
俺も慌てて兄たちを真似て、頭を下げて王を見た。