第8話 ドキドキイベント?3
カルロスと野良猫を追いかけた日から1週間たったある日、私は1週間避けまくっていたカルロスからの伝言で「ユハルテット様が呼んでいるので執務室にお出で下さい。」とフルーラ伝いに聞き、イヤな予感しかしないが一応執務室に向かった。
そして今……お兄様とカルロスが対峙している。
――しかし、私の事で争わないでー!と言う乙女の夢的な感じは一切ないが……。
「ユハルテット様、私はアリッサ姫が好きです。もちろんアルベルト王子と婚約している事は重々承知ですが、もうこの気持ちを隠し続けることは出来ません。どうか私にもアリッサ姫にアプローチするチャンスを下さい。」
カルロスはお兄様の執務室の机の前で片膝をつき、まるで戦況でも話しているような切羽詰まった真剣な表情でお兄様と対峙していた。
お兄様は書類に羽ペンを走らせながら一切、カルロスの方を見ようとはしない。
「返答が無いと言うことはお許し頂けるということでよろしいですか?」
なんの反応も示さないお兄様にカルロスは痺れを切らして言った。
するとお兄様はカルロスをゴミでも見るかのような冷徹な視線を向けて
「カルロス。お前は有能な騎士だと思っていたが俺の見込み違いだったようだな。ロッカル、新しい俺付きの騎士を至急手配してくれ。カルロスには……そうだな。ソンダル村付近の国境の警備にでも行ってもらおうか。」
お兄様は顎の前で手を組んで黒い笑みを溢した。
お、お兄様……。パ、パワハラですー!!
ちなみにロッカルというのはこの国の宰相でお父様の右腕です。彼の息子も実は攻略対象ですが今はそんなこと、どうでもいいのです。
私は部屋の片隅でこの光景を見守っていたのですが、お兄様の黒い笑みに震え上がりました。
あー!!カルロスから私への好感度をあげてしまったが為にこんな事になってしまった。なんとかしなければゲームと全然違う展開になってしまう!!
「お兄様!さすがにそれはやり過ぎです。私はカルロスとどうこうなる気はないと申しましたでしょ!」
というかお兄様、本当は私がカルロスが好きでない事、見抜いているんでしょ!?
「お前にその気がなくともお前とその気になりたいヤツが近くをウロついていればアルベルトも目障りだろ?それに間違ってお前がその気になりでもしたら、それこそ大問題だ。」
ちょっとその気があっただけに私も次の言葉が出てこない……。
「……分かりました。アリッサ姫への思いを抱えながらアルベルト王子とご一緒の姿を見るのは堪えます故、慎んでお受け致します。」
ええー!!受け入れちゃうの!?そこは「この気持ちを騎士道に代えて二人をお守りします!」じゃないの?てか、カルロスが僻地へ異動だなんてそんな展開ゲームにないのよ!!
だってゲームでの二人の対峙シーンは――
「ガーネット様の事が好きです。ユハルテット様がガーネット様の事を好きなのはもちろん重々承知しておりますが、私もガーネット様にアピールするチャンスを下さい。」
とカルロスがさっきみたいにお兄様に話して
「では、どちらがガーネットに相応しいかこれで勝負しよう。」
とお兄様は立ち上がり愛用の剣を取り出すとカルロスの前に立ち剣をカルロスへ真っ直ぐ向ける。
カルロスは「手加減は出来ませんよ。」
と騎士服にも関わらずフッと笑って自身の剣を構えるのよ!
それを見ていたガーネットが「やめて!私の為にそんな危険なことしないで!!」と涙ながらに二人の間に入ろうとする。その時の選択は――
①ユハルテット側に付く
②カルロス側に付く
③どちらにも付かない
ちなみに①②を選んだ場合は相手の剣で少し手の平を切ってしまう。
そして、物語が進みそれぞれのルートのエンディングで……
ユハルテットルートの場合――
「カルロス、俺の騎士をこのまま続けてほしいと思っているが、お前が辛いのなら他の者に替えようと思っている。お前はどうしたい?」
ユハルテットは少し寂しそうにカルロスを見る。
「私にとってユハルテット様は大事な主君でありこの剣にあなたへ一生の忠誠を誓っております。ですから、ガーネット様への気持ちを騎士道に代えてお二人をお守りするつもりです。」
と微笑むカルロス!
カルロスルートの場合――
「私がユハルテット様の騎士でいる事がお辛ければ外して下さい。私はあなた様が抱えているたくさんの重荷の一つにはなりたくありません。」とカルロスが悲しそうにユハルテットに告げる。
「俺は王子だ。ガーネットに選ばれなかった今、違う誰かと結婚するまでだ。そして、お前は俺とその誰かをこれからも守ってくれるか?」と爽やかに笑って答えるユハルテットに
「喜んで!」と笑顔を返すカルロス。
どちらのルートでもユハルテットとカルロスの関係性が崩れる事はなかったのに!!
ユハルテットとカルロスの主従関係は女問題くらいじゃ揺るがないんじゃなかったの!?