第10話 ドキドキイベント4
私は翌日、みんなをお茶をしましょうと中庭へ誘った。
もちろんカルロスもよ!もう一度ちゃんと話したいと言ってお茶に誘ったわ。
「アリッサ、謀ったな。」
中庭に来たお兄様はカルロスがいるのを見て、私を鋭い視線で見て言った。そして、そのまま踵を返そうとする――。
「良いじゃない!せっかくアリッサ様がセッティングしてくれたんだもの!みんなでお茶を飲みましょうよ!」
とガーネットが止めてくれた。
ガーネットにそして、基本的には妹にも甘いお兄様は渋々席に着いた。
みんなが着席すると
「今日は私がクッキーを焼いてきたの!」とクッキーが、入ったバスケットを見せて上に乗っていたフキンをとった。
「美味しそうですね。」
とアルベルト様が微笑み
「クッキーなんて作れたんだな。」
とお兄様が、意外そうに言い
「……。」
無言のカルロスを横目に
「……ほんと美味しそう……。」
とガーネットが急にトーンダウンして言う。
ちょっとガーネット!もっとテンションあげていこうよ!!
「一応、毒味係を呼んでいるんだけど、おかしいわね。まだ来ないわ!」
次!次はあなたのセリフよ!ガーネット。
「じゃ、じゃあ、ワ…タシガ……カワリ……ニドクミヲ……」
ガーネット!ロボットみたいになってるー!!
しかし、ガーネットは極度の緊張から顔は真っ青。冷や汗をかき、クッキーを取ろうとプルプルと震える手が伸ばされたがその手はクッキーを掴むことなく空を切って落ちていく。
「ガーネット!!」
お兄様がガーネットがその場に倒れてしまう前に抱き止めてそのままお姫様抱っこをすると
「ガーネットは体調が悪いようだから、部屋で休ませる。」と言ってお兄様はガーネットを抱え部屋の方へ歩いて行った。
「ガーネット様。大丈夫かしら……。」
どうしよう。無理させ過ぎてしまった……。
「心配ですが、ユハルテットがついていますから大丈夫でしょう。」
アルベルト様が私の肩に手を回してポンポンと優しく叩いて手を乗せた。
まるで気にしなくて良いよと言ってくれているように。
私が不安な顔をアルベルト様に向けるとアルベルト様は安心させるように優しく笑うので、私も強張っていた身体の緊張が解けていった。
「私たちも今日はお開きにしましょう。アルベルト様もカルロスもわざわざ来てくださったのにごめんなさい。」
「せっかくですからアリッサ姫が作ってくださったクッキーを頂きたいです。」
そういってクッキーに手を伸ばすアルベルト!――ダメーー!!!!
「ま、まずは私が毒味を!」
そういって慌てて食べたクッキーは――
「ん!!!!!!」
視界が白黒して全ての毛穴が開かれる感覚!痛い!痛い!口の中が刺される様に痛い!!!
激辛だあー!!!
激辛クッキーを食べてしまい大量の汗を一気に放出してその場に倒れ込みそうな所をアルベルト様が抱き止めてくれた。きっとお化粧も汗でグチャグチャでやっと口にした言葉も「ヒャ、ヒャ、ヒャ。」しか喋られなくて今度は目眩がしてくる。意識が途切れる中……確かにこれはトラウマになる……。とガーネットが倒れたのも頷けた。
―――――ん?これは私の前世の記憶?
アルベルト様が小さな画面越しに私に微笑んで下さっている……。
と思ったら「アリッサ姫。私はこちらですよ!」と私の肩を優しく叩いてアルベルト様の声がした……。
振り向けばアルベルト様が画面の中と同じように私を見て微笑んで下さっていた。
えーと。ゲームをしてたら本人が出てきたって事は……。うん、これ――夢だね!!
夢ならアルベルト様にいっぱい甘えちゃおー!!!
私はアルベルト様に思いっきり抱きつくと
「アルベルト様!私、本当はアルベルト様が好きなんです!!大好きなんです!前世の時からあなた一筋なんです!!」
とアリッサとして言えないアルベルトへの気持ちを思い切りぶちまける。
「アリッサ姫……。あなたにそんなに思って頂いていたなんて、嬉しいです。」
とアルベルトは頬を染めてまた、優しく微笑んでくれた。
そして私の頬を優しく両手で包むと
「私もアリッサ姫が大好きです。」と私に口付けて下さった……。
――私の口の中に流し込まれる冷たいモノ……。
あ……水だ。もっと……。口の中がヒリヒリするの――。
カチャカチャという物音に私は目を覚ます。
ここは自分の部屋の自分のベッド……。
口の中のヒリヒリが私に何があったのか即座に思い出させる。
「アリッサ様。よかっです。早めにお目覚めで。」
フルーラが安心した顔を覗かせた横からアルベルトの顔が覗いた。
「良かった。目が覚めて。」
「ア、アルベルト様!」
私はまた無断でアルベルト様を部屋に入れたフルーラを睨む。
すると、ウインクして「私、水を変えて参ります。」とまたしても部屋を出ていった。
また、二人にして!!
私はアルベルト様に向き直ると
「す、すみません。あんなクッキーを作ってしまって。」
と謝った。
「いえ。私は食べておりませんから大丈夫ですよ。それよりアリッサ姫は大丈夫ですか?」
「はい。少し口の中がヒリヒリしておりますが平気です。」
すると、いつもよりニコニコとした顔で
「本当に。あなたは……可憐な見た目からは想像もつかないお転婆で……フフ!あははははは!!!」
ついに吹き出して笑ってしまったアルベルト。
私は顔を真っ赤にして小さくなった。
「ますます、アリッサ姫の魅力に取りつかれてしまいました。あなたが生理的に私を受け入れられなくても私は必ずあなたの心を手にいれてみせるよ。」
ああー!!また、アルベルトからアリッサへのハートを増やしてしまったーー!!!