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第1話 思い出しました


私はこの日あなたに会って、全てを思い出した――。





ここはミシューラット王国。

私の名はアリッサ・ミシューラット。齢15となります。

私はこの国の王女として生まれました。幼い頃から淑女の嗜みを懸命に学びこの国の王女として恥ずかしくないように育っている事と思います。


コンコンと自室の扉がノックされて現れたのは――

ブロンドのサラサラの髪に目鼻立ちのハッキリとした顔立ちアイスブルーの瞳を持った王子様……。


「アリッサ。一緒にお茶でも飲まないか?」


「お兄様!喜んでご一緒致しますわ!」


この国の王子、兄のユハルテット・ミシューラットだった。お兄様は容姿端麗、頭脳明晰、物腰も柔らかで将来は賢王となるだろうと言われております。


それにお兄様には婚約者様もおります。

色々と紆余曲折ありながらお兄様が本当に愛したお方と先日婚約を致しました。

とても喜ばしい事ですわ!




私はお兄様に連れられて中庭に来ておりました。

そこにはサラサラの黒髪を風になびかせ黒い瞳で私を射抜くこれまた凄い美男子がおりました。


「待たせたね。アルベルト。妹のアリッサだよ。」


「アリッサ。ご挨拶して。」


私は綺麗に纏められたブロンドの髪に付けられた髪飾りを揺らしながらアイスブルーの瞳を瞬かせ、キメ細やかな白い肌を赤く染めてしまいました。そして形の良いプックリとしたピンク色の唇が半開きになりそうな所を慌てて閉じたのです。


私はこの方を見て全てを思い出しました。




――そう、この世界は私が前世でプレイしたことのある乙女ゲームの世界だって……。


夢のイケメン大集合!というよくあるキャッチフレーズの乙女ゲーム……私はこのゲームのある攻略対象が好きで好きで仕方がなかった。



「……リッサ!アリッサ!!」


お兄様が私を懸命に呼んでいた。


ハッ!!いけない!今、私はアリッサだった。


「は、はじめまして。アリッサ・ミシューラットと申します。」


私は慌てて淑女の礼をとった。


「シュトラスト国、第1王子アルベルト・シュトラストと申します。」


彼はニコリと笑うと私を真っ直ぐに見つめて言った。


「実は初めましてではないんだ。8年前、私が10歳の頃にこちらのパーティーに父が招待された時、一緒に来ていたんだ。その時アリッサ姫ともお会いしたことがあるのですよ。」


「え?」

8年前というと私が7歳の時……確かにパーティーにシュトラスト国王が国賓としていらしていた時があったわ。

でもアルベルト王子と対面した記憶がない……。


私が困った顔をしていると、アルベルト王子はフフッと笑みを浮かべた。


「仕方がありません。アリッサ姫は色んな殿方から熱烈なアプローチを受けておりましたし、私もアリッサ姫の可愛らしさに素直な態度がとれずとても不貞腐れた顔でご挨拶してしまいましたから……。案の定、アリッサ姫は泣いて逃げてしまわれました。あの時は本当に申し訳ありませんでした。」


思い出した……。とても無愛想に挨拶してきた少年がいたわ。私よりもお兄さんだったから怒られているようで怖くて泣いて逃げてしまったんだった。その少年がアルベルト王子だったなんて……。


「数年ぶりにお会いしましたがあの時よりもさらに可憐にお美しくご成長されて、驚きました。」


「いえ……。そんな……。」


私は頬を赤く染めて目を伏せた。


「さあ、とりあえず立ち話もなんだしお茶にしないか?」

お兄様がニコやかにお茶の用意がされたテーブルへ私達を促した。


「ええ。」


「ああ、そうだな。美味しいお茶とお菓子を用意して下さっていたのに、すっかりアリッサ姫に心奪われたていたよ。」


椅子に座るとまたもやアルベルト王子が甘い言葉を吐いてくる。


待って!待って!!ちょっと今、頭ん中グチャグチャだからアルベルト一旦ストーーップ!!


「アルベルト、そんなに急いで口説かずともアリッサはもう泣いて逃げたりしないよ。な?」


「あ、は……い。」

私は真っ赤な顔で返事をするので精一杯だった。


その後はとりとめのないお話をお兄様とアルベルト様がして、時折、アルベルト様は私の方を向いてニコリと笑いかけて下さるので私は終始ドキドキが収まりませんでした。


お兄様とアルベルト様は先日、久しぶりにお会いしたようなのですが、歳も同じで王子同士ということもありとても仲がよろしいようです。



「それじゃあ、俺達はこれから視察に出掛けるから。」


「はい。いってらっしゃいませ。」


私はニコリと笑うと淑女の礼をした。


「アリッサ姫、私はしばらく勉強の為にこの国に滞在致します。また、一緒にお茶を飲んで頂けますか?」


私は思いもよらない申し出に頬を染めて「喜んで。」とお答えしました。





生アルベルトめっっっちゃかっこいいー!!!

私は自室に戻るとベッドにダイブしてゴロゴロと転がりながら悶えていた。


侍女には「少し休むから一人にして。」と言って出てもらっていた。

だからこそ出来る淑女らしからぬ行動。


「はわぁ・・・。まさか実際にアルベルト様をこの目で拝むことが出来る日が来るなんて!!転生サイコー!!!」


粗方ベッドの上で暴れた私は一旦仕切り直す。


「ふう。とりあえず落ち着け私。まずは前世について思い出したことをまとめてみよう。」


鈴木 綾 享年25歳。 通勤中にトラックに轢かれて死んだハズ。

この辺はトラックに突っ込まれて強烈な痛みにより意識を失った……いや即死だったのか?トラックに突っ込まれた時の事を思いだし身震いする。


いや!もう前世の死因なんてどうでも良いじゃないか!!今、重要なのはここが乙女ゲームの世界だって事だ!

しかも私が大好きで大好きで拗らせすぎて結局、年齢=彼氏いない歴の原因になったと言っても過言ではないアルベルト様のいる世界!!


神は実在するんだな!きっと私の無惨な最後に嘆いてこんなとびっきりのプレゼントを用意してくれていたんだ!!


だてに前世で学生時代みんなが嫌がる委員長とかやったり親や先生の理想の子供になるため死に物狂いで勉強して品行方正の子供でいたり、大人になって会社勤めをしてからもお茶汲みからコピー等の雑務。幹事や彼氏持ちの子の仕事を肩代わりして残業してまで余分な仕事を請け負っていただけのことはある!私の努力は無駄ではなかったんだ!!前世で徳を積むって大事よねー!!


そんな真面目な私の密かな趣味が乙女ゲームをすることだったのよね。子供の頃にコツコツと貯めたお小遣いで親にバレない様に初めて買ってプレイしたのがこの私が転生した世界の乙女ゲーム!


おっとまた、前世の話に戻ってしまった。

早く乙女ゲームについての事を紙に書き留めておかなくては……。


私はもしかしたら一時的に前世の事を思い出しているだけでこの後もずっと覚えていられるか分からないので、紙に簡単な前世の自分のプロフィール等を書いた後、乙女ゲームについて詳しく書くため筆を走らせた。


因みに文字は日本語で書いている。

もし誰かに見られても解読することは不可能だろうから……。

しかし羽ペンで日本語書くって結構面倒くさくて難しいな……。



乙女ゲームの題名はなぜか思い出せなかった。


主人公のヒロインは下町に住んでいる花屋の娘、ガーネットだ。

この町娘のヒロインと恋に落ちるイケメン達は

まず王道、王子様ルートがなんと私の現お兄様ユハルテット・ミシューラット!


そう。私が転生したのは攻略対象の1人、ユハルテット王子の妹だったのだ。


そして、驚くことにヒロインのガーネットはこの前、婚約したばかりのお兄様の婚約者。


つまりもう乙女ゲームの内容はほぼ終わっておりあとはエンディングの結婚式を待つのみなのだ。


と言ってもゲームではヒーローから告白されて両思いになればそのまま数ヵ月後になり結婚式の映像がエンディングとして流れるのだから、今はゲームではプレイすることのない空白の期間なのだ。


そういえば、お兄様のエンディングの時は他の攻略対象達もお祝いに駆けつけていたな……。もしかしてアルベルト様はその頃までご滞在するということかしら?


私はウキウキと乙女ゲームの内容を書き記していく。


考えたんだけど、これってヒロインはもうお兄様ルートで確定しているのよね。と言うことはアルベルト様はヒロインとくっつく事はないと言うことよね!?だったら私がアルベルト様と恋に落ちても問題ないのよね!?ね!?


やった!やったわ!!ここに来て前世からの恋を実らせる事が出来るかも知れないなんて!!


転生バンザーーイ!!!


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