プロローグ
母親は俺を産んだあと亡くなった。
父親はその三年後、事故で亡くなった。
体が弱く幼かった俺は父方の叔母夫婦に育てられた。
最初は優しかった叔母夫婦も、二人に子供が生まれてからは二人は俺の存在を忘れるようになった。
二人の子供は最初は兄と慕ってくれたけど、家族の歪な形に気づいてからは近寄ることもなくなっていった。ときどき、気遣ってこちらを伺っていたようだが、これ以上の家庭の不和を怖れて話しかけてくることはなかった。
学校にも通わせてもらっていたが、そこにも居場所となるようなところはできなかった。
本を読み、静かに過ごす。その時間が、とても穏やかだったことを覚えている。
12才の頃、体調を崩した。
苦しくて息も絶え絶えな俺を、叔母は家から連れ出してくれた。
行く先は森だった。
ラズベルの甘い匂いが届く地面に、優しく寝かされた。
声はもう出せなくて、叔母と思う、人の気配も遠ざかっていった。
それが、絶望だったのかと聞かれたら、別にそうでもなかったと思う。
ただ、この死が―誰の不幸も呼ばないのならそれはそれで――良かったのだ。と思った気がする。
「こんなところでしんではだめよ」
咎めるような幼い声が、意識の途切れる間際に聞こえた気がした。
それが、いずれ「刻印の魔女」と呼ばれる少女との出会いだった。
短編「魔女の騎士」の連載版です。
見切り発車します!
拙い文章ですが、よろしくお願いします!