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時風高校探偵倶楽部の活動報告  作者: 也麻田麻也
第一章 94盗難事件
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転校生に訪れる質問攻め

 自習前の休み時間と言うこともあり、クラスにどこか気の抜けた空気が流れると、木ノ実が俺の席の前に立った。

「ヤッホー転校生君」

 補講のショックからもう立ち直ったのか、弾むような声で言ってきた。

(あたし)は木ノ実茜(このみあかね)って言うんだ。転校生君は……えっとなに(せめ)君って言うんだっけ?」


 自己紹介されたが俺はもうこいつの名前は知っていた。立ち上がる木ノ実は160センチ程度で女子としては平均より少し高いくらいの身長だった。髪は黒髪のショートカットでスポーティーな感じを醸し出している。そして俺の中での木ノ実のイメージは明るい馬鹿固まった。

「せめじゃなくてこうだよ。水澤攻」


「そうだった、そうだった。水澤攻君だから……あだ名はせめるんだね」


 俺の中でのイメージが明るい馬鹿から、明るい大馬鹿に代わった。こうって訂正したのに、なぜせめるんなんだ。そもそもあだ名にるんって付くのか?


「茜、あだ名は時期尚早です。まずは名字に君づけから始めるのが通説です」


 ツインテールの彩香は木ノ実に向かいそう言うと椅子をずらし俺を向いた。

「小テストのせいで挨拶も出来ずに申し訳ないです。私は日向彩香(ひなたあやか)と言うです。よろしくです」


 振り返ったツインテールの日向は顔の作りが幼く髪型も相まってか、中学生いや、下手したら小学生にしか見えなかった。

「……同い年だよな?」

 もしや漫画の世界に登場する天才小学生で、飛び級でこの学校に入ったんじゃないかと思い俺は思わず聞いてしまった。


「失礼です。屈辱です。高校生です」


 ギろっと睨み付け言ってくる。確かに失礼な発言だと悔やみ、慌てて謝った。

「ごめん」


「いいです。許すです」

 許すとは言ったが、怒りは収まってないのか、日向は睨んだまま言った。

「それにしても水澤君はおっきいですね。なに食べたらそんなにおっきくなれるですか?」


 おっきいとは背の事だろう。180センチは高身長の部類に入るだろうし、女子が大半のこのクラスでは特に背が高く思えるだろうな。

「特になに食べたって訳ではないけど、昔から背は高い方だったな」


「ちっ」

 俺の答えが気にくわなかったのか、身長にコンプレックスがあるのか、隣の月城がペットボトルの飲み物の封を開けながら舌打ちした。


「あら、月城さん、舌打ちしちゃダメですよ」

 大和撫子がくすりと笑い振り返った。

「はじめまして、(わたくし)金井祥子(かないしょうこ)と申します。これから二年間よろしくお願いいたします」


 金井はやはり美人であった。目尻には小さな黒子があり、高二とは思えない、色っぽさがあった。

 振り替えってはじめて気づけた事もある。


 金井は胸がとてつもなくでかかった。


 ブレザーでも隠しきれないサイズだ。一瞬俺はなぜこいつはシャツの中にバレーボールを仕込んでいるんだろうと思ったくらいだ。


 巨乳よりも小振りな胸が好きな俺でも思わず目が行ってしまう。


 日向の質問ではないが、なに食べたらこんなにおっきくなれるですか?


「水澤さんはどちらから転校して来たんですか?」

 おっとりとした口調で聞いてくる。


 俺は慌てて視線をあげ金井に答える。

「M県から」


「あら、隣ですね」

 時風高校はM県の隣の県にある。県庁もあることから栄えてはいるが、俺がいたM県S市は政令指定都市でもあったから、越してきたF市はどこか田舎と言う感じだった。


「ねえねえ、せめるんは体おっきいけど、鍛えたりしてるの?」


「せめじゃなくてこうだって」

 明るい大馬鹿に向かい訂正する。

「中学時代はバレーしてたけど、前の学校では帰宅部だったな」


「じゃあうちでは部活は運動部に入るの?」

 突如眼鏡にみつあみのルーム長が会話に入ってきた。ルーム長を見ると他にも何人かのクラスメイトが俺の席を囲んでいた。

「あっ、私はルーム長の梅津美幸(うめつみゆき)だよ。よろしくね」


「よろしく」

 お辞儀をし挨拶をしたルーム長に俺は会釈で返す。

「部活はまだ考えてないけと、多分帰宅部になるかな。二年の途中から入っても運動部じゃレギュラーは難しそうだし、文化系は合わないしな」

 俺が質問に答えると、ここから怒濤の質問攻めが始まった。


「好きなタイプは?」「好きな服装は?」「お姫様だっこは出来る?」「デートならどこに行きたい?」「カッコいい系と可愛い系ならどっちが好き?」「髪は長いのと短いのならどっちが好き?」「好きな漫画のキャラは?」「シャツのボタンは開けてるのと閉めているのならどっち?」「襲うのと襲われるのならどっちのシュチュエーションが好き?」


 想定していた質問は微々たるもので、大半は返答に困る質問だった。用意していた答えを述べたり分からないや特にないかなシャツのボタンは閉めてる方と答えると、女子達はキャーキャー叫びはしゃいだり、真剣に考えてよと詰め寄ったりしてくる。


 俺は自己紹介の挨拶を失敗していたので、どぶ色の青春が待っていると思っていたが、思ったよりもクラスの雰囲気はいいようでホッと胸を撫で下ろした。


 しかし、それにしても質問が多いな。休み時間もまだ終わってないと言うのに俺の体はぐったりと疲れを感じていた。休み時間なんだ少しは休みをくれ。


 それに……。


 俺がなんとかこの場を抜け出せないかと考えていると、スッと月城が席を立ち教室を出ていった。

 もしや。


 俺は渡りに船だと席を立つ。

「ちょっとごめんな」


「えー、まだ質問の途中だよー」

 木ノ実が口を尖らせ言ってくる。


「悪い。ちょっと月城に話があるんだ」


 廊下を歩いていく月城を親指で指す。するとまた、キャーと黄色い歓声が沸き上がった。


 この歓声はなんだと思いながらも俺は月城の後を追った。


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