見つかった写真
「えっ……」
荷物検査に声を上げたのは月城だった。ここで声を上げるって怪しいな。
俺が疑惑の目を向けると、月城は目を反らした。
「俺は別に構わないけど、その代わり俺一人じゃなく月城のも調べてくれよ」
「なんで僕の荷物まで検査をしなくちゃならないんだ」
「限りなく白でも容疑者は容疑者だろ」
そう言いながら俺は自分のバックのファスナーを開け、金井に手渡す。
金井は中を漁り、ジャージと財布や携帯を取り出すと、下着はないですと答えた。
「調べられて不都合なものがないって言うなら、中を見せれるだろ」
荷物検査で何もでなかった俺は余裕を見せ月城を見上げる。
「不都合なものなんかない。僕が祥子ちゃんのブラを取る筈がないだろ」
そう言いつつも月城はよほど見せたくないのか、後ろ手にリュックを隠した。
「月城さんが犯人とは誰も思ってませんから、中を見せていただけませんか」
金井がシャツを片手で押さえながら空いた手を伸ばしバックを渡すように言う。
月城は狼狽えと照れが両方入り交じり忙しく目を動かした。
これは、犯人はこいつで確定なんじゃないのか?
そう考えると俺を犯人に仕立て上げようとしたことに無償に腹が立ってきた。
「寄越せよ」
俺は隙をつき月城のリュックを奪うと、勢いよくファスナーをあける。
「ッ! やめろ!」
月城が手を伸ばし止めようとするが、時すでに遅く俺はリュックをひっくり返し中の物を床にぶちまけた。
「ああっ!」
と、悲痛な声を月城が出すと同時にばら蒔いたジャージやペットボトルに混じり、一枚の写真がふわりと浮き、金井の足元に落ちた。
「あらこれは……」
金井が写真に手を伸ばす。
「写真がどうしたですか?」
日向が聞くと写真を俺達の方に向けた。
「私の写真ね」
それはヒラヒラのレースの着いた下着のようなネグリジェ姿の金井の寝姿の写真だった。
「……下着は見つかってないけど、ヒャクパーお前が犯人だろ」
「違うっ。あれはその……」
口ごもっていると、金井が答えた。
「これはこの間のパジャマパーティーの時のネグリジェね」
「それは私と茜が一枚五百円で月城君に売った写真です。二万円で乙女ゲーが三本買えたのでよく覚えてるです」
「一枚五百円で二万円って、四十枚も買ってるじゃねえか」
ネグリジェで寝ている高校生にも驚きだが、四十枚も買っているこいつも恐ろしいな。
ってか、こんな下着のようなネグリジェの写真を大量に買うって本当にこいつが犯人なんじゃないのか?
リュックから、黒の下着は出てこなかったのが不思議でならないよ。
「鼻血云々は気合いで押さえたことにして、状況証拠だけで、こいつを犯人として立件してもいいんじゃないのか?」
「ぼっ、僕じゃない。この写真はいっ、従姉妹がパジャマが欲しいって言っていたから、その参考に買っただけだよ」
誰が信じるんだと言う下手くそな嘘だった。俺ならもっとましな嘘をつくぞ。
「まあ、そうでしたか。それでは買いに行くときは私もアドバイスしますね」
下手くそな嘘を大和撫子は信じた。
こいつは詐欺に騙されるタイプだな。疑いの色を微塵も出さない金井を見ていると、月城が語気強く言ってきた。
「おい、どこ見てるんだよ」
「どこって……顔だけど」
「いいや、君は今むっ、胸を見ていたね」
「見てねえよ」
「いいや、なめ回すような嫌らしい目を向けていたじゃないか」
嫌らしい目などしていない俺を軽蔑の色の現れた目で見てくる。
今日一日様々な目を向けられて来た俺の心は心底疲れきっていたからか、思わず言い返した。
「向けるか。第一俺は巨乳なんかに興味はねえんだよ。貧乳派だからな」
クラスメイト全員ーー外で汗を流している木ノ実は除いてかーーの前で俺は自分の性のカミングアウトをした。
「ふんっ」
と、鼻を鳴らす。
「そんなやついるもんか」
いやいるよ。取り合えず全国の貧乳派の人々に謝れ。貧乳で悩んでいるのだろうか、クラスメイトの何名かは月城に酷いと言った厳しい目を向ける。
「貧乳、巨乳どっちがいいかなんて俺は言わないが、好きずきは人それぞれ。誰もがお前と同じ趣味があると思うなよ」
そう言うとパチパチと、何名かの貧乳をコンプレックスとしているクラスメイトから俺に拍手が送られた。
その拍手が俺を現実に呼び覚ました。熱くなってたとはいえ、転校初日から俺は何を言っているんだろうか。
「ぐすっ」
クラスの貧乳の代表格であろう日向は鼻をすする。
「いい話でしたが、横道にそれたです。水澤君が素晴らしい考えの持ち主だと言うことは分かりましたが、容疑者は容疑者。もしかしたら疑われないために貧乳派を名乗っている可能性もあるです。本当なら自首して貰うのが一番だったんですが、仕方ありません。時風高校探偵部として解決に乗り出させて貰うです」
日向の言葉にどよめきが起きた。どうやら探偵部と言う言葉に反応したようだ。




