捨てきれなかったのですね、残念です。
「ふははははは!我の名は世界を滅ぼすミズイ様だ!俺の力は眼帯を外したら世界を滅ぼせるのだ!」
もうやだ、こんな幼馴染。
とりあえず色々ツッコミたい。せめて一人称くらい統一してほしいものだ。そして君の名前はミズイじゃない。親に貰った名前ぐらい大事に扱えクソ野郎。
「イズミ、行くぞー」
あぁほんとユウヤは頼りになるなぁ…。
「急げワカバ、今日は用事があるんだ」
前言撤回。ユウヤが頼りになるなと思う時はこいつの都合だけである。常にではない。いつもはゲラゲラと笑っているのにこんな時に真剣な顔をしてる理由など、聞かなくてもわかる。
「ゆっきりーなの誕生日イベントなんだよ!!早く!!!」
ほらな!こいつもギャルゲーなんだよ!!現実見てねーんだよ!!!
ユウヤなんて側から見たら羨ましいぐらいのイケメンなのに…。人の好みを侮辱する気はないが、その顔でアニメやゲーム好きなのは意外すぎる。そのせいか告白してきた女子をことごとく降り続けてる。その度に女の子を泣かせてきた、こいつにピッタリな言葉は「残念なイケメン」でいいと思う。
「さぁユーとワッカーよ!世界を滅ぼしにいくぞ!!」
それにしても酷い名前だよな。うん。
「俺は世界を滅ぼしに行かないからなー」
「じゃあワッカーは救うってわけ?」
「ユウヤやめろ」
ユウヤはユウヤですぐイズミの調子に合わせて俺をからかってくる。
2人とは幼稚園からの仲だ。家も近くて仲良かった。よく3人で遊んでいたのだが、どうしてか。どこで間違ったのか。イズミだけ道を外した。
「ワッカーは敵なのか⁉︎」
イズミは果たしてネタで言ってるのか本気で言ってるのか。こいつは所謂『中ニ病』だ。痛い。存在が痛すぎる。
俺らは春で高校生になったのだが。せめて『中ニ病』というのだから中3ぐらいで卒業してほしいものだ。だが、こいつはその精神を捨てきれなかったようだ。残念すぎる。
しかもこうなった理由が勉強からの現実逃避として始めたユウヤオススメのゲームのせいである。まったく、高校も受かって尚且つこれが続くとはいつまで現実逃避を続けるつもりでいるんだ。
「そうだぜ…くそ…!俺はワッカーと戦えない…!ここで死ぬわけにはいかねーんだ、俺には、俺には大事な嫁が…!後は任せた」
「おいこらユウヤァ!逃げるなよ!!」
ユウヤはダッシュで駅の方面へ向かって走った。元バスケ部のあいつの足に帰宅部の俺らが追いつくわけがなく、ただただ遠くなる背中を見つめるだけだった。嫁というのはゆっきりーなの事だろう。友人と二次元、どっちが大切かなんてあいつに聞くだけ馬鹿馬鹿しい。
「そうか…俺は貴様を倒さなければいけないのか…!」
「お前の世界に俺をいる設定にするのはやめてくれないかな?」
とりあえず俺はイズミと距離を置く。右目に眼帯をしたいかにも「何か宿ってるぜ」的な勘違いをしていらっしゃるのが丸出しだ。
「それはお前がこの世に存在しないって事だぞ⁉︎」
「いいよそれで。てゆーかその方が有難い」
「な、んだと⁉︎まさか、まさかお前...」
イズミがいきなり立ち止まったからこの隙にさっさと1人で帰ってやろうと、足を早めた。
「お前、自殺願望あったのか⁉︎駄目だ、死ぬなよワッカァァァァァ!!」
「いや死ぬなってお前の中で俺とイズミは敵同士じゃねーの⁉︎っておい!」
「ワッカーのばかぁぁぁぁぁ」と、まるで喧嘩したカップルの彼女が彼氏に言いながら逃げていくようにして駅の方に走っていった。何気に運動神経いいのが腹立つ。
ま、そのおかげで俺は1人気ままに帰る事ができる。
あの2人は何かと目立つ。イズミは言わんまでもない。あの眼帯をどうにかしてくれ。まぁ、あんなのになる前も生まれたて髪の色素が薄く、綺麗な茶色をしていたから学校では目立ってたがな。ユウヤはイケメンだから目立つ。綺麗な鼻筋とキリッとした目と、長身。肩につかない黒髪はサラサラってしてて、男の俺から見ても思う、イケメンだ。
じゃあ俺は?
自分でもいうのもあれだが、見た目も頭も運動も、中間ぐらいだ。平々凡々がピッタリな人生。それにイズミみたいにあんなにアイディア(といってもあんな世界観は望まない)に溢れていなければ、ユウヤみたいに熱中する何かもない。つまり俺には、個性が無い。
「なんで俺があいつらに人生を考えさせられるんだろ…」
ボソっと呟いた独り言は正解だ。
あいつらになんやかんやで憧れてる俺がいる。
「イズミの誤解、ときにいこうかな」
憧れてるんだ、単純に。
そしてあいつらといるのを俺は楽しんでいる。
ーいつか俺にも何か、人生の何かが変わる日がくるってのを信じて、今は『俺の今』を楽しもうか。
ーー
「やっぱワッカーは俺の味方だったんだな!」
本当にこいつは中二病を捨てきれなかった残念な奴だと思う。
by.マヨ
眼帯キャラの8割ほど好きになってる気がします。要するに眼帯厨です。
明るい話がやっとかけました!アオバ君にいつか何か熱中できるものが現れるといいですね( ̄▽ ̄)私の中で最初に思い浮かんだのはアイドルです。
イズミ君は純粋に将来恥ずかしい過去、つまり黒歴史を作っていただきたい。それに躊躇いもなく傷つけるユウヤ君ですね!
ユウヤ君は同じ趣味の優しげで家庭的な女性と結婚してそうです。
後日談とかやろうかな(適当)
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!