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天使、今後について不安を覚える。

 天音ちゃん、十歳児に見えますかね?

 作者はもう小学生の頃とか思い出せないので……おかしかったらスルーしてください。 ←えっ、おかしいのに?


 しかし女子力高いな、この子。

 遊雨季のキャラではホント珍しい子です。何が一番しんどいかって、どうすれば女の子らしくなるかということですよ(泣)

 オシャレな服なんて知らねぇよ!!


 目覚めたら元の世界だった……とか、ないよね。



   ◇◇◇



 まだ薄暗さを残すその部屋は、神殿にある女性神官用の宿舎の一室であった。

 カーテンの隙間から差し込んでくる微かな光が眠っている天音の顔を照らす。ベッドのすぐ横にある窓の外は、夜の終わりを告げるかのように東の空が少しずつ白み始めていた。

 どこからか一番鶏が鳴く声が聞こえてくる。


「…………ん」


 そんな朝の気配を感じてか、寝かされていたベッドの上で天音は小さく寝返りを打った。

 無意識に腕が愛用の抱き枕を探す。


「……ん、……んん?」


 ポスポスと何度か布団を叩いたところで、天音はゆっくりと瞼を開いた。


「……え!?」


 視界に映る全く見覚えのない部屋に、寝起きのぼんやりとした頭が一気に覚醒する。

 天音は寝かされていたベッドから起き上がり、キョロキョロと辺りを見回した。

 全体の広さは教室の半分くらいのようだが、物があまり置かれていない所為か実際よりもかなり広く感じる。

 薄ら見える壁紙は淡いクリーム色だろう。窓に掛かっているミントグリーンのカーテンと相俟って、どことなく爽やかな雰囲気を作っていた。


 ……私、あのまま寝ちゃったんだ。


 眠る直前の記憶が蘇ってくる。  

 どうやら、レイナルドを待っている間にあの応接室のソファーで眠ってしまったらしい。

 窓から差し込む光を見るに、あれから半日以上経過しているようだ。


「ううっ。どうして起きなかったのよ、私……」


 “待っていてくれ”と言われたのに、眠ってしまうなんて大失態だ。

 戻って来て、眠っている天音を見た彼はどう思っただろうか。人の家――というか神殿――で勝手に寝るなんて失礼な子どもだと呆れたかもしれない。

 きっと、ここまで運んでくれたのもレイナルドだ。迷惑を掛けないようにしようと思っていたのに、早速やってしまった。


「……はぁ」


 気持ちを切り替えようと小さく溜め息を吐く。

 ただ自己嫌悪に陥っていても仕方がない。もちろん、今後同じ失敗をしないために反省はするが。


 とりあえず、部屋の外に出てみようかな。


 まだ明け方のようだが、窓の外からは微かに人の声が聞こえてくる。もう起き出して仕事をしている人もいるのだろう。


「外に出ても大丈夫だよね?」


 もし掃除など手伝えることがあったらさせてもらおう。

 レイナルドは“ここの生活に慣れたら”と言ってくれたが、やはり何もしないでいるのは天音の性に合わない。

 天音はベッドから降りると乱れていたシーツを軽く手で伸ばし、枕の形を整えた。


「うわ、やっぱり服もシワが寄っちゃってる」


 自分の身体を見下ろしながらそう呟く。

 薄いラベンダー色のチュニックと七分丈のレギンスという、あまり子どもらしくない格好だが、たっぷりギャザーの入ったフレアシルエットのおかげで女の子らしいふんわり感が出ていた。……今は、幾分シワが寄ってしまっているが。


 ……寝癖は大丈夫。


 服のシワを気にしつつ、手櫛で髪を梳く。癖のない柔らかな髪質のため、肩を少し超える程度のセミロングの髪に乱れはなかった。

 自分的に最低限の身嗜みを整えた天音は、外の様子を窺おうと部屋の扉へと近付いて行く。


「……おはようございます…」


 小さく挨拶の言葉を口にしながら扉を開いた。

 上半身だけを外へ出すような形でキョロキョロと見回すと、廊下の突き当たりにいた女性と目が合う。


「……あっ!」

「ああっ!起きたのね!!」


 そう言って、その女性はダダダッと天音のもとに駆け寄って来た。

 高校生くらいだろうか。頭の両サイドで揺れるピンクのツインテールが、彼女を少し子どもっぽく見せていた。


「初めまして、私はバネッサ!レイナルド様から、あなたのお世話を頼まれてるの」


 バネッサは屈むように身体を倒し、天音へと一息に自己紹介をする。

 その顔には輝かんばかりの笑顔が浮かんでいた。……これは、所謂“小さな子を怖がらせないように”という配慮なのか。どことなく、某幼児向け番組のお姉さんを思わせる笑顔だ。

 バネッサの対応に釈然としないものを感じつつも、天音はきちんと挨拶を返す。


「……初めまして、バネッサさん。私は白鳥天音です。ご迷惑をお掛けすることもあると思いますが、これからよろしくお願いします」


 若干、いつもより丁寧な言い回しになったのは、これから世話になるバネッサに対して気を遣ったからであって、子ども扱いに対する不満からではない。断じてない。


「アマネちゃんって礼儀正しいのね。偉いわ~」


 子どもらしからぬ物言いに驚いた顔をしたものの、バネッサはニッコリと再び笑顔になって天音の頭を撫でてくる。

 “偉いわ~”などという、近所のおばさんのようなセリフに内心ムッとするが、ここは我慢だ。彼女だって然程齢が変わらないだろうと思っても、顔に出してはいけない。


「…………ありがとうございます」

「えっと……まず、この宿舎の中を案内するね。

 あっ、ここは神殿の女性宿舎なんだけど、レイナルド様から聞いてる?」

「女性宿舎があることは聞いてたんですけど……。その、寝ている間に部屋まで運んでもらったみたいで…」

「そっか。うーん……じゃあ、歩きながら色々教えるね。準備とか、良い?」


 準備とは何を指すのか。

 身支度のことなら、天音的には完全にアウトだ。風呂以前にまだ顔すら洗っていない。


「あの、もし良かったら顔だけでも洗わせてもらえますか?」

「あ、そうだよね!ごめん、気付かなくて。先に洗面所に行こっか」


 できれば着替えと風呂も欲しいと切実に思ったが、残念ながらバネッサに天音の願いは伝わらなかったようだ。目で訴えるだけではダメだったか。しかし、世話をしてもらう身で我儘を言う訳にもいかない。

 天音は引き攣った顔を隠すように深々と頭を下げる。


「はい、よろしくお願いします」


 こうして、ビミョーに気の利かないバネッサによる神殿案内が始まった。



   ◇◇◇



 先程の言葉通り、バネッサが最初に天音を案内したのは洗面所だった。


「ここが洗面所!あっちは御手洗いで、その隣はお風呂ね」


 バネッサは一つ一つ手で指し示しながら説明していく。

 その説明に合わせて天音が視線を動かしていくと、御手洗いと言われた場所の扉の横にはお馴染みの“あのマーク”があった。


 ……何で、トイレのマークが。


 アレは異世界共通のものだったのだろうか。

 丸と三角だけで女性を表している、あの画期的なマークは世界を越えて普及していたようだ。……わざわざ女性宿舎のトイレに付ける必要はない気もするが。トイレという表示だけで十分だと思う。


「行きたいの?」

「……えっ?」

「え?……ジッと見てるから、御手洗いに行きたいのかと思ったんだけど…」


 不思議そうな顔でこちらを見つめてくるバネッサに、天音は顔が引き攣るのを自覚した。……悪気がない分、余計に性質が悪い。

 むしろ天音はその隣の風呂に行きたかった。心の底から。


「……い、いえ。トイレのマークが私の国のものと同じだったので……ちょっと気になっただけです」

「へえ、そうだったんだ~。不思議だね~」


 “子どもは可愛いこと気にするな~”的なバネッサの言葉に、もう乾いた笑いしか出ない。


 そうだ。

 きっと、この人はお姉さんぶりたい年頃なんだ。


 天音は自分の方が子どもである事実には目を瞑り、バネッサへと生暖かい視線を向けた。……たぶん、どっちも子どもだ。 




「あれ、バネッサ?」


 二人が、ある意味ほのぼのとした――その間には大分温度差があったが――雰囲気に包まれていると、一人の女性が声を掛けてきた。

 バネッサと同じような服を着ているところを見ると、彼女の同僚だろう。キツめの顔立ちに良く似合う燃えるような赤毛の女性だ。身長は低めなのに、何だか逆らってはいけないような威圧感がある。


「あ、アンナ!」

「その子、レイナルド様が言ってた子よね?」


 チラリと天音の方を見やったアンナは、バネッサを睨みつけるように言葉を続けた。


「あんた、まだ着替え渡してないの?」

「え……あ、ああっ!!!……ご、ごめん、アマネちゃん!!」


 完全に忘れていたらしい。

 思い出すまでに少し間があったのには、気付かないフリをしてあげよう。


「……いえ。着替えを貸してもらえるんですか?」

「えっと、その……」

「ええ、そうよ。貸すんじゃなくて、あなたにあげるんだけどね」


 バネッサが言い淀んでいると、それを見兼ねたのかアンナが説明してくれた。

 見た目通り、しっかりした女性のようだ。


「あっ、そうなんですか。……ありがとうございます。昨日から同じ服を着てたので嬉しいです」

「そうよね、女の子だもんねぇ?…………はぁ」


 アンナに溜め息付きで嫌味を言われ、バネッサはシュンとしたように俯いた。心なしか、彼女のツインテールも悲しげに萎れたような気がする。

 しかし、アンナは落ち込んだバネッサを気にも留めず、天音へと問い掛けてきた。


「その様子だと、お風呂にも入ってないんでしょう?今からでも入る?」

「……良いんですか?」


 面倒を看てもらう立場であまり我儘をいう訳にはいかないと思うのだが、風呂に入れるという誘惑には抗えなかった。

 天音は、たとえ風邪を引いていたとしても風呂に入りたい派だ。ついでに、家では入浴に1時間は掛ける風呂好きである。湯にまったりと浸かって疲れを癒すのは日本人の遺伝子に刻みつけられている本能かもしれない。


「ええ。着替えを持ってくるまで、お風呂に入って待っててくれると嬉しいんだけど」

「はい!本当にありがとうございます!!」

「お礼なんていいわよ。……バネッサ、さっさと着替え取りに行きなさい」


 思わず声が大きくなってしまった天音に柔らかい口調で言葉を返したアンナは、バネッサには冷たい視線を向けて指示を出した。

 一人いじけていたバネッサは、突然のことに戸惑いの声を上げる。


「えっ、私が行くの?」

「……はあ?」


 アンナの声がワントーン下がった。まるで、最後通牒のようだ。

 ビクッと肩を揺らし顔を蒼褪めさせながら、バネッサは天音に声を掛ける。


「ア、アマネちゃん……私、着替えを取って来るね。一人でお風呂入れる?」


 彼女は、天音を一体いくつだと思っているのだろう。

 着替えも入浴も一人でできる。……異世界特有の方法とかでなければ。


「このくらいの齢なら一人で入れるでしょ。ウダウダ言ってないで、早く行きなさい!」


 アンナはバカなことを聞いたバネッサを一喝した。

 小柄な彼女から出たとは思えない程の声が辺りに響く。その声に、天音はこの人には絶対に逆らわないでおこうと心に刻みつけた。


「は、はいぃ~!!」


 涙目になりながらどこかへと走り去るバネッサに心の中で合掌する。



 ―――バネッサが世話係で、この先大丈夫なのだろうか……。





 新キャラ登場。


 バネッサちゃんはKYな魔法少女です。普段はダメな子ですが、何かあったときは頼りになる……かもしれない。お星様が付いた魔法ステッキを持ってそうなイメージ。


 アンナちゃんはお姉さん系幼馴染み。このまま成長すると、肝っ玉母ちゃんにジョブチェンジします。逆さにした箒を持ってるイメージ。



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