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斬ルストーリー  作者: 二丁拳銃
2/2

♯2.青天の霹靂



ふぅ、できたぜ。

~白鶴城天守閣~


「まったく。主君とその娘が呼んでるってのに、何仕事サボってのんびりお茶してんのよ?そんなに腹切りたいわけ?」



ただ今俺はこの国の姫君、松姫様からありがた~い御言葉をいただいている所だ。


まぁ今回は全面的に俺が悪いので、姫様の説教には耳が痛ぇ。


「ちょっと志伝聞いてるの!?」


「あ痛ァ!?」


姫様の踵落としが脳天直撃…!つーか、あんな豪奢な着物着てよく跳び蹴りできたよなァ。姫様のじゃじゃ馬っぷりに拍車が掛かってる。


…殿ぉ。こりゃあ将来姫の旦那は尻に敷かれること受け合いだぜ。


「…………ふぅ」


ハイ其処の殿様溜め息つかない!



姫ってば、幼い頃に母君を亡くして以来血気盛んな武成男児たちに囲まれて育ったからなぁ。随分と逞しくなっちゃって。…アレ?姫がああなっちまったのは俺らの所為?


つか、ホンット見てくれはいいんだけどなぁ。艶のある真紅の長髪を二本の簪で結い上げて、武成国の姫君だけが着ることを許されている《絢爛の華》と呼ばれる着物を着こなす姿は、まさしく姫!って感じで。



「な、何よ?じろじろ見て」


「いえいえナンデモゴザイマセン」


「うわぁ、アヤシイ」


「…そろそろよいか?お松よ」

そこで、今までことの成り行きを見守っていた龍康様が会話に入ってきた。


姫様と同じ真紅の髪が焔の様に逆立ち、その眼光は初めて見る者を否応なしに平伏させてしまう程の威厳をたたえている。


流石は我等が君主様だよなぁ。真の王者ってのはこういう人の事を指すんだろうぜ。


「むぅ。父上、松はまだまだ志伝に言いたい事が山の様にあるのですが?」


「まったく、仕方のないやつよ。そういうことは我の用事が終わった後に致せ。幾分時間を取らせてやる故、な?」


ま、マジで!?


「……そうして下さるのでしたら、松が申す事はありませぬ。お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありません」


そう言って姫様は元居た場所、殿の隣に戻っていった。その際に姫の目がこちらを見て、『逃げたらセップク』と目で語られた気がした。


…こりゃあ逃げらんねーな。


そして、姫様が殿の隣に戻り居住まいを正すのを確認すると、俺は今回の召集について殿に聞いてみることにする。



「それで大殿。此度の召集に於かれましては、一体どの様な御用件で御座いましょうか?」


「ウム。志伝よ、我が武成国は他の三国と同盟を結んでおるのは知っているな?」


「魔族に対抗するための四国同盟でごさいますね?」



四国同盟ってのは、ヒトを食い物・家畜としか見ていない魔族に対抗するための同盟の事を指す。

エルフが治める魔導騎士国家アーセナル、獣人が治める狩猟国家メルカンド、ドワーフが治める工匠国家テックウッド。


そして、俺たち人間が住んでいる武刀国家《武成》。


この四つの国が十年前に同盟を結んだことからついた名が《四国同盟》ってワケだ。


と言っても、この事は学舎がくしゃに通ってりゃ誰もが習うことだ。そんなことを今更お聞きになるたァ、同盟に何かあったのかもしれねぇ。


「殿、同盟に何か?」


俺がそう言うと、龍康様がほんの少しだけ表情を和らげた。


「フッ。察しが早くて助かるぞ志伝。実はな、最近どうも他の三国から我が国を軽んじられている雰囲気がするのだ。それは、三国に使節として送っている者達もそれを感じているとの報告があった。…寧ろ周りは全員他国の者、その風当たりの強さは我等が思っている以上のものだろう」


そう申された龍康様の表情は、一変して苦々しいものだった。


だが、俺はどうにも腑に落ちなかった。武成をナメてかかる他国のメリットが想像できないからだ。


この国の武者の強さは身をもって知っているし、階級は低くとも《武者になれた》人間でザコなんてヤツは武成には居ねぇ。



俺は色々な理由を考えながら一人百面相をしていると、龍康様が愉快そうに笑われた。


解せぬ…!


「何バカづら晒してんのよ、気色悪い」


姫ひでぇ!!


終いにゃあ泣くぞコンニャロー!


「ハッハッハッ!志伝よ、そう考え込んでしまうのも仕方の無いことよ。その報告を聞かされた時は、我も似たような顔をしていたと思うぞ!!」


「え…?つ、つまり殿もバカづr」


「し・で・ん?」


「ら、ラッキョウ食べたいなぁ~(汗)」


「む?ラッキョウとな?いきなりどうした、志伝?」


な、なんでもナイですからほじくり返さないで龍康様!ひ、姫がメッチャこっち見てる!下手なコト言ったら殺される…!!



「まぁよい。話の続きだったな?何ゆえに我の国が三国から軽んじられているのか?、という」


「はい」


「それを説明するには、とある場所について知らねばならん。志伝よ、《大陸解放戦線》という義勇軍を知っているな?」


「勿論です。確か俺の生まれた年に発足した軍だと聞いています」


「そうだ。かれこれ18年前に、《異なる種族が協力し合えばお互いの欠点を補い合い、より強力な力が生まれる》という思想を元に成立した義勇軍だ」


打たれ弱いエルフを守る為に屈強な肉体を持つドワーフが盾と成り、動きの遅いドワーフを援護する為に素早い動きが得意な獣人が敵を撹乱し、獣人の広げた傷痕を更に広げる為に様々な武具を扱える器用さを持つ人間が追撃し、時間を稼いだ三種族に報いる為にエルフが編み上げた強大な魔術で一掃する、だったか。


確かに、その通りに戦が動けば魔族相手だろうが連戦連勝も難くないだろう。だが、戦ってのは思い通りにいかねぇのが大半だ。


都合良く考え過ぎじゃねぇのか、と思う俺は結構捻くれてんのかねぇ?


まぁ、今大事なのはそれじゃねぇや。龍康様の続きを聞くとしよう。


「そして月日は流れて五年、大陸解放戦線は一つの転換期を迎えた。戦乙女イシュタルの台頭である。エルフと人間の混血であった彼女は武成・アーセナル両国に居場所が無く、種族・国家にとらわれない大陸解放戦線は彼女にとってかなり居心地は良かったのだろう。彼女は初めてできた己の居場所を守る為に八面六臂の活躍で武功を挙げ続け、異例の速さで大陸解放戦線の団長となったのだ」


「女性ながら天晴れな武者ぶりですな。是非とも一度お会いしたい限りです」


「あぁ。それならば直ぐにでも会えると思うぞ」


「?…それは一体?」



かなり気になる発言だが、龍康様を見る限りではこの場で言及するつもりは無さそうだ。


…戦乙女イシュタル、美人だと良いなぁ。


「そして、団長になった彼女が最初にやった事は大陸解放戦線基地エルドラの都市化だ。イシュタルは、エルドラを団員にとっての第二の故郷とすることによって心身共に気力の充実を図り、兵士の《絶対に生きて戻る》という思いをより強くし生存率を引き上げためにな」


確かに、年がら年中戦の陣地に居ても楽しいコトなんて有ったもんじゃねぇ。兵士の士気は下がる一方、だが都市ができて人が集まり好きなヤツが出来たりすりゃあ『また会うために絶対生きて戻ろう』って思えるだろうなぁ。


「結果としてイシュタルは四国から協力を取り付け、エルドラの後方に《解放都市エルドラッド》を造り上げた。更に大陸解放戦線次代の将兵を育てる為に、《リーンマイズ学園》を設立。これ等により、大陸解放戦線は18年もの間戦い続ける事が出来ているのだと我は考えておる」


「…なるほど。しかし殿、その話と今回の件にどういった関係があるのですか?」


「うむ。解放都市は四国が協力して造り上げたモノ、ひいては四国共通の領地とも考えられる。エルドラッドは主要都市の中では最前線の都市ゆえ、必然魔物や魔族から採れる様々な素材が多く集まる。そういった素材から創られる武具や霊薬は貴重であるからして、素材を確保する為の人員を三国は送り込んでいるのだ。リーンマイズ学園の学徒としてな」


「フムフム」


「フムフム(姫)」


「………三国が送る人員の中には大貴族の子弟や豪族の血縁者、部族長の倅などが一般の者に混じって学園に入っており、本国との連絡網を通じて他国の次代の若者たちがどれだけの実力を兼ね備えているかを確認している。他国の大まかな戦力を知ることは重要だ。我等四国は必ずどこかの国と国境が面しているからな」


「あれ?殿、武成はどこの家をエルドラッドに遣っているのですか?先の話では殿は三国としか申されませんでしたが…」



「うん?我は忍を送るだけで、エルドラッドへは不干渉を決めているぞ?故に今現在リーンマイズ学園に在籍している人間は、武成で《武者になれなかった》者たちだ」



「…なるほど合点がいきました。その者たちを見て三国が送り込んだ学徒が『武成恐ルル二足ラズ』と本国に報告し、外交が上手く行かなくなっているのですね?」



「そうだ。《武者》となり帯刀を許される条件は、武醒館で6の歳から修行を積み元服までに《空割・カラワリ》以上の技を修めた者が《武者》となる」



空割ってのは斬撃を飛ばす技のことで、翼を持つ生き物の名は威力と有効射程距離を表してる。



《雀》が1メートル


《鳩》が3メートル


《燕》が5メートル


《鷲》が7メートル


《大鷲》が9メートル


《飛竜》が15メートル


《龍》が30メートル以上


これが出来ねぇと《武者》になれない。斬撃を飛ばすにはある種の天稟が要るからな。


もっとも、天稟があるからと言って簡単にできるものじゃねぇ。たゆまぬ努力があってこそ、会得できる技だ。


だからこの国の《武者》に真の弱者はいねぇのさ。


つまり……


「リーンマイズに《武者》はおらず、武成で《武者》に成れなかった者がリーンマイズへと流れているのですね?」


「そうだ。武成軍は《武者》と《巫女武者》のみで組織されている。刀を持てぬ、《武者》に成れぬ者は軍に入る事以外の職に就くしかないが、中には《武者》に成れずとも魔族と戦い大陸を平和にせんと欲する益荒男もいる。そういった気高き魂を持った人間がリーンマイズ学園へ向かうのだ」



そうなると、『手前らのせいで祖国が侮られているんだぞ』とは口が裂けても言っちゃあならねぇな。



「しかし他国の諜報機関は何をやっているんでしょうかね?そういった事の真偽は、直接調べれば分かりそうなモンですが…」


「そこはホラ、武成ウチの忍は優秀だから。志伝、武成忍軍の掟を思い出しなさい?」


「あぁー、《他国の間者、情報諸共生きて出すべからず》か。この国に送られてくる間者が可哀想に思えてくるねぇ。…俺だったら絶対潜入したくないぜ、この国」


「よねぇ~。私、この国の姫でよかったぁ~」



俺と姫二人揃ってウンウン頷いていると、殿が困った表情をして俺を見ていた。



「のう?志伝よ。さっきまでの丁寧な口調、公式な場では問題ないのだがこういった非公式な場では些かむず痒い。昔のように気安い言葉を使うてもよいのだぞ?」


やべぇ、ちっと言葉が雑になっちまったか?


見れば姫も頷いていやがる…!



「私も父上の案にさんせ~い。志伝の敬語程似合わないモノはないわ、マジで」


「ま、マジで……?」


「「マジで」」



無頼塚=志伝スーパーへりくだりタイム終了のお知らせ



「…ハァ。なら普段通りに喋らせてもらいますわ。俺もコッチの方が話しやすいんでね。それで?間者からの情報が待てども待てども送られてこない三国の首脳陣はどんな結論を出したんです?」


「それで良いぞ、志伝。それでな?三国は我が国を《忍(諜報)にしか力を入れていない臆病者の腰抜けの国》というレッテルを貼ったそうなのだ。笑えるだろう?《武成》が臆病者だと」


「ハッハッハ、違いねぇや。つまり、俺を呼んだのは《武成》の武威を侮った三国を斬ってこい、と。こういう事ですかイ?」


「そうしたいのは山々なんでしょうケド、止めときなさい。わざわざ魔族の敵を減らしてやる必要なんか無いんだから」


「だったら、俺は何のために呼ばれたんだよ?皆目見当がつかねぇんだが」


そう言って姫から視線をズラして龍康様を見た。


何かメッチャニコニコしてるんですケド、嫌な予感しかしないんですケドぉ!



「そこでだ、志伝。お主、今からリーンマイズ学園へと赴いて学徒として編入してくるがいい。そこで、武成の武者はどれほどのモノかというのを存分に見せつけるのだ!!」







なん……だと…!!





各国の位置としては、







狩 騎 解 工 武



こんな感じです。


ケータイつらい。

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