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斬ルストーリー  作者: 二丁拳銃
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♯1.その男、雲が如し

初投稿です。



「いやー。天気の良い日に桃屋で団子ってのは、またカクベツだなァオイ。そう思わない桃ちゃん?」



ある日の昼下がり、俺はココ武成国〈ブセイ〉首都白鶴城が城下町にある、都一番の人気の茶店《桃屋》で桃団子を食っている。


ココの団子は、モチ米に《王桃楽土》と呼ばれる最高品質の桃を絶妙な配分で混ぜ合わせた超一級品の団子。桃屋の桃団子を真似した店は数多くあるが、桃屋の味に勝るモンを俺は食った事がねぇ。その調理法は誰もが知りたいだろうが、『秘密です♪』って桃ちゃんが言ってたから誰も知らねぇんだ。


「ふふっ♪伝さんってホントにウチの団子が好きですね。はい、お茶です♪」


「コイツぁありがてぇや、愛してるぜ桃ちゃん」


「はいはい、お皿下げますね?それじゃあごゆっくりどうぞ♪」



そう言って桃ちゃんは空き皿を持って奥に引っ込んだ。


桃屋が都一番の茶店な訳は何も団子だけが全てじゃねぇ。何を隠そう、桃屋の人気を支えている要因のもう一つは看板娘たる春風=桃ちゃんその人である。


桃色の腰まで届く長髪に、これまた淡い桃色の着物を可憐に着こなすその姿は武成男児の心を戦弓でブチ抜くが如し…!!


桃ちゃん、おそろしい子っ!



とまぁ、おふざけはコレくらいにして桃ちゃんが注いでくれたお茶を飲んで一息ついておく。そろそろ奴サンがやって来る頃合いだからな。



――――――――様!!


ほら来やがった。


―――――――伝様ァァァ!!


それにしても今回の野郎のツラを見る限りじゃあ、いつもの事にプラスして何かあったっポイなぁ。ハハハ、イケメンがひでぇツラしてらぁ。城からココまで全力疾走か、息も絶え絶えじゃん。



「誰の、所為だと、思って、居やがりますかァァァッ!!」


そんな事をのたまいながら野郎、東雲=権兵衛は腰の太刀を抜いて斬りかかってきた。


フム、どうやらかなり頭に血が上っているみてぇだな。…確かに書類をほっぽって城を抜けたのは俺が悪い。


だからといって、


「店先で刀ぁ抜く奴があるかアアアッ!!」


「へぶしッ!?」



袈裟掛けに振り下ろされた権兵衛の太刀を紙一重でかわし掌底一発。


それを顔面に叩き込まれた権兵衛が、変な声を出しながら吹っ飛んでいった。その際に奴の腰から太刀の鞘を拝借すると宙を舞っている太刀を流れるような動作で納刀するのを忘れない俺良い仕事。



「ったく、ちったあ頭冷やしやがれ。俺じゃなかったら死んでたトコロだぞ」


「す、すみません…」



コイツの名前は東雲=権兵衛。真面目過ぎるのが玉にきずだが優秀な俺の部下で副官の一人だ。サラッサラの銀髪に切れ長の瞳が城の女中に大人気。噂じゃあイケメン四天王の一人に数えられているらしい。


随分と現在いまが充実してそうじゃねぇか、爆発しろ。


「しませんよっ!!」


「チッ。ほらよっ、手前の刀だ」


俺は持っていた刀を権兵衛に投げ渡すと、不満そうな顔をしながらもそれを受け取った。


「なんで舌打ちされなきゃいけないんですか…。まあ確かに今回はかなり冷静さを失ってしまいましたが、元はといえば志伝様が仕事をサボったからでしょうが」


「だからって抜いていい理由にはならねぇよなァ?」


「うぐっ…!?」


「そこらへんどう思うよ桃ちゃん?」


「ファッ!?春風殿!?」


「馬ァー鹿。桃ちゃんは他のお客さんの所ですぅー」


「こ、このヤロウ…!!」



コイツは真面目だからかなりイジリがいがあるんだよなぁ。もう少し権兵衛をイジリたいトコロだが、これ以上からかうとマジでキレちまうから止めとくか。



「それで、何か用か?」


「話をブッタ斬りますね。…オホン、まあいいです。貴方に付き合ってたら話が進みませんから。要件は二つです」


そう言って権兵衛は姿勢を正した。



「あ、桃団子食う?」


「いただきます…じゃなくて!!」



ノリツッコミ…だと!?


「は、話が進まない…!!」



すると、ひと段落ついたのか桃ちゃんが此方にやって来た。歩く度に双子山が揺れている様は、俺の魂を震わせるぜ!!


「あ、この人聞く気無いな」



やっと気付いたか、バカめッ!



そして権兵衛が頭を抱えていると、桃ちゃんが花の咲くような苦笑いを浮かべながら話しかけてきた。



「あらあら伝さん、あんまり東雲様をからかわれては可哀想ですよ?毛根がストレスで音速、です♪」


「ハッハッハ、桃ちゃんも分かってるねぇ。見ろよ、コイツ涙目だぜ?」


「あらやだ私ったら。毎回毎回伝さん達のやり取りを見てきたから、少し影響を受けてしまったのかしら?」


「か、神は死んだ…!!」



なんてやり取りをそこそこに、権兵衛から用件を聞いた。


二つの用件の内の一つはいつも通り、武練場の使用申請の書類や俺の印鑑が必要な書類の確認なんかの事務仕事。机でそんな書類とにらめっこなんて、マジで退屈なんだよなぁ。遊びたい盛りの18の青年にさせる仕事じゃねぇんだが、俺の立場上しない訳にもいかねぇからこうやって息抜きを間に挟んでるってぇ寸法なのよ。



「んで?もう一つの用件は何だ?」


「はい。なんでも、殿と姫殿下の連名で志伝様宛に召集が下されたんですよ。本当なら執務室からそのまま殿の元へ向かえばいいのに、貴方が居ないせいで殿と姫殿下を待たせているんですよ!?こんなの打ち首獄門まっしぐらじゃありませんか!」



「ダーイジョブだって、話せば分かってくれるさ。…タブンね?」


「介錯は任せて下さい。私の流派が奥義、これをもって志伝様への手向けと致しましょう……!!」


「あ、マジだコイツ」


「あらあらまあまあ。伝さん頑張って♪」


「任せろ桃ちゃん!!」



さてと、あんまり待たせるとマジで切腹言い渡されちまうから行くとするかね。できたらもう少しだけ、桃ちゃんのご立派様を眺めながら茶を飲みたかったが、止めとくか。


桃ちゃんは逃げないし、会えなくなるなんて事は無いだろうからな。



「そんじゃあ俺は行くとするかね」


「…な、何してるんですか?今にも走り出しそうな構えをして」


「桃ちゃん、団子美味かったぜ。また食いに来るからな!」


「うふふ♪お待ちしてますね♪」


「え、ち、ちょっt」


「お会計ヨロシクゥ!ハハハハハハハハハァッ!!」



颯爽と走り去る俺、権兵衛が何か言いかけてたが気にしない。


俺は、風になるッ!!





~一方桃屋では~



「お会計、占めて三万桜貨です♪」


「あ、領収書貰えますか?」



上司である志伝の暴挙に、一周回って冷静になった権兵衛がいましたとさ。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



桜舞い散る大通りを俺は全力で疾走する。


ここ武成国首都、白鶴城が城下町には永年桜と呼ばれる天然記念物がある。この桜の木は一年中花を咲かせており、散った花びらが粒子となってまた新たな花びらを形成する摩訶不思議な桜だ。


そんな桜が舞い散る中を駆け抜ける俺の服装は、武者甲冑の大袖が縫い付けられた直垂に武者袴。直垂は赤で袴は黒。腰には太刀が二本という出で立ちだ。


そのまま大通りを直進すると、白鶴城の城門が見えてきた。ある程度近くまで来ると門番(顔見知り)が俺に気付いて開門してくれた。


警備がザルだと思われるかも知れんが、急いでいる俺には好都合。


「ありがとよ!やっさん今度何か奢るわ!」


「いいからいいから。権のあの急ぎようただ事じゃあねぇんだろ?早く行きな」


「お疲れ様です、無頼塚殿!!」


「おう、おつかれさん。そんじゃあなぁ!!」



そう言って俺は城門をくぐり抜ける。


それからというもの、大殿と姫殿下が待っている天守閣までの道のりの途中、色々なヤツに声をかけられた。


部下には、

「仕事してください!!」


だったり女中には、

「東雲様と結婚したいです!!」


などなど。


まあ、そんな感じで声をかけてきた相手に軽く返事を返しながら城を駆け上っていく。つーかマジ権兵衛爆発しろ。


そしてやっとこさ白鶴城最上階天守閣に辿り着くと、大襖の前で平伏して中に居るであろう方々に声をかける。



「お呼びに預かり参上致しました。五聖剣が一、無頼塚=志伝で御座います」


『うむ、入るがよい』



この声は殿の声だな、そう思いながら大襖に手をかけると何やら襖の奥から誰かが駆け寄って来るような気配がする。


それでも、入室の許可を貰った手前襖を開けないという選択肢は無いから仕方なく襖を開ける。


その瞬間、何か白い物が見えたと思ったら吹き飛ばされていた。



「何時まで待たせる気よ、こんの大馬鹿者がぁぁぁぁ!!」


「足袋しッ!?」


そう、白いものとは姫殿下。武成国国主、天宮=龍康様の一人娘、松姫様の足袋だったのだ。


つーか姫様マジパネェ。




開口一番跳び蹴りカマしてくるとは、随分とマァ立派になられて。


…龍康様、一国の姫がこんなにやんちゃになっちまっていいんですかい?取り返しがつかなくなりますぜ?



「志伝よ、我はもう諦めたぞ」



ハハッ、……泣けてくらぁ。



如何でしたでしょうか?

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