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第1話

 集まったのは・・・本人含め7人だった。


「何だー?皆冷たいなぁ~」


 思いの他少ない人数にやや落胆する卯月(うづき)だが、珊底羅(ちんちら)は苦笑いで言った。


「このような危険極まりない旅路には、そもそも誰も来たがりはしませんよ。皆平和主義ですし、出来れば静かに時を過ごしたいのでしょう」


「私だって静かな方が好きだよ」


「魔賊から身を守れるのは本当に実力者だけですから、それを考えたらこの人数は妥当ですよ。4月の幹部とも言える人揃いです」


 仲間を見渡すと、まず珊底羅(ちんちら)、小学生3、4年くらいの外見の可愛い天才少女の小手毬(こでまり)日夜(にちや)眠たそうな、怠そうな目をしているある意味愛嬌のある顔立ちの少年、因達羅(いんだら)、筋肉質で頼りがいのあるしっかりとした性格の、外見は20歳くらいの男性の騰蛇(とうだ)、超クールな美青年の木蓮(もくれん)、そして外見はまるでお姐様の、美しい顔立ちの花海棠(はなかいどう)がいる。結構個性的なメンバーばかりが集まったものだ。そして皆確実に信頼のおけるメンバーだ。


「卯月様の行く所なら喜んでついて行きますよーぅ♪」


小手毬が無邪気に笑って言った。彼女は卯月が大大大好きで、物凄く懐いている。彼女が強くなったのは、卯月の行く所どこにでもついて行けるようにするためでもある。まるで親鳥について行く小鳥のようだ。


「小手毬はいつものこととして、他の皆は何か面白そうなことがあるとでも思ったのかな?」


卯月は小手毬の頭を優しく撫でながら言った。小手毬はこの上なく朗らかな笑みを浮かべて喜んでいる。


「私は側近としてお供を」


珊底羅が薄い笑みを漏らして礼儀正しく言った。


「ボクは暇つぶしー」


「私は旅行と聞きました」


「俺は仕事が休みだから」


「……」


上から因達羅、花海棠、騰蛇、木蓮と続いた。いつもながら木蓮は必要最低限以外の事は喋らない。

卯月は気の抜けたような溜め息混じりの笑いを浮かべた。


「1人くらい『卯月様が心配だから!』みたいな人はいないもんなのね」


「卯月様、あっちがいます!!」


小手毬がサッと卯月を見上げて真剣に言った。卯月は「そうだったそうだった」とニコリと笑ってまた撫でた。


「卯月様、私はご心配申し上げます」


花海棠が上品に片手を胸に添えて言った。


「あ、ボクも心配でーす」


「あぁ、俺も俺も」


花海棠は真面目に言ったのだが、2人はおちゃらけた感じに手を上げて笑って言いだした。


「はいはいどうも」


そんな言葉を「調子がいいなァ」と笑って流した。

こんなふうに仲が良いのは『4月』ならではの雰囲気だ。


「そんじゃ行こっか」


 ふぅーっと伸びをして、吐息まじりに言う卯月であった。



















「え?何じゃって?」


 長の一人、師走(しわす)が発した言葉には、焦りと不安が混じっていた。


「だからァ、魔賊達が動きを増してるんだってーばっ!」


 長の一人、皐月(さつき)が面倒そうに言った。それもそのはず・・・。この説明をしたのは今ので30回目だ。いい加減イライラしてきたが皐月は気の長い方だ。基本平和主義なボーイッシュな女の子であり、師走はもう人間年齢90歳を超える老人である。


「もうしっかりしてくれよ!そんなんだから部下たちに色んな意味で『禿鷹(はげたか)』とかあだ名つけられるんだ」


「なんじゃと!?だれじゃそんな事言ってるのは!!」


「なんで悪口は1回で聞き取れるんだよ!」


 ある意味愉快な話は置いといて・・・。最近の情報で、魔賊達が動きを見せているらしいと言うことが分かった。各地に散らばっている化身達が何人もやられているそうだ。殺しはせず、恐怖を植え付けて去ってゆく・・・、そんなやり方らしい。


「うちが聞いたのはそのくらいで、まだ5月の連中はやられてねぇ。アンタんとこはどうだ‘禿鷹’」


「誰が禿げたかじゃと?!ふさふさじゃわ!!」


「そんな真剣(マジ)になんなよ・・・。ちょっとした遊び心じゃねーか」


「うむ・・・。ワシの所は誰もやられておらん」


「だろうな。知りもしなかった月だしな」


「むぅ・・・。お、そうじゃ。卯月の奴が・・・」


「あぁそうだ。今4月は(かしら)と幹部の(ほとん)どがいねぇ。今一番危ねぇのは4月だ」


「お前さんがふざけたお題を出すからじゃぞ?」


 ・・・そう。実は『全国巡り』は皐月の遊び心から生まれた案であり、皆が賛同してしまってこうなったのだ。


「うちだけの責任か?!違ぇだろ?!お前ぇらもノリノリだったじゃねーかよぉ?!」


「言いだしっぺが一番責任重大じゃ。4月はお前さんが面倒見い」


「ハァ?!何だよそれ大人気(おとなげ)ねぇぞ!だいたい卯月んとこ何人いると思ってんだよ!」


「300くらかのぅ?ワシんとこの数倍じゃ」


「うちんとこだって比べもんになんねぇよ!見れるか!」





「俺んとこで見ようか?」





「?」


 言い合っていると不意に脇から声が聞こえた。


「何だぁ?睦月(むつき)じゃねーか」


「俺が手紙を送ったわけだし、卯月んとこのは俺がしっかりと面倒見るよ」


「とか言って、卯月にいい格好見せようって魂胆(こんたん)なんだろ?見え見えなんだよ色男」


「・・・そうかな?やっぱそうなのかな?俺って分かりやすいのかな?」


「まぁ安心しろって。卯月は絵空事には興味ねぇからなーんも気づいちゃいねぇよ」


「それはそれで何だかなぁ・・・。」


「プラスに考えろよー!旅先でいい男見つけても興味持たねぇってことだぜ?卯月のシングル歴は守られる」


「おぉそうか!・・・でも気が変わるかも」


「お前意外とチキンだなぁ。男なら当たって崩れろよ!」


「あぁ、それね、俺昔から変だと思ってたんだ。崩れたらもう終わりじゃないか?」


「崩れても崩れても作り直すんだよ!お前ほんっとネガティブな!卯月がイラつくパターンだぞその性格!よくそれであんなふざけた手紙出せたなァ!」


「顔が見えなければ何も緊張することはない。あぁでも電話は別だよ?言葉がつまると怖いから」


「焼かれろチキン」


 見下すように睨む皐月であった。そんな時、「当たって砕けろじゃなかった?」と心の中で冷静にツッコミを入れてる師走がいた。

 結局睦月が4月を見ることになった。


「・・・卯月、喜んでくれるかな」


 遠い目で空をみて微笑んだ。急にふふっと笑う睦月に嫌悪感丸出しの皐月は一言言ってからそそくさとその場を去った。



「キモチワルっ」









「!」


 ゾクゾクっと寒気が走った・・・。


「どうされました卯月様」


 後ろを歩いていた珊底羅が声をかけた。


「・・・いや、ちょっと寒気が・・・」


「風邪・・・いや熱ですかね?」


「いや、これは非科学的なものだよきっと。何か念を送られたような・・・」


「まさか呪詛?!魔族の連中が」


 ・・・睦月の妄想が、卯月たちの不安をあおっているなんて誰も知るはずがなかった・・・。


「まぁいい。行こう」


「はい」


 未だに両腕をさすっている卯月だが、邪気は感じられないので良しとした。



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