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プロローグ

 12の月の1つ、4月の化身である、卯月(うづき)という名の、外見は齢17ほどの美しく可愛らしいルックスの少女は、薄紅色の着物に赤い羽織りを着て、バカでかい自宅の縁側に座り広い庭に咲く梅を眺めていた。

 春の気温は心地よく、1年の内最も過ごしやすいと改めて思った。

 優しいそよ風が卯月の長く黒い艶やかな髪を撫でる。このゆったりとした時を満喫して、少し横になろうと体を倒しかけた所、次の瞬間跳ね上がった。



「卯月様ぁぁぁあああああ!!!」



 聞きなれた男の声だがでかすぎる。あまりに驚いて瞬きすら忘れてしまった。

 それに加えて、さっきまでの最高な気分が台無しになったことで、忙しく肩を上下させながらやってきた男の整った顔を冷ややかに睨んだ。


「礼儀をわきまえろ珊底羅(ちんちら)・・・。」


 その様子を見て、直ぐに頭を深く下げて謝った珊底羅。しかし尚も焦った様子で告げた。


「卯月様、今日(こんにち)の大総会のことですが、まさか忘れていらっしゃったのですか!?」


「・・・・・・・・」


特に表情は変えず、ポツリと珊底羅を見ている。しかし、お気楽な笑顔に変わった。


「忘ーれちゃったよ、まぁ仕方無いね。あれつまんないし」


 そんな態度に珊底羅は体中の水分が抜き取られたかのように、ミイラのような形相で驚愕していた。

 大総会とは、12人の月の化身の長たちが年に1度だけ集まる総会のことで、今後の季節やら天候やらの予定を決定する大切な集まりである。 それに加えて少々下らない話をしたりもするが、この総会を欠席した者は理由によってはペナルティが下されることになっている。

 卯月の欠席理由はまさに厳重処罰に当てはまる。それなりの覚悟を決めておかなければならない。因みにこの総会を欠席した者は過去にはゼロ人だ。


「まずいですよ卯月様…!一体どんな罰があるのやら全く想像がつきません」

「そうだね(笑)」

「いつもながら軽いですね気楽ですね」

「まぁ過ぎちゃったものは仕方無い。どうせなら思い切り楽しもうじゃないか!」

「楽しめませんよ!!」


 かなり前向きな卯月であった。


 その日のうちに手紙が送られてきた。美しい和柄の半紙でかかれた上等なものであり、このデザインは卯月の好むものであった。

手紙の見た目に気分を良くした卯月は、一体どんなペナルティかと開いて見た。


『総会初のペナルティ該当者卯月よ、おめでとう。全国を巡り各地方のお土産を買って来るべし。期間は来年の‘この日’までだ。土産話も楽しみにしているぞ、ふははははは! 長のみんなを代表し、睦月(むつき)より♥』←男


「ほーら楽しめるじゃん」


「威張らないでくださいよ」


 書いてあることは実に楽しそうだが、これはだいぶ危険な旅である。

 長の化身を一人でも倒す、又は手に入れると言う事は1/12の力を手に入れるも同じことなのだ。その一つの力は、得た者の力量によっては一つの季節を潰されかねない。季節が一つ消えると言う事は、食量不足、自然災害など、世界に膨大な悪影響を及ぼすことになる。

 そもそも一体何処の誰がそんなもの狙っているかというと、12の月に敵対している魔賊という非道な組織だ。魔賊の(やから)は、気性が荒々しく直ぐに手が出る気の短い者が多い。

 魔賊は自然が邪魔なのだ。四季も天気も全てが邪魔。思う存分魔力を使えない、寒い暑いとうっと惜しい、雨だの雷なども嫌でも行動が制限されてしまう・・・。だからもし魔賊に出くわしたら戦うか逃げ切るしかないのだ。話し合いなど論外だ。

 しかし卯月もそんなことは当然理解しているはずだ。それを踏まえた上でこの余裕っぷり・・・、確かに卯月は長の中でもトップクラスの実力だ。さすが、というところか・・・。


「さっそく出かけよう!あす立つぞ。一緒に来たい者且つ自分の身は自分で守れる者だけ着いてきな、と皆に伝えておけ」


「はい」



 かくして、卯月の全国巡りが始まったのであった。



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