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研究の毎日

 私は交通事故で死んだ。


 死んだ時、暗がりにいて、気がついたら、温かいベットで寝ていた。鏡を見ると、見たこともない顔が、私にひっついていた。


 私は死んだ後、なぜかこの人物、「トマス」になっていた。トマスは体が弱く、寝たきりであったらしい。年は20ほどで、痩せ型で肌が不健康に白い。


 それよりも驚いたのはこの世界であった。この世界では魔法が日常的に使われ、全く不思議な光景が広がっていた。


 近代のオランダの様な風景で、魔法の杖や魔法の剣が当たり前の様に売られている。


 レンガ造りの建物は記号の様な文字が刻まれ、リフォーム会社が魔法で一瞬にして模様替えする。


 商店街では魔法で浮き上がったり変形したりする魚や野菜が、まるで踊るように空を舞う。


 私はとにかくこの世界を知ろうと、トマスの持っていた本を全て読むことにした。そこで気づいたのは、魔法と言ってもあくまで科学的な学問として扱われていることだ。


 科学との違いといえば、単に魔法という現象的なエネルギーが存在するかしないかという違いしかない。


 私は魔法の研究に熱中した。


 魔法の研究は面白く、私はいつしか自分でも使える様になっていた。人間の体の中に、魔法の現象を誘導する酵素の様なものがあるらしい。


 それは魔力と呼ばれ、それが人間に有利な構成である場合、魔力の顕現が有利に働く。


 元々量的な魔力量が魔力の顕現に作用するとされていたので、魔力の顕現が、魔力量が増えれば増えるほど、


 魔法現象の引き起こしに関係するかしないかという研究を、私は魔法大学に提出した。すると、その功績が認められた。


 私は研究室の研究長を任され、その一環としてダンジョンの研究も始めた。


 ダンジョンに行くには護衛の冒険者が必要なのだが、その冒険者が新人で、しかもダンジョンでは見たこともない様な禍々しい生き物がいたので、


 私は自分の命を守るため、とにかく殺傷性のある魔法をその生き物に放った。対象の生き物に魔力がある場合、


 その魔力の構成を変更させ、魔力量の供給を局部に集中させる、という魔法であった。結果としてうまくいった。


 使ったことはなかったが、案外すんなり行くもんだ。


 その生き物を魔法で殺したことが、各地に広まった。魔法の溢れるこの世界でも、殺傷性のある魔法を放てる人間はごく僅かであるからだ。


 私は軍に目をつけられてしまった。研究所から移転させられ、そこから戦略的魔法研究の最先端の研究所に移動させられた。


 私は魔法の研究ができるならそれでもいいかと、すこし開き直った。


 しかしそこでは動物実験、解剖、中には人体実験すらすることがあった。


 流石に嫌気がさしてきたが、しかし私の研究はやればやるほど評判となり、私は皇帝から銀杯をもらうことになった。それとサーの称号すらもらうこととなる。


 サーの称号は騎士以外では初めてらしく、ましてはただの研究者に送られるなど、異例中の異例であった。


 だからそれを気に病んだ貴族たちは、私に魔王討伐の一員に入れることを決定した。選択肢はなかった。


 私はそれを断れば研究ができなくなる。それに銀杯をもらったことで妬み僻みが多かったので、かえって人里離れるのも悪くはなかった。


 私はその討伐隊のリーダーに出会った。その男は「カエサル」と言って、私は元の世界のカエサルも、こんな風に快活であろうと思うほど、彼は爽やかで実に気の良い青年であった。


 「トマスさんの報告書は見ましたよ。あの一角獣を殺したんですってね。それも一発の魔法で。それ以来、ずっとあなたに会ってみたかったんですよ。」


 「はぁ、そうですが。」


 「まぁ、長い旅ですから、これから仲良くしましょう。」


 こうして、彼らとの冒険が始まった。


 私はその冒険中も研究を続けた。そしてわかったのはこの世界の現地調査は実に面白く、やりがいがあるということだ。


 トマスの国では気候の問題で植物の多様性がなかった。動物も人里にいるとある程度固定された種しか出会うことはない。


 しかしこの魔界と呼ばれる場所には、多種多様な生物や植物が群生しており、中には見たことのない魔法因子すら存在した。


 DNAと魔力の関係はある程度認められていたが、しかしそれでもDNAの突然変異がこの魔界では極めて急速に行われているらしく、


 それはこの魔界が魔力場によって発生している目に見えない魔法現象が関係しているらしい。


 私は、とにかくそんな魔界で、研究を続けた。カエサルはそれを見て面白そうにしている。


 カエサルはよく私に魔法についての説明を求める。しかし基礎知識から教えないといけないので、私は少し面倒になる。


 それでもカエサルは何回でも、何の研究をしているのかと聞いてくる。それは鬱陶しくもあり、少し新鮮でもあった。


 私たちは、駐屯地へと辿り着いた。魔王討伐の第三基地である。

読んでいただいて本当にありがとうございました。


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