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大好きで大事な君を。

作者: 久尾涼
掲載日:2026/07/07



私は、自分のずる賢さが嫌いだ。

そのくせ可笑しな位、頑固で臆病だ。


自分の汚いところを見せたくなくて、全部隠したい。

それでも、自分を知っていてほしい。

我が儘な子供みたいな大人。


良いところを自分では見つけられない。

そんな人間だと思っている。


何もない私の手を控えめに引っ張る君。

大事な物から逃げ出したい私を弱々しいのに離さない。

「だいすき」


そう言う君は、綺麗で眩しくて、少し怖い。

どんどん大切な存在になる君が愛おしくて、逃げたくなる。

それでも、君は控えめに私の手を握っている。


私は、笑おうとする。

汚い部分が見えないように、笑っていたい。

自意識過剰なくらいに怯えて"自分"を隠そうとする。



最早、そう言う生態みたいに。



****


「ちーちゃん、好きー、大好き!」

笑って言う自分は、今日もずる賢い。

そうやって言えばきっと君はこう返してくれる。


「僕も好きだよ」


その言葉がどれだけ嬉しいか分かっているんだろうか?

どこまで許してくれる?どこまでなら嫌わない?

今日も私は手探りで君の心の幅を試している。


1度だけ、嫌われるんじゃないかと思いながら我が儘を言った。

たまたま調べた記事と咳き込む君を見て。

「病院いってー」


多分お金もかかるし、検査するなら時間もかかる。

内心で酷く怯えて言った。


病気は怖い。

急に居なくなってしまう。

こないだ、電話したばかりなのに。

やっと退院するって言って笑っていたはずなのに。

あの人は、痩せて灰になっちゃった。


会いに行けば良かったのに。

そんなに急に居なくなってしまうなんて思っていなかった。



そうなるんじゃないか、って怖くなった。

拒絶が怖くて強ばっていた私に、君が言った。


「そうしてみるね」

笑った君に私がどれだけ安堵したことか。


君に色んな糸が絡まっているのは察している。

多分、自分じゃぁどうにも出来ないやつ。


「えっへっへ、ちーちゃん好き」

いきなり抱き付く私に、君は嬉しそうにしてくれる。

少しでも笑ってくれるなら私も嬉しい。



****


「ちーちゃん、金糸梅(きんしばい)って知ってるー?」

唐突な質問に君が笑いながら答える。


「知ってるよ」


なんと、知っていたか。

あまり知られていない花の名前。


「あれ、好きなんだよねー」

だからどうと言うわけでもないんだけど。

何となく言いたくなった。


梅雨の時期に咲く黄色い花。

雨ばかりの時期に咲いて、いつの間にか散ってしまう。

仕事に行くときに見かけるその花が私は好きだった。


なんとなく花言葉を調べて、嬉しくなった。

君みたいだったから。


「きらめき」「太陽の輝き」「秘密」「悲しみを止める」



パソコンのキーボードを叩きながら、「そっかぁ」と気の抜けたような返事をする君を見つめる。

やっぱり好きだなぁ、そう思いながらにやける私を君が横目で見た。


「僕も好きだよ」


自意識過剰なくらいに怯える私は、多分変われない。

どんどん大切な存在になる君が愛おしくて、逃げたくなる。


それでも、今ここで耳を赤くしている君は。


私の金糸梅みたいな人で。

大好きで大事な人なのも、変わらないんだろう。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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