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《Regal Apex:白い閃光の継承》  作者: ミストマン


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第2章 :ARC-01

朝の光がガレージのコンクリートに反射し、ARC-01のボディを淡く照らしていた。ユウはヘルメットを外し、汗を拭いながらマシンの前に立つ。昨年の敗北から数か月、チームアークレイは息を吹き返すために必死だった。父でありチーム代表のロイ アークレイ、彼も忙しいそうにチームの指揮を取り続けている。


リンカが手元のタブレットを見ながら、ユウに声をかけた。「ユウ、今日の調整はファントムフォームの同期率を上げることが最優先よ。昨年の最終戦のように、リアルとDLの切り替えが一瞬でも遅れると、勝機を逃すわ」


ユウは頷く。「わかってる。まだマシンを理解しきれていない、完全に一体化出来ていない感じなんだ」


リンカは微笑む。「ええ、だからこそ私たちががここにいる。でも最終的には、あなたの直感が頼りなの」


ガレージ内にはARC-01の細部が並ぶ。各種センサー、AFS用の風洞実験装置、ファントムフォームとリンクする脳同期ユニット。リンカはそれぞれのパーツを説明しながら、微調整の手順をユウに示す。


「この部分を調整すると、AFS発動時のマシンの挙動が滑らかになる。現実コースでの回頭性も上がるわ」

ユウはボンネット越しにマシンを覗き込み、触れる指先で微細な振動を確かめる。「なるほど…ここか、風圧の変化がここに集中するんだな」


一方、アリアは遠隔からDLデータを解析している。「ユウ、ファントムフォームの同期率が少し低い。頭の動きとマシンの反応にわずかなズレがあるわ。ここを最適化すれば、次のハイブリッドレースで数秒は稼げる」


ユウは深呼吸をして、マシンのコクピットに座る。ペダルに足を置き、ステアリングに手を添える。マシンへリンクすると、体内に独特の圧力感が生まれ、現実のコースの感触とDLの光景が同時に流れ込む。


「よし…感覚を確かめる。直感だね」


ユウは軽くアクセルを踏み、ARC-01を走行させる。マシンはリアルの路面を滑るように進み、瞬時にDL空間へのリンクを開始する。光の帯が現れ、街並みが仮想のトラックとして浮かび上がる。体全体でファントムフォームの感覚を受け止める。


「いいわ、その反応速度なら本番でも十分。あとはAFSのタイミングを最適化すれば…」リンカが微笑みながら言う。

ユウは軽く笑った。「俺の直感で調整する部分も残しておきたい。やっぱり最後は、自分の感覚で決めたいんだ」


アリアも淡々とデータを解析しながら言葉を添える。「直感とデータの融合ね。ユウ、あなたの脳の同期速度は想像以上に優れてる。ファントムフォームのポテンシャルを引き出せるわ」


ユウは深く息を吐き、ステアリングを握る。これから始まるシーズン、20戦の長丁場。現実とDLを行き来する過酷なハイブリッドレースに挑む覚悟を胸に刻む。


父はガレージの隅で静かに見守る。直接的に指示を出すことは少ないが、視線だけでユウに安心と期待を伝える。ユウは微かに頷き、父の存在を胸に感じながら、ARC-01の最終調整に集中した。


早朝のサーキットは、まだ冷たい空気に包まれていた。ガレージからマシンがゆっくりと姿を現す。ARC-01のボディは光を反射し、まだ未完成ながらも可能性を秘めたフォルムを見せていた。ユウはヘルメットを手に取り、コクピットに腰を下ろす。今日は合同テスト。各チームが集まり、シーズンに向けた最終調整を行う日だ。


「ユウ、集中して。今日はマシンの挙動を確認するだけじゃない。リアルとDLの両方で限界を試すのよ」

リンカが肩越しに声をかける。手元のタブレットにはAFSのデータとファントムフォームの同期情報が表示されていた。


「分かってる。今日で仕上げるよ」

ユウはそう答え、ステアリングを握る。心の中で、昨年の敗北とカイザの王者ぶりが脳裏をよぎる。今日のテストで、来シーズンへの手応えを得たい――それだけだった。


コースに出ると、リアルな路面の摩擦感と風圧が肌を打つ。周囲では他チームのマシンがエンジン音を響かせ、試走を繰り返す。ARC-01はまだ時折不安定な挙動をみせるも、ユウの反応速度で滑らかにコーナーを抜ける。


「よし、まずリアルでの感触は合格。次はDLに切り替える」

ユウはスイッチを操作し、ファントムフォームを起動する。瞬間、コクピット内の視界が光に染まり、街並みやコース標示が仮想空間として再構築される。リアルとDLがシームレスに重なり、身体感覚はさらに研ぎ澄まされる。


「AFSを微調整…この瞬間、タイヤのグリップ感覚と風圧の変化を意識して」

リンカの声がコクピット内に響く。ユウはステアリングをわずかに操作し、マシンの動きと加速の反応を確認する。光の帯の上で、タイヤが滑る感触も、リアルな路面の抵抗も同時に伝わる。


その時、コース脇から低く響く声が聞こえた。オーウェン・ライナスだ。現役最後のシーズンを戦うベテランは、ユウの動きを静かに見守っていた。


「ユウ、まだ自分の限界の一歩手前で走ろうとしているな」

ユウは一瞬驚くが、すぐに理解した。オーウェンはデータや理論ではなく、直感と経験でマシンを見抜く男だ。


「限界を知ることが、直感を磨く唯一の方法だ。AFSもファントムフォームも、最後に頼れるのは自分の感覚だ」

オーウェンはそう言い、コース上で軽くマシンを操作して見せた。滑らかなライン取りと荒々しくも爆発的な加速。ユウはその動きを見て、自分の動きと重ね合わせる。


「なるほど…直感か」

ユウは頷き、コクピット内で思考と直感を整理する。AFSを発動した瞬間の風圧の変化、ファントムフォームへの切り替わり、タイヤと路面の微細な接触。すべてがつながる瞬間を、自分の身体で理解する。


テストは数時間に及び、ARC-01は着実に性能を上げていく。リンカとアリアはデータを解析しながら、ユウの操作に微調整を加える。父もコースサイドで静かに見守り、時折頷いては手を振る。チーム全員が、ユウの成長とマシンの進化を見届けていた。


夕方、合同テストは終了し、各チームがガレージに戻る。ユウはヘルメットを外し、深く息を吐く。全身が疲労で熱を帯び、しかし心は高揚していた。


「オーウェンさん…ありがとうございます。やっと、ファントムフォームを自分の感覚に近づけられた気がします」

ユウは礼を言う。オーウェンは軽く笑い、肩を叩いた。


「その調子だ。お前の直感が進化すれば、次のハイブリッドレースで本当に勝負できる。覚えておけ、データは補助に過ぎない。最後に決めるのはお前自身の感覚だ」


ユウは頷き、ARC-01のステアリングに手を置く。これから始まるシーズン、現実とDLを行き来する過酷なグランプリに挑む覚悟を、改めて胸に刻んだ。



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