第41話 我慢なんてできるわけがないだろう? 【♡有】
その後、飛行機に乗り、予定どおりにホテルにチェックインすることが出来た俺達だったが、正直俺は限界だった。
まるで子供のようにハイテンションで窓を外を眺める彼女。しかも手を握ったまま肩にもたれてきたり、甘い言葉を囁いたり——……。
もう、手を出さないってキツい。
何度抱き締めたい衝動に襲われたことか……!
これが家だったら、遠慮なくベッドに押し倒していた。
耐えた、俺は耐えた……!
だから、もう、押し倒してもいいだろ?
当初は出張らしく、ビジネスホテルのシングルを取っていた。
だが、澄恋が同行すると分かった瞬間、俺は迷わず予約をキャンセルした。
せっかく一緒に行くんだ。安宿なんかで済ませられるか。急遽、俺は駅近で一番評判の良いシティホテルを押さえた。
フロントの天井は高く、吹き抜けのロビーにはシャンデリアが煌めいている。柔らかなピアノのBGM、制服のスタッフの立ち居振る舞い——。場違いなほど豪華な空間に、澄恋が目を丸くしている。
「わぁ……すごい。ここ、本当に今日泊まるホテル?」
お上りさんみたいにきょろきょろして、俺の腕に軽く触れる仕草が可愛い。正直、もう抱きしめたくて堪らなかった。
「うん。たまにはいいだろ? どうせ出張経費にはならないし」
「えっ……じゃあ、これ自腹で……?」
「当たり前だろ? 澄恋と一緒なら安いもんだ」
そう言った瞬間、フロントのスタッフが微笑んだ。完全に惚気を聞かれた。恥ずかしい。
受付を終えると、若いベルガールが案内してくれた。磨かれた廊下を歩くたび、足音が静かに響く。
重厚な扉を開けると、そこには落ち着いたベージュの内装と広々としたベッド。ガラス張りのバスルーム、夜景の見える大きな窓。
「わ……すごい。まるでドラマのセットみたい」
澄恋がスーツケースを置いて、カーテンの隙間から外を覗く。夜の街が遠くに光っている。
その横顔が、ホテルの明かりに照らされて柔らかく輝いていた。
あぁ……やっぱり、俺はこいつに勝てない。
「なぁ澄恋……」
「ん?」
振り返った瞬間、その無防備な笑顔に理性が吹っ飛びそうになった。
無理無理無理無理——……!
こんなの耐えられるわけがないだろう?
ガラス張りのバスルームの前で微笑む澄恋なんて、誘っているとしか思えない。
俺はネクタイを緩めて、そのまま背後から抱き締めて、徐ろにキスを重ねた。顎のラインに手を添えて、舌を吸い出すように絡め合った。
「ま、待って……! 蓮、その」
「何? 風呂? シャワーを先に浴びたいって? なら俺が洗ってやるから、一緒に入ろう。もう限界なんだって……」
彼女の服を脱がせると黒のベビードールが姿を見せた。俺は喉を鳴らしながら胸を抱き寄せて、谷間を堪能する。
あぁ、ここに顔を埋めて、エッチしてぇー。
「お、お風呂も沸いてるし、早く入ろ? ね? せっかくこんな広いお風呂なのに、入らないともったいないよ?」
「——いや、風呂はエッチの後でもいいんだけど。俺は早くヤりたい。澄恋と繋がって、トロトロのキュンキュンに締め付けられたい」
「れ、蓮はストレート過ぎるよ……!」
そんなことを言いながら、期待しているような眼差しが俺のSっ気を刺激する。頰から耳たぶ、頸筋に舌を動かして、そのまま鎖骨のあたりを甘噛みした。
「ん、痛ィ……っ、」
って、言いながらも俺の首に腕を回して、正面から抱き合うように身体を寄せて、確信犯だ。
俺も服を脱ぎ捨てて、そのままバスルームの扉を閉めて、二人だけの世界へと閉じこもった。
湯気が立ちこめるバスルームの中、曇りガラス越しに見える夜景が揺れている。
照明を落とした湯面に、橙色の光が滲んだ。
澄恋の背中を支えながら、俺は静かに湯をすくって肩にかけた。最初は少し緊張した面持ちだった彼女も、少しずつ力を抜いていく。
湯気の中、肩に寄りかかってくる感触がたまらなく愛おしい。
「……明日、大変なんだよね」
「まぁ、ちょっとだけな。でも、澄恋がいるから百人力だよ」
俺の言葉に、彼女は小さく笑った。
湯面に反射したその笑顔が、どんな夜景よりも綺麗に見えた。
「ねぇ、蓮」
「ん?」
「こうして一緒に出張って、ちょっと夢みたいだね」
「俺もそう思ってる。……仕事って言いながら、デート気分だもんな」
頬を寄せ合うと、湯の温度よりもずっと熱い鼓動が伝わってくる。
もう我慢できないと思った瞬間——澄恋が俺の手を取って、胸の上に重ねた。
「……これで少しだけ、力抜ける?」
「いや、逆に我慢できなくなる」
二人で小さく笑って、また唇が触れ合った。




