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可哀想なクール社長令嬢、俺にだけデレる顔がものすごく可愛い——ただ、君の思う100倍は愛が重いですが、大丈夫ですか?  作者: 仲村アオ


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第28話 誰にも言えなかった黒い話

 ベッドの上で、無防備な寝顔をさらして眠る澄恋の髪を撫でながら、彼女のことを考えていた。

 大手企業の社長令嬢として育ちながら、極端なほど自分に自信がないまま生きてきた澄恋。歪んだ世界の中で、弱音も吐けずにずっと耐えてきたのだろう。


 姉、真由の性格を考えると、正直俺まで頭が痛くなる。かく云う俺にもどうしようもない実兄がいるから、他人事ではないのだが。


 まあ幸い、俺の場合は両親が兄と縁を切って疎遠になっているので、滅多に顔を合わせることはない。


 ただ、俺が澄恋と結婚するとなると——アイツ()とも面倒なことになりそうな気がする。

 俺は冷蔵庫からビールを取り出して、一気に流し込んだ。カラカラの喉に沁み渡る。美味い……。



「ん……っ、あ、蓮。起きてたの?」


 眠たそうな目を擦りながら身体を起こす彼女に視線を送りながら、細く笑った。


「悪ィ、起こした?」


「ううん……私も喉が渇いたなって思って」


 追加でミネラルウォーターを取り出し、ベッドに向かって軽く投げた。

乱れた髪、蕩けた表情、そして露わになった柔らかな胸元——全部が目の保養だった。



「今度は痛くなかった? 身体、怠いとかない?」


「——うん、大丈夫。でも、何か……まだ蓮が中にいるみたいな、そんな感覚はあるかも」


「何だそれ。初めて言われた。羨ましいなー、俺も澄恋の中に入ってる感覚が、ずっと続けばいいのに」



 茶化すように笑いながら彼女の隣に座って、そのまま額にキスを落とす。身体が交わる度に、愛しさが増すし、執着も大きくなる。


 そして、俺が思っているくらい、彼女も俺を欲してくれればいいのにって願ってしまう。



「また澄恋の中に入りたくなった。挿れてもいい?」


「え、さっきシたばかりなのに……?」


「何度シても足りないから、仕方ない」



 俺は戸惑っている彼女を抱き寄せて、そのまま跨がせた。最初の熱が少し落ち着いてしまったせいか、濡れぼそった感じが足りない気がする。


「澄恋、ベェって舌を出して」


「ん、こう……?」



 舌先が触れ合い、ゆっくりと動かして。息を吸うたびに相手の体温が胸の奥まで入り込み、離れようとしても、もう離れられなかった。


 互いの呼吸が重なって、どちらの鼓動がどちらのものか分からなくなる。

 そのわずかな隙間に、甘く切ない熱が流れ込んだ。



「……澄恋がさ、姉の真由さんのことで感じている苦悩、俺も分かる気がするんだ」


「——え?」


「俺にも、少し歳の離れた兄貴がいんだけど、女は取っ替え引っ替え。人の彼女だろうが、人妻だろうか、関係なしに寝取るような男でさ。俺の親も見兼ねて絶縁したほどなんだ。だから俺は兄貴の分まで厳しく育てられて……。本当に嫌になる青春時代だったよ」



 今まで誰にも話したことがなかった弱音。

 けれど、同じように悩んでいる澄恋になら、吐き出してもいいんじゃないかって思えたんだ。


 いや、違う。家族になるからこそ、話しておかないといけないことだと思う。



「兄貴はさ、兄として俺にだけは負けたくなかったんだろうな。けど一回だけ、兄貴のセフレが俺に声をかけてきて——浮気とまではいかないけど、少し遊びに行ったり、キスをしたことがあって……」


「蓮は、その人のことを好きだったの?」



 震える声で尋ねる彼女の頰に手を添えて、首を横に振った。


「いや、好きって気持ちはなかった。けど、兄貴に一泡吹かせたような気分になれて、少し気持ち良かったかな? でもな、それがいけなくてさ。ある日を堺にその人と連絡は取れなくなったし、兄貴にはボコボコに殴られて全治一ヶ月の大怪我。肋骨にヒビが入って、散々な目に遭ったよ」



 確かに兄貴の女に手を出した俺が悪いけど、女から誘ってきた上にセフレだ。理不尽にも程があると思った。



「けど、俺の償いはそれで終わりじゃなかったんだよ。俺に彼女が出来る度に兄貴に寝取られていたし、未だに慰謝料払えって金をせびってくる。流石に金さえ払っていれば何も言わなくなってきたから、昔に比べれば大人しくなってきた方なんだけど……それでも悩みの種ではあるな」



 俺は目を潤ませて唇を噛み締めている澄恋を抱き締めて、大きく息を吐いた。



「澄恋のことだけは俺が絶対に守るから。澄恋も……俺の傍からいなくならないで」



 今までの彼女は……好きだったかと聞かれたら、どちらかと言うと性欲を満たすための存在で、お互いに執着のない関係だった。

 だから兄貴に奪われても、どこか割り切ることができた。


 だけど、澄恋だけは、きっと無理。

 彼女がいなくなったら、もう俺は生きていけないだろうなと自分でも分かる。



「俺は澄恋を守る為に、もっと高みを目指すし、力もつける。だから澄恋も、俺のことを信じてくれたら嬉しいな」


「知らなかった……蓮に、そんな事情があったなんて」


「まあ、誰にも言わなかったし、うちの両親も必死に隠してる事実だからな。もしかしたら本当に澄恋の幸せを願うなら、俺と関わらない方がいいのかもしれないけど——もう無理だ。俺は澄恋のいない生活なんて考えられない。だから全力で守るって誓うよ」


 決意を口にした途端、自分の中で確信が大きくなった。



「……ありがとう。全部、話してくれて」


 互いの背中に腕を回して、キツくギュッと抱き締め合って、二人の心音を重ね合って愛しみあった。

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