第24話 電話越しの声って、エロく聞こえるのは俺だけだろうか?
澄恋をタクシーに乗せた後、俺は一人寂しく夜の街を徘徊していた。
せっかく念願のエッチも出来たというのに、余韻に浸ることもできないまま帰らせる羽目になるとは思ってもいなかった。
「あー、もう! なんでこのタイミングなんだよ!」
こんな夜は飲まずにいられないと思ったが、澄恋が隣にいなければ何も楽しめない。俺は渋々とタクシーを拾って、自宅へと戻った。
家に帰って、シャワーを浴びた後、澄恋に家での様子を聞こうとスマホを手にした。
フォルダーには数枚の写真。
ぎこちない笑顔で写った彼女を見て、ふと笑みが溢れた。
お見合いをする前は、まさかこんなに好きになるとは思ってもいなかった。
可愛くて、素直で、何よりも相性がいい。何度しても嫌な顔もせずに受け入れてもらえたのは幸せな想定外だった。
あんな細い身体で、必死にシーツを握り締めて悶える姿はこの上なく官能的だったし、俺も支配欲を刺激された。
澄恋は気づいていないけれど、あの手の女子を好む男は少なくない。しかも澄恋の場合は親御さんが積極的にお見合いを受けさせていたのだ。場合によっては俺よりも条件のいい家督と縁談を進める可能性も否定はできない。
「今までは愛想のなかった見た目で回避できていたけれど、これからはそうはいかないかもしれないからな」
一先ず自分の婚約者だと言うことをアピールする為に、俺は両親から出席するように言われていたパーティーの案内状を数枚拝見した。
前までは乗り気じゃなかったが、澄恋と関係を続けていく上で避けては通れない道だろう。
「来週か……澄恋に予定を聞いてみるかな?」
早速、俺はベッドに寝転びながら彼女に電話をした。
『もしもし、蓮? どうしたの?』
澄恋の声だ。
いつものように控え目で相手の顔色を見ているようなオドオドした声が聞こえてきた。
「数日ぶりの家はどう? ご家族の人達は大丈夫だった?」
俺の言葉に少し間を置いてから、彼女を口を開いた。
『……真由お姉さんを説得したって話していたけど、あまり反省してなかった。まだ蓮のことを諦めていない様子だったよ』
げ、マジかよ。それは困るな……。
とはいえ、俺にできることは澄恋を守ることだけだろう。
「大丈夫だよ。俺は澄恋以外の女性と付き合うつもりは毛頭ないから。ってことで、澄恋に一つお願いだったんだけど、今度、衛生協会の青年部の集まりがあるんだ。よかったら澄恋も一緒に参加をしてくれないかな?」
『え、私が?』
思ってもいなかった言葉に澄恋は、相変わらずオドオドしながら戸惑っていた。
『そのパーティーって、私……蓮のパートナーとして参加するってことだよね?』
「それ以外ないだろう? え、俺の部下として参加するのも無理があるだろう? 俺は澄恋のことをきちんと婚約者として扱うつもりだけど?」
『こ、婚約者……!』
顔を真っ赤にして恥ずかしがる様子が、鮮明に目に浮かぶ。
『ちなみにいつかな? 予定がなければ……』
「え、マジ? ちなみに来週なんだけど、本当にいいのか?」
『うん、嬉しいもん。ちゃんと私のことを紹介してくれるって』
こうして俺達は、会社関連の人達に自分達の関係を公にすることを決めたのだった。
「——っていうか、今、澄恋は部屋? 回りに誰かいる?」
『ううん、自室だから大丈夫だけど、どうしたの?』
「いや、ほら……今日、澄恋に無理させたかなーって思って。大丈夫だったか?」
話題がいきなり下になり、澄恋の言葉がどもり出した。
『大丈夫……だよ。ちょっと歩く時に痛いけど、思ったほどじゃないし。私よりも蓮も大丈夫? 最後、デキないまま終わっちゃったけど』
「え、大丈夫じゃないって言ったら、会いにきてくれるん?」
『え? えぇ……っ!? そ、それは難しいけど……!』
「それは残念。でも、早く会いたいな。俺、仕事終わりに澄恋に会いに行ってもいい?」
『は、恥ずかしいけど、それで蓮が元気になるなら……』
冗談のつもりだったけど、素直にききいれてくれる澄恋が可愛くて仕方ない。
俺は通話を切った後、しばらくベッドの上で悶絶していた。
「ヤベェ、俺の彼女可愛すぎだろ! やっぱ女の子は素直が一番だな」
ツンデレも悪くないし、自分の意思がある子も嫌いじゃないし、むしろ尊敬する。だが、自分のことを理解してくれた上で甘やかしてくれる子って、それだけで無限愛情注ぎたくなる。
「一生大事にしよ……」
ひとまず俺は、澄恋の可愛い声を忘れないうちにベッドに潜り込んだ。




