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可哀想なクール社長令嬢、俺にだけデレる顔がものすごく可愛い——ただ、君の思う100倍は愛が重いですが、大丈夫ですか?  作者: 仲村アオ


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第20話 コスプレ大好き、凛ちゃん

「澄恋ちゃん、すごく可愛い! 肌も綺麗だし、モデルみたい! えぇー、こんな可愛い子が音無くんの彼女だなんて信じられないんだけど」


 普段は気怠そうな表情をしているダウナー系美少女の凛が、マシンガンの勢いで澄恋のことを褒め称えている。あまりの勢いに俺と澄恋だけでなく、恋人の湊人も引き気味だった。



「あ、あの、私……!」


「まるで小動物のように怯える表情も素敵。ねぇ、澄恋ちゃん。音無くんなんてやめて、私の彼女にならない?」


「おい、なんでだよ! 凛、お前は湊人さんの彼女だろうが!」


 あまりにも突拍子もない発言を突っ込まずにいられなかった。しかも言った本人は悪びれた様子もなく、キョトンとしているからタチが悪かった。



「あはは、ごめんねー。うん、澄恋ちゃんが可愛すぎて、思わずテンションが上がってしまって……。でも、ちょっと意外だったかも。だって今までの音無くんの彼女と違いすぎじゃない?」



 ハッとした凛は自分の失言に気付き、慌てて口を塞いだ。言いたいことはわかるが、澄恋が不安になるような発言は控えてほしかったなと苦笑を浮かべた。



「凛さんがおっしゃる意味はよく分かります。実際、蓮さんの今まで付き合ってきた方は綺麗で華やかな人ばかりだったので、私なんかが付き合えたのが未だに夢のようで」


「え、そんなことないよ! 澄恋ちゃん、自分のポテンシャル分かってない! こんな可愛い子、私未だかつて出会ったことないからね! さっきの彼女は嘘だけど、写真のモデルとして撮影させてもらいたいくらいだし!」


「写真……? モデル?」


 俺に助けを求めるように視線を向けてきた澄恋に説明をした。凛は根っからのオタク気質で、友達と一緒にコスプレをしたり撮影会をしたりしているのだ。


 かつては俺も湊人さんと一緒に色々な写真を撮らされた過去がある。これだけは絶対に澄恋には知られたくない黒歴史である。



「っていうか、本当に撮らせてもらえないかな? 何なら音無くんと一緒に! お嬢様と執事でクラシックな写真とか!! ねぇねぇ、音無くんもいいでしょ?」


「おいおい、凛。お前さぁー、初対面の子に言うセリフじゃねぇだろ? しかもお前の写真はエロいのばっかだし」


「いいでしょ? 音無くんだって私の写真、綺麗だって褒めてくれたじゃん。ねぇ、澄恋ちゃんって漫画読んだりする?」



 凛の圧倒的な威圧感に終始怯える澄恋。あ、これ、限界突破するやつだ。

 見かねた湊人さんが、すかさず間に入って凛を宥めてくれた。その様子に俺も少しだけ安堵を覚える。


「せっかく音無達からお菓子をいただいたことだし、お茶でも淹れようか? 澄恋さんはコーヒーと紅茶、どっちが好き?」


「あ、紅茶をいただいてもいいですか?」


「もちろんだよ。音無も同じで良かった?」


「ありがとうございます。すいません、急に押しかけたのに」


「気を使うなって。凛、お前も手伝ってくれるよな?」



 途中で遮られて拗ねた凛は、唇を尖らせていたが、渋々と湊人さんの後を追いかけていった。



 ……相変わらずスマートでカッコ良すぎる対応に惚れ惚れとしてしまう。俺もあんな男になりたい。


「湊人さん、とても素敵ですね」


 ボソッと呟いた言葉に、俺は血の気が引いた。

 男の俺ですら惚れた男。しかもダウナー系で人に興味を持たなかった凛を手懐けた実績もある、正真正銘のいい男だ。



(ヤバい。俺が澄恋なら、間違いなく湊人さんに惚れる。俺みたいな変態よりも、優しくて気が使える男を選ぶよな……!)


 もしかして俺は、とんでもないミスをしでかしたのではないだろうか?



「……蓮? どうしました?」


「いや、俺……もしかして振られるんじゃねぇかなって思って」


「え? 何で?」



 何でって——そんなの決まっている。

 自分よりも圧倒的に魅力的な男を目の当たりにして、平然としていられるほど人間ができていない。


 現に澄恋も、湊人さんを素敵だと口にしていたのだ。悔しいけれど、彼が相手なら仕方ない。


 だけど彼女は真っ直ぐに俺の顔を見て、不思議そうに首を傾げていた。


「大丈夫ですよ」


「大丈夫って……何が?」


「私が振られることがあっても、私が蓮を嫌いになる理由なんてないです。だって、ずっと蓮だけを見てきたんだもん。今更、嫌いになんてなれない」



 心臓が、鷲掴みされたみたいに痛い!


 俺って奴は、こんなに健気に一途に思っている子を疑って……! 本当になんて失礼な奴なんだ!

 切腹じゃ足りないくらい大馬鹿野郎すぎて、自己嫌悪に陥ってしまう。



 俺は澄恋の手を取って、しっかりと指を絡めていった。過去に何があったなんて関係ない。たとえどんな男が現れようと、彼女のことを真っ直ぐに大事にして愛し続けよう。



「なぁ、澄恋。俺って本当に救いようもない馬鹿で、変態で、くだらないことばかり考えているけど、それでもいいのか?」


 彼女はヘラっと笑みを溢して、柔らかく言葉を紡いだ。



「私を選んで、傍にいさせてくれただけで、私はとても幸せだから。私はこの幸せを手放したくないです」



 俺は目に浮かんだ涙を誤魔化すように顔を背けながら「一生、この子を大事にしよう」と固く心に誓った。


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