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可哀想なクール社長令嬢、俺にだけデレる顔がものすごく可愛い——ただ、君の思う100倍は愛が重いですが、大丈夫ですか?  作者: 仲村アオ


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第19話 今カノ、元カノ(修羅場は不可避?)

 澄恋のラボの用事を済ませた俺達は、ひとまず昼食を食べる流れで意見が一致した。


 俺は魚介ベースのラーメンが食べたいと思ったが、野郎しか並ばないような小さな店舗にお嬢様の澄恋が並ぶ姿が想像つかなかった。


(いや、めちゃくちゃ絶品なんだけど、澄恋がラーメンとか食うのかな?)


 俺の視線に首を傾げて、困ったような笑みを浮かべた。



「蓮は何が食べたいですか? 私、蓮が好きなお店でいいですよ?」


「んー、いや、この近くにめちゃくちゃ美味いラーメン屋があるんだけど、カウンターか小さいテーブルしかない店だからさ。大丈夫かなーって思って」


「ラーメンですか……! 私、食べたことがないから行きたいです!」



 わっ、やっぱないのか、食ったこと。

 放任主義の俺の家とは違って、箱入り扱いされているとは思っていたが、やはりかと確信を持った。


 ——つーか、いいのか?

 今まで食わせなかったのに、俺が食わせても。



「……本当はラボの人達は、仲間内で食べに行ったりしてたんですけど、私はいつも弁当を持って来ていたし、親しい人がいなかったので誘われなくて」


 いや、思ったよりも悲しい理由で食えてないだけだった!

 理由を語る澄恋の表情が切ない! 心なしか目尻に涙が滲んでいる気がする!


「んじゃ、行こう! 確かに女性一人じゃ、入れないよな! え、他には食べてみたい飯とかねぇの? 俺がどこでも連れて行ってやるよ?」


「え、それじゃ……今度はスポーツバーとか、ビアガーデンとか行ってみたいです! ビールが飲み放題なんですよね?」



 現役大学生なのに、飲み会にも行ったことがないのか……!


 確かに早瀬グループの令嬢なら、誘いづらいのも理解できる。その上に素っ気ない鉄仮面ビューティー。


 この子、自分で自分の首を絞めているところもあるだろうな。



「……澄恋は、友達が欲しくないわけじゃないんだよな?」


「え?」


 俺の質問に顔を引き攣らせる。もし意図的に人との交流を拒んでいるのなら無理には言わないが、作りたくても作れないのなら協力を惜しまない。


「前に話してた、俺の知り合いを紹介する話。澄恋さえ良かったら、飯食った後にでも紹介しようか? いとこの圭吾にも紹介したいしなー……」


「しょ、紹介って……! わ、私に? でも大丈夫かな? 蓮のご友人に失礼なことをしないか、すごく心配なんですけど」


「そんな構えなくてもいいって。良い奴だから、気楽な気分で会えばいいよ」



 俺は軽い気持ちで湊人達に連絡を取って、しばらくしてから遊びに行くと伝えた。

 アワワと焦る澄恋を連れて、ラーメン屋で食事をして。


 そしていざ、湊人達のマンションへと向かった。




「……本当に来たんだ、音無」


 ドアを開けた湊人は半分驚いた表情、半分は呆れた顔で出迎えてくれた。俺はニンマリと笑みを作って、手土産のシュークリームを渡した。



「いやいや、だって湊人さんには紹介するって約束したじゃないっスか? それにこの前、色々とお世話になったし」


 俺の後ろで控えめに待機をしていた澄恋が、恐る恐ると頭を下げた。



「は、早瀬澄恋です……! その、いつも彼がお世話になっていると伺いました。これからもよろしくお願いいたします!」


 この前よりは聞き取れる声のボリュームで、彼女なりに精一杯頑張った挨拶を披露した。



「あぁ、この前はどうも。三嶋(みしま)湊人(みなと)です。よろしく」


 人たらしな笑顔で手を差し伸べる湊人さん。

 くっ、この人のこういうところ、本当に変わらないなと歯痒さを覚えた。



 ——というか、すごい絵面だ。


 少し前まで好意を寄せていた叶わない片想いの相手と、めちゃくちゃ俺を溺愛してくれる彼女が握手をして。



(……そういや、澄恋って、俺のことどこまで知ってんだ? 長年俺に片想いをしていたとは聞いたけど、その間、《《俺が誰を好きだった》》かも知っているのだろうか?)


 俺のこめかみに冷えた汗が流れた。


 いや、それ以前に長年、俺に片想いをしてた彼女に俺のことを振った人を紹介するって、残酷なことをしているんじゃ?



(多分、俺が湊人さんに惹かれていたことはバレないだろう。そもそも俺の片想いだし。むしろ危惧するべきは——!)



「んじゃ、凛も紹介するよ。凛、音無と彼女さんが来てるぞ?」


「えー、音無くんの彼女?」



 それまで深く考えなかったが、澄恋が俺のことを好きになった五年前……それは俺が凛と出会って、付き合っていた時期に当たる。


 もしかしたら俺と凛の関係を、澄恋は知っているのでは?



「初めまして、朝霧(あさぎり)(りん)です。って、え! えぇ!?」


 澄恋を見た瞬間、あからさまに驚いて声を上げる凛。


 な、何だ?

 もしかして凛も澄恋のことを知っているのか!?



 一人アタフタしながらキョどっていると、凛は澄恋の手を両手で挟み込んでキラキラした眼差しで見つめてきた。


「可愛いー……! え、こんな可愛い子が音無くんの彼女? 信じられないんだけど!」


「え?」


「艶のある漆黒の髪! 真っ白な肌に切れ目の瞳! 極め付けは奥ゆかしい美しさ!! 可愛い……! 音無くん、写真撮っていい? ううん、撮る! 可愛い!!」



 ——ん? 何か、思っていた反応と違う。


「名前、何て言うの? え、音無くん! どこでこんな可愛い子と知り合ったの?」


「え? え??」



 こうして俺達は、奇妙な関係で繋がった友人を、無事に紹介することができたのであった。

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