第15話 数分のセックスよりも濃厚に 【♡♡有】
挿入だけがセックスじゃない——ってことは分かっているけれど、出来ることならヤりたいと思うのは自然の摂理だろう。
ご飯を作ってもらった代わりに食器を片付けていたのだが、意識はお風呂に入っている澄恋さんに持っていかれてしまう。
(俺のために買ってくれた下着を着て、これからエッチするんだよな……)
どんな下着を買ったんだろう。澄恋さんのイメージでは清楚系な白、もしくは水色だが、俺の好みに合わせたなら黒のレースか?
「いや、ここはいっそあざとい薄いピンクとか? フリルがたくさんなのに透け素材で隠れていないのとか……」
いやいやいや、期待値を上げてはいけない。ハードル上げて実際に萎えてしまったら申し訳ない。
どんな下着であれ、彼女が俺のために選んでくれた、それが一番だ。
「あの、音無さん……お風呂先にいただきました」
きた——!
俺は彼女の声と同時に振り返った。
ミント色のサテン生地のパジャマ……。
そうだよな、下着姿で部屋をうろつくわけがないか。
だが、それよりも破壊力のある澄恋さんの恥じらい。熱ったピンク色に染まった頰と濡れた髪が色っぽい。
「私、先に寝室にいます……! 音無さんもごゆっくり入ってきてください」
ゆっくりなんて、入れるわけがないだろう!
速攻で風呂を済ませた俺は、高鳴る胸を落ち着かせようと深呼吸を繰り返しながら寝室へと入った。
「わっ、音無さん。お風呂早かったですね! もう上がったんですか?」
「だってさ……無理だろ? 早く澄恋さんとイチャイチャしたくて堪んないし」
「イチャイチャって……! そんな言い方されたら、恥ずかしくて緊張するんですけど……」
案の定、顔を真っ赤にして縮こまった彼女が可愛くて、ギュッと抱きしめた。細くて柔くて、思ったよりも体温が高い。
直に触れた肌から伝わる熱。膝に感じる彼女の重み。全てが愛しくて澄恋の肩に顔を埋めた。
「お、音無さん……。あの、私」
「——ん、分かってる。初めてなんだろう? キスも、ハグも、全部俺が初めて」
困ったような顔でオロオロと。でも、嫌じゃないって、先に進みたい気持ちがあるのは、俺の背中に回された指から伝わってくる。
「好き……大好きです」
「俺も好きだよ。澄恋さんのこと、大事にしたい」
絡み合う視線。擦り合う肌。重なり合う唇——混じり合う、舌。
彼女の熱を帯びた声と一緒に気持ちが昂ぶる。
「可愛いよ、もっと力を抜いて」
服の上から胸元を撫でて、指先で輪郭をなぞる。フニフニと揉んでみたが、彼女は硬く瞑るだけでノーリアクション。むしろ気持ちを押し殺しているようにも見えた。
「……大丈夫? 痛くない?」
「い、痛いっていうよりも、恐くて……。何をしたらいいか分からなくて。変なことをしてしまうくらいなら、音無さんに任せた方がいいかなって思ったんですけど」
まぁー、セックスって男性主体なところはあるよな。その潔さは嫌いじゃないけど、せめて反応くらいは欲しい。
「そういえば、俺が好きそうな下着を買ったって言ってたけど、どんなのを買ったんだ? 見せてくれる?」
「え、や……っ、やっぱり私……!」
両手で胸を隠そうとするが、その仕草すら俺を煽る。
パジャマをギュッと掴む彼女の手に重ねるように手の平を置いて、ゆっくりと指を解いた。彼女の人差し指の腹を擦らせて擽らせる。
「ん……っ、くすぐったぃ……」
「澄恋さんの指って細い。肌も綺麗だし、ずっと触っていたいな」
指の付け根や手の平などを擦っていると、どんどんと甘くなり出した。潤んだ瞳が俺を見上げて、そのままチュッと短いキスが触れた。
「音無さん、焦らし過ぎ……恥ずかしいです」
「焦らすつもりはなかったんだけどな。んじゃ、見ていい?」
少し躊躇った後、小さく頷いた彼女を見て、俺は細く笑った。一つ、二つと外れていく。そして見えてきたのは黒のレースの下着。くっきり、でも柔らかそうな谷間と乳房。
「は、恥ずかしい……っ、そんなに、見ないで……!」
心臓がバグりそうだ。息が上手くできない。喉の奥が鳴って、理性が崩れた。
さらにボタンを外して、羽織っていたパジャマを脱がせた。想像していたよりもずっと綺麗な姿に、思わず見惚れてしまっていた。
「澄恋さん、綺麗。似合ってるよ」
「ヤダ、そんな……っ」
「可愛過ぎて我慢できない。エロ過ぎる。キスしていい?」
「き、キス……? って、ひゃあ!」
唇にされると思っていた澄恋さんは顎を上げて待っていたのだが、谷間に顔を埋められて驚いた声を上げた。
「ダメダメ、待って、そんなの!」
だが、そんな声を無視してホックを外した。いきなり解放されて無防備になった乳房、少しズラせば薄い桃色の蕾が見え隠れする。白い肌と黒いレース——興奮しない方がおかしい。
唇を噛み締めて、必死に羞恥心と戦う彼女を見て、少しだけ理性を取り戻す。髪を撫でるように抱き寄せて、こめかみに唇を押し当てる。
見られると思っていた彼女は、少し驚いた顔で俺を見てきたが、誤魔化すように笑って自分のシャツの裾を掴んだ。
「俺も脱ごうか? 澄恋さん、脱がして?」
「え? あ、はい……!」
ブラジャーの役割を果たしていない下着を下げながら、両腕をあげる俺のシャツを脱がせて。目が合った瞬間、互いに笑い合って。
きっとこれが幸せなんだろうな、思いながらキスをした。
触れ合う肌が増えていく。
でもまだ、夜は始まったばかりだ。




