閑話休題 千桐と冥蛇 -居酒屋会議-
登場人物
・ 冥蛇
西国にある組織「連合」の幹部 十二神将の一人、巳の神将 冥蛇。組織きっての暗殺者。目つきが鋭く愛想のかけらもないため冷酷無慈悲な人間と捉えられがち。喰虎とは同期だが、怖いので苦手。
・ 喰虎 千桐
「連合」の幹部 十二神将の一人、寅の神将 喰虎。組織の中で最も喧嘩が強い乱暴者。どんな相手にも基本的には粗暴な態度で短気なため組織で嫌われていると思われがちだが、キジトラをはじめ意外にも彼を慕うものは多い。冥蛇のことは当初から「感情がない」から嫌いらしい。
もうすぐ日付が変わりそうな飲み屋街。まだまだ賑やかで大勢の客の楽しそうな話し声があちらこちらから聞こえてくる。
雑踏に紛れ歩く彼の目に赤く光る看板が目に入る。焼き鳥が売りの居酒屋らしい。値段も手ごろだ。
普段の彼ならまず一人で入ったりしない。
――――――家に帰ってからごはん食べるのも、面倒だな……。
同居人の子供?のことりは今日、乱歩に預けている。一人分の食事を作るのはもちろん、コンビニで買ってから家で一人で食べるのも気分が乗らない。かといって先ほどまで一緒に帳簿を整理していた猿渡さんを誘えるほどコミュ力はないし、そもそも徹夜していた彼はまず寝るべきだろう。
時間的にもよく行くファミレスは営業終了しているし、ファストフード店までは少し歩く。
ついでに自分も疲れてる。偶には一人で酒を飲んでも罰は当たらないだろう。というか、いつも酒を飲むときは大体射掛さんや午がいてペースを崩してすぐ酔いつぶれるから、一人でのんびり飲みたい。
疲労と眠気で少し頭が回っていないのだろう、普段なら絶対に考え付かない結論に至った彼は店ののれんをくぐった。
「ご新規さん1名ご案内でーす!」
店内は金曜の夜だからだろうか、団体客も多く、通り以上の賑わいを見せている。カウンターもちょうど一席だけ空いていたようだ。
明るく元気な店員に案内された席の隣、そこには目を見開いてこちらを見る見知った顔があった。
「お、おまえ……なんで、こんなとこに来んだよ……。」
「あ……喰虎さん……お疲れ様、です……。」
1人で飲んでいたのであろう、既に数枚の皿とグラスが空になっている。そこそこ飲んでいるにも関わらず、喰虎は全く酔った様子には見えない。
「で、なんだ?冥蛇。本部からの呼び出しか?」
冥蛇が居酒屋に来るはずがない、そう思った喰虎は仕事――所属組織「連合」関連の用事で自分を探していたのだろうかと推測する。
「い、いえ。偶然、です。……たまたま飲みたいな、って思ったら……。」
そもそも冥蛇は席に案内されている。彼の言う通り、ただの「客」としてこの店に来たようだ。
「邪魔してしまって、すみません……。ご飯、食べたいだけなので……。」
冥蛇は出されたお品書きにさっと目を通すと、焼き鳥数種類とファジーネーブルを注文した。
「意外だな。」
「……何が、ですか?」
「こういうとこに来んの。しかも、甘いの飲むんだな、おまえ。」
「……俺を、なんだと思ってるんですか。」
「陰気臭い堅物野郎。」
心外だと言わんばかりに眉を顰める冥蛇。
ちょうどその時、店員がファジーネーブルのグラスを冥蛇の前に置いた。
「ん。」
喰虎が飲みかけのジョッキを冥蛇の方へ向ける。
嫌がられると思っていたが、どうやら一緒に飲んでくれるらしい。
「……乾杯。」
冥蛇が持ち上げたグラスとふれあい、軽く心地の良い音を鳴らした。
「おまえ、今日、非番だったろ?なんかあったのか?」
武闘派の連中は普段、仕事がないときは昼夜交代で本部の警備やみかじめ料を収める店への見回りをしている。冥蛇は昨夜、暗殺の仕事をしていたため今日は休みのはず。
「今日は月末なので、猿渡さんのお手伝いをしてました。」
申の神将 猿渡 駿介。彼は普段詐欺師をしており、同時に連合の経理係を一任されている。連合は裏社会の爪弾きものが集まるとはいえ、そこそこの規模であり、一人ですべてをこなすのは到底無理である。加えて、特に武闘派の連中や武器屋関連の人間は報告が適当だったり書類の提出が遅かったりと何かとスムーズに進まない。
冥蛇が猿渡の手伝いをするようになったのは、暗殺任務帰りに本部に寄ったときに深夜まで作業する猿渡を見かけたことだった。冥蛇自身、仕事で疲れていたし、パソコン作業や数字の計算は全く知らなかったが、それでも徹夜で頭を抱える猿渡を流石に見て見ぬ振りができなかったのだ。
「あぁ、そんな時期だったな。確かに、飲みたくもなるわ。」
「コンビニ行くのすら面倒ですし。……まさか、喰虎さんに出くわすとは思いませんでしたが。」
「俺だっておまえが来るだなんて、晴天の霹靂だ。そもそも、おまえが酒飲みだなんて知らなかったし。」
「まぁ……喰虎さんは会議後すぐに帰られるから知らないと思いますが、昔からよく射掛さんや午さんに誘われてたんです。」
「あー……だろうな。」
どうやら喰虎も心当たりがあるようで、少し渋い顔をする。
「最近までずっと断ってたんですよ。そもそも、日本では二十歳になるまでお酒、飲めないじゃないですか。」
冥蛇の言葉に少し引っ掛かりを感じる喰虎だが、冥蛇はそれに気づかず話を進める。
「それで断ってて、そのあともずっと気分が乗らないというか、なんか気まずくてずっと断ってたんですが、最近、飲んでみようかなって思って。それから少し飲むようになったんです。」
「ちょと待て、おまえ。今、いくつだ?」
「?今、24です。」
「24?嘘だろ、は?おまえ……あのときまだ16だったのか……?!」
素早く年齢を逆算して、一人驚きショックを受ける喰虎。
「あのとき、とは?」
「おまえがこっちに来た時だよ。まじかよ……。」
一方冥蛇はなぜ年齢を言っただけなのに驚かれるのか全く理解が追い付いていない。
「あの……何かおかしい、ですか……?」
「てっきりオレと同年代だと思ってた。」
「あれ……。違うんですか。」
「オレはアラサーだよ。」
「……大して変わらないじゃないですか。」
「全然ちげぇよ。」
首をかしげる冥蛇と、「こいつ、ガキだったのかよ。」とぼやく喰虎。
そこに店員が焼き鳥を運んできた。
「喰虎さんも食べます?」
「あ?おまえが頼んだんだろ。食いたきゃ自分で頼むわ。」
「……正直、こんなに量が多いとは思わなかったんです。」
確かに普通の店よりはボリューミーで、皿から溢れそうになっている。
「まぁオレも初めて来たときは驚いたが。でも、これくらい食えるだろ。」
「食べれなくはないですよ。……多分。」
焼き鳥を口に運びながら、自身なさげに答える。
「多分て……ってかおまえは体重軽すぎだ。飯、ちゃんと食え。」
「なんで俺の体重、知ってるんですか。」
なぜかちょっと不満げだ。
「この間、持ち上げたからだよ。」
「あー、そんなこともありましたね……。」
「自分から喧嘩吹っ掛けておいて、忘れてんじゃねぇよ。」
「いや、あれは喰虎さんが先じゃないですか。」
お酒を飲んでいつもよりも口が滑らかなのか、普段なら言い返さない言葉を口走る。
「はぁ?」
全く心当たりのない喰虎。対して当たり前化のように言葉を返す冥蛇。
「だって、『殴って気を晴らしたい』って。」
その言葉を聞いて喰虎は大きなため息を吐く。
「あのなぁ……言葉の綾だ。額面通りに受け取るなよ、馬鹿。」
「……分かるわけないじゃないですか。馬鹿って言わないでください。」
酒が入って少しは表情筋の緊張がほぐれたのか、いつもよりも気持ち表情豊かに不機嫌そうな顔をする。
「どう考えても馬鹿としか言いようがないだろ。おかしいと思ったんだよ、なんでおまえみたいなやつが喧嘩吹っ掛けてくんのかって。だったら逆に、何で今までは喧嘩しかけてこなかったんだよ。」
「まぁ、直近に仕事が入っていたので、それに影響がでては困るじゃないですか。なので、丁重にお断りしていたつもりです。」
「なーにが丁重だ。おまえ、オレ以外にも喧嘩吹っ掛けてんのか?」
「喰虎さん以外は誰も、喧嘩を仕掛けてこないですよ。」
「オレも訓練以外じゃ喧嘩は吹っ掛けねぇよ。」
喰虎はハイボールを、ついでに冥蛇はカシスオレンジを追加する。
「喰虎さんは全然酔ってないですね。お酒、強いんですか?」
「まぁな。ペースさえ崩さなきゃ、そうそう酔わないな。」
「だったら俺と代わってくださいよ。」
「何の話だ。」
「射掛さんと午さんとの飲みですよ。お二人と飲むのは楽しいですが、俺、すぐ酔いつぶれて寝ちゃうんですよ。」
「ははは……。」
喰虎が乾いた声で笑う。
「すっごいお酒進めてくるんですけど、俺、ビール、苦いから好きじゃないんです、アルコールにも弱くて、すぐ酔っちゃうし……。」
「あの二人はなかなかの酒豪だからな……。オレも一回だけ被害に遭ったことあるわ。」
「代わってくださいよ。」
「断る。だからいつも早く帰るんだよ。」
「う~……。今度、捕まえてやる……。」
グラス片手にそうぼやく冥蛇は普段よりも幼く、年相応に見える。
「この間完封されたおまえに、捕まるかっての。」
「捕まえるだけなら、俺の得意分野ですし。」
「ま、そのあとボコして終わりだけどな。」
「いっそ、射掛さんに協力してもらうか……。」
「そしたら被害者が二人になるだけだ。諦めろ。」
「じゃあ、乱歩さんに――」
「それだけは絶対やめろ、本気でボコす。」
乱歩の名前が出たとたん、本気の顔でくぎを刺す。
「そんなに嫌ですか。同期だって聞きましたが。」
「あのなぁ……同期云々の前に、あいつの相手は苦手なんだ。」
「そうですか?」
「あいつ、飄々としているくせに、痛いところばっか突いてくっから、やりづれぇんだよ。顔も見えねぇから何考えてっか分かんねぇし。」
「でも、喰虎さんなら殴れば一発じゃないですか。」
「その一発が当たる前に手を打たれんだよ。昔……それで酷い目に遭ったからな。」
「やっぱり他の人にも喧嘩売ってるじゃないですか。」
「それこそ乱歩の口車に乗せられたんだよ。……ま、それだけやり手だってことは、認めるけどな。」
冥蛇は机に突っ伏して喰虎を見上げる。まだ2杯目の半分も飲んでいないのに(しかも度数も低いのに)既に大分酔っているようだ。
「くいとらさん、どうしてそんなに、つよいんですか。」
ついでに呂律も怪しい。
「藪から棒になんだ。おまえだって十分、強いだろ。」
「だって、正面からじゃ、手も足もでない……。」
「そもそもおまえ、タイマンは苦手だろ。闇討ち専門が正面堂々やって対等に戦えてる時点で、よくやるわ。」
「ぜんぜん、対等じゃないです。普通に馬乗りで決められたじゃないですか。」
「抜けられるとは思ってなかったけどな。」
「十数発殴られるまで、隙すら無かったんですが。」
「普通はあれで沈むんだけどな。」
「そもそも、本気だったら武器、使ってるでしょ。」
「それを言ったらおまえ、そもそも正面から来ないだろ。」
「当たり前ですよ。狙撃します。」
「……潔いな。」
殺意全開な殺し屋の回答に若干引いた。
「う~。くいとらさん、どうしてそんなに、つよいんですか。」
「……おまえ、今までの話、聞いてたか?」
と、酔っ払いに言うだけ無駄である。
「おまえ、酒、弱いだろ。」
「くいとらさんは、力もお酒も強くて、うらやましい。」
「力は鍛えればどうにでもなるが、酒は基本的にはどうしようもねぇな。まぁ、飲み慣れれば多少はましになるが……おまえは無理そうだな。」
何をとち狂ったのか、机に伏して少し恍惚とした顔で喰虎を見上げる。普段の冥蛇からは到底拝むことはできないであろうその顔は、もともと端正な顔立ちと相まって、女が見ようものなら普段とのギャップで胸がときめくレベルである。
「そんな甘えたがりな顔は求めてねぇよ、馬鹿。」
もっとも、喰虎は男なので、何の意味もなかったが。
「くいとらさんの、いじわる。」
「ガキか。」
「いっつも俺に冷たい。キジトラやことりには、やさしいのに。」
「オレがあいつらに優しくしてるわけねぇだろ。」
「でも、なつかれてるじゃないですか。」
「ことりは趣味が合うからだ。キジトラは……ありゃ、頭がおかしい変態だ。」
自分の一番弟子にひどい言いようである。
「……ほんとはやさしいこと、知ってます。」
「あ゛?オレ、てめぇに優しくした覚えはねぇぞ?」
「このあいだ、手当、してくれたじゃないですか。」
「そりゃあ、あれは、ちっとばかし、羽目を外し過ぎたっつーか……やりすぎたから、責任取っただけだし……。」
「お見舞い、毎日、来てたでしょ?」
「見舞いって……おまえ、まさか、起きてたのか……?!」
喰虎が今までに見せたことないほど驚愕した顔をする。
数か月前、連合は大きな戦争をしていた。その佳境、冥蛇はシスター・モーとの戦闘で腹に大穴を空ける重体となり、数週間前まで入院していた。
「音は結構前から聞こえてたんです。いっつも俺に、早く起きろって、みんな心配してるって――」
「黙れ黙れっ!公開処刑する気かっ!」
恥ずかしさのあまりか、立ち上がって冥蛇の口をふさぐ。
「いいか、絶っっ対に、他の連中に言いふらすなよ!」
赤い顔で、必死の形相で釘を刺す喰虎。
「もう、言っちゃいましたよ?」
それはどうやら無駄だったようだが。
「なっ……!」
「ねずの様子、逐一報告してくれたよって、ねずに。」
「あ、あいつか……。まぁ、あいつなら、変に言いふらしたりはしねぇか……。」
胸を撫で下ろし静かに席に戻る。
これ以上話が発展しないように、眠りねずみに頼まれて毎日様子を見に来ていたことは黙っておくことにした。
喰虎は大きく溜め息を吐く。
「ったく、調子狂うな……。これなら、いつもの仏頂面で事務的なお前の方がまだいいぜ……。」
「……好きで、仏頂面してる訳じゃない。」
「だったら普段から表情筋動かせ。今みたいによぉ。」
「俺、今、表情、動いてます……?」
「酔っぱらってっからじゃね?筋肉緩んでんか知らねぇけど、間抜けな顔してんぞ。」
「間抜けって……ひどい。」
「普段がかっこつけすぎなんだよ。」
「別にそんなつもりないです。仕事だから、気を張ってるだけです。」
「素のお前は随分と間抜けじゃねぇか。」
「どこがですか。」
「会議のすっぽかし常連だろ?ってかお前、よく会議の日間違えてるし。入ってきてすぐは酷かったよな。なんで俺がリマインド送らなきゃいけねぇんだよ。」
心当たりがありすぎて閉口する冥蛇。
「忘れ物多いわ、身の回りのこと一切できないわ、突然頓珍漢なこと言い出すわで……要介護じゃねぇか。入ってきたときから問題児だってほかの連中が言ってたが、ほんっとに、いろんな意味で問題児だったぞ、おまえ。」
「……皆さんに迷惑かけた自覚はありますが……そんな言うほど、俺、酷かったんですか?」
「そりゃあもう酷い酷い。もはや笑いのネタだったぜ、お前。」
「……そんなネタになるようなこと、してません。」
今までで一番不服そうな顔をする冥蛇。
「いいや、してたね。」
「……例えば?」
恐る恐る尋ねる。
「個人的に笑ったのは、やっぱあれだな、サイレントアラーム事件。」
冥蛇はばつが悪そうに目を反らす。
「おまえ……またやったな?」
「うー……何で分かるんですか……。」
「8年も一緒にいりゃ、いくら仏頂面でも見分けがつくんだよ。」
アルコールのせいか恥ずかしさのせいか、真っ赤な顔を腕に埋める。
「にしてもあれは傑作だったな。前の日仕事だったし倒れてるかもと駆けつけたら、おまえは部屋のソファで爆睡してるし、机の上でスマホが身動きひとつできずに光ってるし。アホすぎて思わず笑っちまったよ。」
「だ、だって……。」
「まぁ、最初はスマホの使い方も分かんなかったもんな?アラーム設定できるようには成長して、よかったな。」
「馬鹿にしないでください……!」
「あとは乱歩から聞いたが、給湯室でITコンロが使えない挙げ句、隣に電気ケトルがあったとか。コンロの前で『火が付かない』って狼狽える間抜けな姿、容易に想像できるわ。」
「だって、あの時、コーヒー入れるの初めてだったんです……。」
「スマホの充電忘れるのも日常茶飯事だったな。電話に出ねぇと思ったら電池切れで、ちなみにおまえも電池切れで床で爆睡ときた。」
「……仕事後は疲れてて頭、回らないんですよ……。」
「だろうな。じゃなきゃ今日もここには来ないだろ。」
「……たしかに。」
「ま、相変わらず変なところでポンコツだが、少しは人間らしくなったと思うぜ?」
「そう……ですか?」
「あぁ。この間も吃驚した。お前が、ことりを庇うなんてな。」
先日のことりの裁判、最終的にはことりは裏切者ではないという結論になり処刑を免れたが、喰虎は最後まで反対していた。
「俺だって、あんなガキを殺すのは嫌だ。」
冥蛇は驚いた顔で喰虎を見る。
「でも、ルールはルールだ。個人的な感情を、俺は持ち込むつもりはない。だから、反対しただけだ。」
「……あなたは、今も――」
「馬鹿言うな。助かったんなら、それが一番だ。あいつは根が純粋だ、利用されていたってのも、本当だろ。実際――眠りねずみがいないと分かってすぐ、あいつはシスター・モーを仕留めた。」
「……すみませんでした。」
処刑人が私情を持ち込んだ、そのことに冥蛇は改めて謝罪する。
「いいんだよ。俺も、あれでよかったって思ってる。」
その言葉に、冥蛇はふっと優しい笑みを浮かべ、そして机に突っ伏した。
「おい、冥蛇、どうした?」
穏やかな寝息を立てて、眠っている。
「……結局、食いきれないのかよ。」
喰虎は冥蛇の頬をつつきながら、彼の残した串を手に取って晩酌を再開したのだった。
「おい、いい加減起きろ!」
間もなく閉店時間だが、冥蛇の野郎は一向に起きる気配がない。
このまま放っておくわけにもいかず、結局自分となぜか冥蛇の会計まで払わされた。
「こいつ、絶っ対ぇ一人で酒呑ませちゃダメだな。」
そのまま冥蛇を背負って自宅まで帰ることになった。
「くそが!こいつ、一体いつになれば、手がかからなくなるんだよ!」