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青龍vs天青 ー力比べー

登場人物:

 ・東 青龍

 14歳(?)。

 裏組織「宵の薔薇」の元構成員で殺し屋として所属していたが、裏切りがばれて追われる身となった。

「Color Project」と呼ばれる実験の結果誕生した人造人間 「青のSecond」で、普通の人間よりも身体能力と知能が高く五感も鋭い。特に、動作の速さと視力、聴力が優れている。しかし、痛覚が鋭敏すぎるため擦り傷ですら激痛となってしまい動けなくなる。

 暗殺の四家 斬殺の東家の使う剣術の手ほどきを受けており、高い身体能力と合わせて大人顔負けの強さを持つ。


 ・風斬 天青

 東北の奥地にある「風斬神社」の神主。

 この世界を含め、多くの世界には別の世界につながる「異界への扉(クラック)」があり、それらを管理・監視し、出入りするものに対処する「異界の番人」。現在は現役を引退し神社周辺のみを管理しているが、番人としての力は健在。

 彼ら番人のルーツは「風斬東の冬桜」と呼ばれた一人の巫女だが、彼女の扱う剣術は東家の剣術のもとにもなっている。

<状況>

 青龍は自身の剣術を極めるため、東家の剣術のもととなった「風斬東の冬桜」の末裔、風斬神社の神主のもとへと向かっていた。しかし、冬の猛吹雪と裏社会からの刺客への警戒から体力が尽き、山中の道路で倒れてしまった。倒れた青龍は近くの神社の神主に助けられたが、その神社こそが目的の風斬神社だった。

 青龍は神主、天青に剣術の指南を頼み込むが、その条件として、裏社会から狙われている青龍が天青一家の養子になれと言われる。ただでさえ自分のわがままで剣術を教わろうとしているのに、身内になれば当然天青やその家族も裏社会に狙われ迷惑をかけてしまうため断った。しかし、天青も一歩も引かず、子供一人を外に放りだすことなどできないと青龍を引き留める。

 そして、天青は自分より強いことを証明できれば好きにすればいい、と「力比べ」を提案したのだった。

「正気……ですか……?!」

 青龍は驚きの余り、刀を落としそうになった。

「いくらあなたが凄腕の剣術使いだからって……殺し屋に、真剣に太刀打ちできるわけないじゃないですか?!怖くないのですか?!」

 天青は何も言わず、棚の奥から一振りの木刀を取り出し、静かに構えた。

 瞬間、空気が変わる。明鏡止水、その言葉通り、辺り一帯が澄み渡る。

 彼は穏やかに、だが真っ直ぐと僕を見つめる。呼吸一つすら見逃さないように。

「本気、なんですね。」

 ――――――ならば殺し屋として、あなたを殺します。

 刀を水平に構える。

「では、お覚悟を。」

 床を蹴り、自慢のスピードで一気に懐に入り込む。その勢いを刀に乗せる。

 ほとんどの人は、このの速さについてくることはできない。高速の踏み込みと刹那の斬撃。一般人はおろか、裏社会の人間でも対応できる人は少ない。

 カツンッ!

 しかし、天青は易々と受け止めた。

 それだけではない。

「!」

 木刀を素早く翻し、青龍のわき腹を狙い薙ぎ払う。青龍は慌てて距離を取った。

 青龍の一撃は効かなかった。

 ――――――なら、連撃で一気に仕留める!

 一歩踏み込み、刀を振る。先程と同様に受け止められ、木刀が襲ってくる。同じパターンだ、なら、当然対応できる。

 すかさず2手目を繰り出す。下から振り上げる逆袈裟切り。

 天青は身体を僅かに反らすだけで躱してしまう。

 3手目、4手目と続けざまに刀が振るわれる。が、どれも避けるか受け止められてしまう。

 だが、攻め続けれるほど、相手を分析できる。どう刀を振れば、どう対応されるか。それを加味して次の手を決めればいい。

 ――――――この手なら、天青さんは右に避ける!

 青龍の予想通り、振り上げた刀に対して天青は身体を右に反らした。

 その瞬間、青龍は刀の軌道を強引に変え、右から首を狙う。


 確実に捉えた――――――はずだった。


 次の瞬間、青龍は吹っ飛んだ。

「……えっ……?」

 背後から掴まれ、投げ飛ばされたのだ。

 顔を上げると、天青が目の前に立っていた。

「大した学習能力だ。この短時間で俺の回避パターンを分析して、誘導するとは。」

 咄嗟にその場を飛び退く。

 着地した瞬間、背中に何かが当たった。

「人間相手なら十分通用したんだろうな。が、悪いな、俺には効かない。」

 慌てて振り返る。だが、既に声の主は居ない。

「覚えておきなさい。君の能力は秀でているが――――」

 転生は足音もなく、背後を取る。

「――――あくまで、君は人間だということを。」

 青龍の首筋には、いつの間にか木刀が当てられていた。

 振り返ると同時に刀を振るうが、空を切る。

 ――――――どういう……こと……?

 捉えられない。正面に捉えたと思った次の瞬間には、視界のどこにもいない。音も無く、空気を動かすこともなく、彼は消える。そして、気が付けば死角から木刀を差し出してくるのだ。

 ――――――なぜ、なぜ当たらない……?!

 陽炎を相手にしているよう。斬っても斬っても、手ごたえはない。

 空振りばかりで、青龍の息が上がる。一方、天青は涼しげな顔で佇んでいた。

「そして俺は、相手が人間ならば、魂を持つ者であれば、絶対的に優位に立てる。」

 青龍が動こうと力を入れた瞬間、全身の動きが()()()()()

 ――――――な、なんなんだ、この、感覚は……!

 全身を見えない大きな力で抑えられているようだった。力を入れているのに、全く動けない。

 青龍の目の前には天青の身体がある。ほんのわずか、たった数センチ刀を動かせば刺せる位置にいるのに、刀は1ミリも動かない。

「覚えておきなさい。」

 天青の手が頭に触れる。


「君は、人間だ。」


 力が消え、青龍は倒れかける。その体を、天青は優しく受け止めた。

「まだ、続けるか?なんなら、もう少し実戦形式にしても構わないが?」

「いえ……全く、殺せる気がしません。」

 青龍は天青から離れ、

「僕の、負けです。」

 そして、深く頭を下げた。

 完敗だった。そもそも、勝負にすらなっていなかったのだ。

「じゃあ約束だ。素直に俺の言う事を聞いてもらおうか。」

「……でも、あなたたちを、裏社会に巻き込んでしまうことに……。」

 ――――――天青さんはともかく、奥さんは一般人だ。狙われたとすれば、全く太刀打ちできないはず……。

「瑠璃のことか?あいつも強いから、大丈夫だろ。俺も死ぬ気で守るし。」

「……」

 ――――――えーっと、どこからツッコめばいいですかね……?

 青龍は一言も奥さん――瑠璃のことは言っていない。

 ――――――それに、瑠璃さんが強いってどういうこと?

「疑問だらけで大変そうだな。」

 天青は他人事のように笑う。

 ――――――頭の中、覗かれてる……?

「頭の中、覗かれてるかと思っただろ?」

「でも、そんなわけないですよねー……え?」

 ――――――今、この人、僕が考えていたことドンピシャで言ったよね?!

「悪いな、やろうと思えばこういうこともできるんだよ、俺は。」

「……なら、今までも僕の考えは全て、筒抜けだったと……。」

「安心しな。普段は滅多に使わない。」

「……そんなの、何とだって言えるじゃないですか……。」

「今のは、『こういうこともできる』ってことを示すために使っただけだ。ずっと使っていたのなら、君が俺の回避パターンを分析していたことにすぐ気付くし、仕掛けてきた時にあえて違う避け方をしていた。」

 つまり天青は、この力比べでは本気を出していなかったのだ。

 ――――――本気を出されていたら、僕は、刀を振ることすらできなかったということじゃないか……。

「じゃあ、帰ろうか。」


 帰り道、青龍は願った。

 ――――――どうか、優しいこの人を、巻き込んでしまいませんように。

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