583,5.Interlude Story:Marmu
「──ん、ぅ……」
カイルとマクベスタが去った後のこと。
水色の睫毛を揺らして、ヒトリの少女が意識を覚醒させた。
「傷が塞がってる……? それに、このマントと剣、は…………」
少女──女王近衛隊が第三部隊《ブリランテ》の小隊長マーミュは、腹部にあった筈の傷が癒えている事にまず驚く。そして、目を丸くしたまま、視線を横へ下へとずらして、傍にある物と、なくなった物に気がついた。
(──ユーミス……っ)
彼女の顔から、サッと血の気が引いてゆく。
マーミュはマントと細剣を抱え、慌てて走り出した。まるで先程のユーミスのように、彼の名を叫びながら土煙の中を突き進む。
その中で、見慣れた派手な色が僅かに見えた。
「ユーミス!!」
心配と喜びを孕む声で名を呼ぶが、返事はない。
それもその筈。何故なら彼は──
「……………………え?」
既に、死んだのだから。
「あ、あぁ……っ、ぅ、あ…………!!」
首だけとなったユーミスを見て、マーミュは絶望する。膝から崩れ落ち、声にならない嗚咽を漏らしながら、生首を抱き締めて号泣した。
(……ゆる、さない。ぜったい、ぜったいに、ゆるさないの。ウチからユーミスを奪ったヤツらを、皆殺しにしてやる────ッ!!!!)
その瞳に、復讐心を燃やして……。