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579,5.Interlude Story:???
醜い石に、存在価値は無い。
そこらじゅうに転がる砂利の一粒程度の存在には、誰も気づかない。
それはよくある風景の一部に過ぎなかった。
──だけど。
ただひとりだけ、その砂利の一粒に目をかけたヒトがいた。
『……──あら。こんなところに、とっても綺麗な子がいるわ』
それを掬い上げ、そのヒトは微笑む。そのような醜いモノは貴女に相応しくない! そんな声を聞きながらも、そのヒトは変わらずそれを撫でている。
そして、彼女はこう言った。
『ねぇ、あなた。うちに来なさいな』
今思えば。あれは、ただの収集癖の一環だったのだろう。たまたま目についたから、面白半分で拾っただけに過ぎぬガラクタ。──それこそがあの日の真実であり、それの存在意義を奪い取る事実。
ああ、でも。
それでも構わないと、思うのだ。
彼女が、醜い石を拾い上げ救ってくれた事も。飽きずに世話を焼き、醜い石を誰かが羨む宝へと変えてくれた事も。
それら全てもまた、存在意義が潰えてもなお消えない、紛れもない事実なのだから──……。