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574.Main Story:Ameless2

「……──え? あい、されている? あたし、が……?」


 唖然とする彼女の唇が、僅かに震える。それと同時に、その可愛らしい顔が、ある一点へと向けられた。

 彼女も元アンディザプレイヤーだからだろうか。きっと、『王子様』という言葉を聞いて察しがついたのだろう。


「……ロイ。あたし、のこと……あいしてる、の?」


 問われたロイは少し間を置いて、真剣な面持ちで頷き、


「──うん。おれは、ミシェルのことを愛してる。あの日……きみがおれの手を握って走り出してくれた、あの時から。おれはずっと、ミシェルのことが大好きだよ」


 はにかみながら、ゲームの彼とは違う告白の言葉を口にした。


『あの日……きみが、親に捨てられたおれに手を差し伸べてくれたあの時から。おれはずっと、ミシェルのことが大好きだよ』


 そう言って告白していたあのロイが、ゲームとは違う言葉で懸命に想いを伝えようとしている。

 その事実が、彼女に現実を受け入れさせたのだ。


「ほん、とうに……あたし、あいされて、いたんだ……こんな『あたし』が…………っ」

「こんな、なんて言わないでよ。おれのミシェルは世界で一番可愛くて、優しい女の子なんだから」

「〜〜っ」


 涙ぐむミシェルちゃんの背中を、ロイがゆっくりと擦る。

 その光景を見守っていたら、「世界一可愛いのはうちの妹だが」とフリードルが突然ボケはじめて、「激しく同意する」「そうですね!」「ハイ世界の真理ィ〜〜」「(ヘドバンのようなキレのある首肯)」と男性陣が続々とそのボケに乗っかったのだ。

 自由すぎるよ、この天使を自称する美男子達。少しぐらい空気を読んでくれ。

 まあ──学ばずに繰り出された、アルベルトの「それに、主君はとても優しいよね」という発言に関しては甘んじて受け入れたが。

 アルベルトはいい子ね〜〜っ! 今度、お団子でも作ってあげちゃおうかしら。


「……ほら、もう分かったろ。アンタの願いはわざわざ願わずとも既に叶ってるんだよ、女子大生」


 わいわいと賑わうガヤの中から、一等強く聞こえてきた声。それはカイル・ディ・ハミルのものでありながら、どこか彼らしくない音色だった。


「────え?」


 カイルの言葉が聞こえたのだろう。ミシェルちゃんはバッと顔を上げて、目を丸くする。


「アンタは“普通に愛されたい”のであって、“皆に愛されたい”訳じゃねぇだろ。自分を見失い過ぎだ、アホ娘。……願いは叶ったんだ。だからもうこれ以上、無意味な願いを抱くのはやめろ──『佐倉愛奈花(サクラマナカ)』」

「〜〜〜〜っ!!」


 私達にしか聞こえない声──日本語で放たれた、聞き馴染みのある語感の人名。

 サクラマナカ……まさか、『彼女』の名前なの? 仮にそうだとして、どうしてカイルがそれを知って…………?


「おにい、さん……?」


 あれれぇ? なんか知り合いっぽいぞぅ。


「なんだよ。女子大生」

「なんで、あたしって分かったの?」

「そりゃあそんだけ口調や振る舞いが似てたら気づくだろ。つーか、俺の受け売りまで話してた自覚ねぇの? ……まあ、あれもこれも全部、気づいたのはカイルだけどな」


 何やら本当に前世の知り合い同士らしい二人が、えらく親しげに話す。


「……っお兄さんのキザ男!」

「は!?」

「あたしなんて全然分からなかったのに! なんでお兄さんばっかり!!」

「だって俺はちゃんとカイルやってたから……って、オイ! 水飛ばすなっ、服が濡れるだろうが!!」


 本当に、とても、仲良く二人は騒ぎ出す。

 これにはもう、誰もが置いてけぼり。水を飛ばしそれを避ける。そんな攻防を繰り広げる二人を、ただ眺める事しか出来なかった。


 ……私だって転生者なのに。私だって元日本人なのに。なんでこんなに、疎外感に襲われるんだろうか。

 せっかくの転生者仲間なのに……二人だけ知り合いで私だけ無関係の第三者なの、なんかやだなぁ…………。

 と、友達を取られた子供のように拗ねてみる。


「……イリオーデ。GO」

「仰せのままに」


 胸がモヤモヤしたまま話を進めたくないので、カイルを指差し番犬を出動させる。イリオーデがカイルをヘッドロックで仕留め、捕獲。俵担ぎで帰還した。


「なんで…………??」


 投げ捨てるように乱雑に降ろされ、「ぶへっ」と情けない声を発した直後。カイルが地面にへたり込み、困惑した様子でこちらを見上げてきた──が。とりあえずスルーして話を進めよう。勿論、ただの腹いせだ。


年内の更新はこれが最後になります。

それでは皆様、良いお年を!ヽ(´▽`)ノ

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは~!今夜も更新ありがとうございます! さて、何はともあれ良かったね、ミシェル。ちゃんと愛してくれる人に気づけて。本当に良かった…! と、思っていたのに外野の自称天使たちがうるせ…
[良い点] ミシェルの願いが既に叶ってた事に気づけて良かったです! そしてカイル!いやー、カイルはもう気付いてたんですね。 それにアミレスが疎外感を感じて腹いせしてたのが本当に最高です。 一年間お疲…
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