【速報】前の席の方の名前が判明しました。
聞いてください。今、わたし、テンション、高い。
なぜか?
前の席の方のお名前、判明したからです!
どなたか存じ上げませんでしたが、「ダテってこのクラス?」と。すると、前の席の方は「何ー?」と立ち上がったのです。
どなたか存じ上げませんが、タイムリーな最高のアシストでございました。ありがとうございます。
ご存じでしょうか、五〇音の出席番号順においてダはツの前です。
ご存じですよね、失礼いたしました。
はいはい、落ち着け、わたし。
以前からの疑問が解消されると、頭のねじが何本かさようならするんです。そして、なんでしょう、こうなります。
そういえば、そもそも誰に聞いていただきたいのかわかりませんね。
まあ、こういうことを考えていても、他の人間には一切ご迷惑をお掛けしておりませんから大丈夫なはずです。
偽装のために持ち運んでいる単行本がいい仕事をしてくださっていますから、不審者には見えていないと思われますので、あれです。
そう。
いろいろとセーフなのです。
お名前といえば、気になることが一つ。
名前がその人を形作る。
反対なのでは? と。
その人の名前は、その人の言動や功績の影響を与えていらっしゃると仮定します。
このとき、原因は言霊と同じ原理なのでしょうか。
こちら、小学生のころから気になっております。
そうです、一〇歳のころから思考事項なのでございます。
解消される日は来るのでしょうか。
「じゃあ、栗花落さんは?」
はい? 一言も聞いていなかったので何のお話かすらわからないのですが……
飛び火というものですね。
一応、本からは顔を上げておきましょう。
「栗花落さんは……白、かな?」
首を傾げて見せると「光の三原色だと全部混ぜた色、色の三原色だと何も混ぜない色。なんか栗花落さんっぽいなーって」
意図を図りかねたので反対側に首を傾げました。すると、いたずらっ子のような笑みを浮かべ答えてくださいました。
「何色にも染まりそうで、でも、染まらなさそう。面白いでしょ? それから……もし、染められたら――どうなんだろうね?」
ああ、なるほど。白無垢のノリですか。
母が結婚するときに着たそうです。両親は仲良しなのでよく聞かされます。新婚時代から変わらずお互いを好いているそうです。言われてみると、言い争うところはみたことありません。争いといえば、四つ入りのプリンを誰が二つ食べるか決めるときのじゃんけんくらいでしょうか。わたしのスイーツ好きは両親からの遺伝子なので抗いようはありません。
最近、近くの席の方々がこんびにすいぃつなるものをくださるので毎日が幸せで満ちております。
ああ、富田さん……でしたか。ありがとうございます。こちらはチューイングキャンディですね。
「これ、狙ってるね」
富田さんのお言葉に首を傾げると「伊達、栗花落ちゃんを狙ってるんだよ」と、耳打ちされました。
狙うとは、つまり…………い、命を……?
わたし、何か気に障ることしましたでしょうか?
「ねえ、怯えてるんだけど。何か変なことしたの?」
「えー、記憶にございませんけどー」