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vsカブトムシ

 大きなカブトムシ。

 黒光する鎧に包まれて、先端にはそれはそれはご立派なツノを持ったカブトムシ。

 ふぉぉぉ!

 カッコいい!

 なにこの重量感のあるフォルム。

 高らかに掲げられたツノ。

 欲しい!


「あー」


 思わず手を伸ばそうとすると、カブトムシはこちらに接近してきた。

 高速で。


「むにゃ!?」


 気づけばカブトムシはそのツノをわたしと地面の間に差し込んだと思うと、次の瞬間には、わたしは空を舞っていた。


「むにゃぁあああ!!」


 空中で二回転ほど回った後、偶然お尻から着地し、コテンと仰向けの状態に倒れ込んだ。


 いったぁああ!!

 な、何が起こったんだ!?

 もしかして、わたし投げられた?


 大きなカブトムシと言っても所詮はカブトムシ。

 私の手でもつかめるくらいの大きさしかないはず。

 なのに私は空中で二回転するくらいに投げられてしまった。

 何なんだあのカブトムシ。


 天地が逆さまになった状態で目に飛び込んできたのは、またもや私に向かって高速で接近してくるカブトムシ。

 まずい、また投げられる。

 さっきは奇跡的に痛いだけで済んだけれど、下手したら打ちどころが悪くて死にかねない。


「あぅああああ!!」


 力を振り絞って寝がえりをうって何とか回避し、そのままカブトムシの方向に向き直る。


 ふうぅぅ、落ち着けわたし。

 相手は所詮はカブトムシ。

 落ち着けば勝てる。

 逃げるのもありかもしてないけど、あの速さ。

 逃げきれないかもしれない。

 それに、カブトムシ相手に逃げるだなんて、そんな悔しい真似はしたくない。

 どうやら相手はやる気のようだし、そっちがその気ならこっちだってやってやる。

 赤ん坊なめるなよ。


 集中だ集中。

 いくら高速で動くと言っても目で追えないほどじゃない。

 現にさっきは寝返りで回避できた。

 集中して、相手を良く見るんだ。

 ......おぉ?


 カブトムシ レベル10


 なんか見えた。

 高速移動といい、さっきの投げといい、カブトムシからいろいろ超越している気がするけど、やっぱりこいつはカブトムシなのか。

 でも、レベル10って。

 システムの知識によれば、レベルは強さの段階を表している。

 つまり、レベルが高ければ高いほど強いってことだ。

 まだ、わたしのステータスは見ていないからはっきりとは分からないけど、たぶんわたしよりもレベルが高いよねこのカブトムシ。

 でも、大丈夫。

 ちゃんと勝機はある。


 まずは、うつぶせになる。

 ただし、ちゃんと正面を向いたまま。

 相手を見定めて。


 よし、接近してきた。

 もうちょっと、もうちょっと、もうちょっと、今っ!!


 カブトムシがわたしを投げようと懐に潜り込んできたところでできるだけ体が高くなるように四つん這いになる。

 それと同時に若干後ろに下がる。

 うん、予想通り。

 どうやら、このカブトムシはわたしを力いっぱい投げ飛ばそうとしたのだろう。

 だからか、投げた後の状態。

 つまり、ツノを高らかにあげた状態でカブトムシは硬直していた。

 さっき見た時も確かに投げた後硬直していたもん。


 頭の方の足を延ばし、ツノまで天に向かって上げた状態。

 これなら踏ん張りも効かず、バランスも悪いはず。


「たいっ!!」


 わたしは頭を器用に使い、カブトムシめげけて頭突きを放った。

 カブトムシはその衝撃で半回転し、ひっくり返った状態になって倒れた。

 じたばたして体をもとに戻そうとするが、一向に動く気配はない。


 はっはっは、どんなもんだ。

 さっき投げ飛ばしてくれたお返しだ。


 さて、ここからどうしたものか。

 カブトムシはひっくり返った状態で動けないとは言え、何かの拍子に戻るかもしれない。

 そうなる前にちょっとかわいそうだけど、潰すしかないかな。

 うん、石で潰そう。

 ひっくり返っている今ならできる。

 何か、手ごろな石はないかな。

 これでいいかな。


 わたしは持てる程度の石を持ってカブトムシのところまでハイハイで移動する。

 じゃあね、カブトムシ。

 カッコイイから欲しかったけど、わたしたちは一緒にはいられないみたいだ。

 残念だよ、さようなら。


 わたしは、カブトムシがひっくり返っている地面に向かって、思いっきり石を叩きつけた。


「にゃっ!?」


 が、それはカブトムシを潰すようなことはなかった。

 何故なら、カブトムシは石に叩き潰される瞬間、羽を羽ばたかして空を飛んだからだ。


 私の眼の前に滞空するカブトムシは、地面にいる時とは比べ物にならない速さでわたしめがけて飛び、自らの体を武器にしてその全身でわたしに体当たりして来た。

 とっさに、石を持った手でガードするも、その衝撃で石をはじかれてしまった。

 なんて言う衝撃力。

 これは、まともに何度もくらったら危ない。

 空中にいるとはいえ、わたしを放り投げるほどの力と硬さがあるあのツノで体当たりされればまずいに決まっている。

 でも、どうすれば、どうすればいいんだ。

 いくら考えても答えは出てこず、カブトムシも待ってはくれない。

 何度も何度も空中での素早い動きでわたしめがけて体当たりをしてくる。

 わたしもなんとか避けようと、体を捻ったり避けたりはしているが、焼け石に水だ。

 やばい、痛い、泣きそう。

 でも、泣いて、口を開けたら。

 もし、カブトムシが口にめがけて入ってきたら。

 我慢しろわたし。


 くぅうう。

 こうなったらこれでも喰らえっ!!

 どうすることも出来ないので地面の土やら石やらを掴んで投げるが、カブトムシは空中で華麗にターンし避けやがった。

 ああもうっ、これでもダメか。

 だったらもうやけくそだ!


「ふにゅううううう」


 力を貯めて、目標を定める。

 動きを良く見て、今だ。


「たいあぁあああああ!!」


 真っ正面から勝負してやる!!

 全力でハイハイして頭突きを敢行する。

 わたしの速度も合わさって、カブトムシの攻撃力は上がるかもしれないけど、条件はこっちも一緒。

 わたしの頭が砕けるか、カブトムシが潰れるかだ。


「にゅやぁぁあああああ!!」


 死にさらせぇえええええ!!


 ドーンという音が聞こえてきたような気がすると同時に、世界がくるっと回った。

 うぅ、目が回る。

 どうやら生きているみたいだ。

 どうなった?


 ーーレベルアップしましたーー

 ーースキル『頭突き』を獲得しましたーー

 ーースキル『石頭』を獲得しましたーー

 ーーメールを受信しましたーー



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