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Fiction  作者: 神門志御
6/6

災厄①

放置したくて放置していたわけではないのですが、なかなか時間が作れず、結局1年以上も放置していました。

申し訳ないです。

引き続き頑張って書きたいと思います。


高校生である尾崎が体験した不可解な出来事。

夢の中で見た不思議な光景。

自分の身に起きた理解できない現象。

そして、これから何が起きるのか…。


「母さん、おはよう」

キッチンで朝食の支度をしている母さんに、声を掛けてからリビングの椅子に座った。

「あら、賢一おはよう。今日は土曜日なのに珍しく早いわね。」

母さんは、いつもと変わらない優しい声で挨拶を返してきた。

土曜日は学校が休みだから、普段だと俺はもう少し寝ているはずなのだけれど、何故か目が覚めてしまった。

仕方なくリビングに来たのだが、珍しいと言われるともう少し寝ていれば良かったと思った。


何日か前に見た不思議な夢のその後は続きを見るわけでもなく、これまで体験したような不思議な事件にも合わなかった。

学校でも特に変わったこともなく、平穏な日常になっていた。

(あれは一体、何だったのだろう…。)

そう思いながらテレビを点けようとリモコンに手を伸ばした時だった。


わずかに部屋が揺れているのに気が付いた。

「あら、地震?」

母さんも揺れていることに気が付いたらしく、キッチンに立って周りを伺っていた。

そうしている間にも、少しずつ揺れが大きくなってきていた。

朝食の支度をしていたが火は止めたところだったようで、母さんはキッチンからリビングの方に来ていた。

「結構、大きいわね。大丈夫かしら…」

少しづつ大きくなる揺れに、母さんは心配した声を出していた。

揺れ始めてから30秒ほど経っただろうか、突然ガクンとひと際大きく揺れた。

「イヤッ!」

「母さん、大丈夫!?」

母さんは、大きく揺れた拍子にキッチンとリビングを隔てている壁に体をぶつけて、もたれるように壁に手を置いた。

まだ、揺れは続いていた。

それも先ほどよりも大きく。

テレビ台の上でテレビもユラユラと揺れ始め、茶箪笥の皿もカチャカチャと音を立て始めた。

立っていられないほどでは無けれども、一向に地震が収まる気配はなかった。

それどころか、今度は横揺れではなく、縦揺れのような揺れに変わって一層強くなった。

(震度5以上はあるんじゃないか?)

ガチャガチャと皿が音を立てて、テレビも今にも倒れそうだった。

リビングにある殆どのものが大きく揺れている。

壁に飾っている額縁、テーブルの上のもの、冷蔵庫や茶箪笥、天井のライトや床に置いてある加湿器も…。

(これ以上、大きくなったらヤバいんじゃないか!?)


「母さん、とりあえずテーブルの下に隠れよう!」

「ええ!」

何度か学校の地震訓練で机の下に入らされたことを思い出した。

テーブルの下で母さんを覆うように抱きしめて縮こまっていた。

早く収まって欲しい。

こんなに地震が怖いと思ったのは初めてだった。

「助けて…」

母さんがこわばった声で誰にともなく助けを呼んでいた…。

---------


どの位の時間が経ったのだろうか。

気が付くと揺れは収まり静けさが戻っていた。

俺と母さんはテーブルの下で蹲っていたが、揺れが収まったことにようやく気が付いた。

「もう、大丈夫なの?」

「揺れは収まったみたい。多分、もう大丈夫…だと思う」

母さんはか細い声で俺に聞いてきた。

まだ揺れているかのような感覚はあるけど、静かになったことを確認して母さんに返事をしたのだった。

幸いテレビも倒れておらず、茶箪笥の皿が飛び出てくるようなことも無い様だった。

「とにかくテレビを点けよう。地震速報があるかもしれない。」

俺はテーブルの下から這い出て、テーブルの上にあるテレビのリモコンの電源スイッチを押した。

続けて母さんもテーブルの下から這い出ていた。


しかし、何度も電源スイッチを押してもテレビは付かなかった。

(停電?)

今度は壁にある天井のライトのスイッチを押したが、ライトが点灯することは無かった。

「停電しているかも。テレビもライトもつかない。…ブレーカが落ちたのか、この地域が停電なのか分からないけど…。とりあえずブレーカを見てくるよ。」

俺はそう言って風呂場のブレーカに向かった。

「気を付けてね。」

母さんはへたり込んで動けない様だった。


ブレーカを確認したが、特にブレーカが落ちているわけではなかった。

この地域が停電になったのだろう。

今度は自分の部屋のスマホを取りに行った。

(とにかく状況を確認しないと。)

部屋に入ると、本棚から本や飾ってあったものが落ちて散乱しており、足の踏み場の無い状況になっていた。

「これを片付けるのか…」

俺は部屋の状況を見てゲンナリしたが、とにかくスマホを探さないと。

幸いベッドの上で充電したままで特に被害は無かった。

すぐさまスマホを見ると電波が一本も立っておらず圏外になっていた。

「マジか。どうしよう。」

今の時代、ネットが使えないと何も出来なくなってしまう。

テレビもスマホも使えないとなると、情報を入手する方法が思いつかない。

(とりあえず、母さんと話しするか)

そう考えてリビングの方に戻った。

---------


「お隣さんとかどうするのかしら。」

母さんもスマホが使えないので状況が分からないのだろう。

そうなれば、隣近所に聞くしかない。

隣近所も同じ状況だとは思うけど。

「母さん、お隣さんに行ってくるわ。」

そう言って玄関の方に向いて歩きだした。

とりあえず、昼前だからライトをつける必要もなく足元も特に散らかっているわけでもないので、スタスタと歩いて行った。

ガチャリと玄関が開く音がして玄関を出て行ったようだった。

俺は仕方なく自分の部屋を片付けようと椅子から立ち上がった。

その時。

「キャーーー!!」

今まで聞いたことの無いような、母さんの奇声を聞いたのだった。

俺は急いで玄関から出ると、へたり込んでいる母さんを見つけた。

母さんは一つの方向から視線を外すことなく、両手を組んだ状態で小刻みに震えていた。

その視線の方向を見ると、全身灰色の大きな犬のような動物が何かを食べているところだった。

「母さん、どうなっているの。あれは何?」

アウアウと言葉にならない声で何かを言おうとしていた。

ふと、その犬の食べているものに目が行ったのだった。

その犬の下で仰向けで大の字に寝ている人のように見えた。

しかし、それを食いちぎり、むしゃむしゃと食べていた。

それは目を見開き、口からは赤いものを垂らし、その犬に噛みつかれるたびにビクッビクッと震わせていた。

人のように見えるものは、明らかに男の人だった。

そう、大きな犬のような生き物に食べられているのだった。

「うわぁ!!」

その状況を理解した俺は、思わず声を出してのけぞる様に後ずさりしてしまった。


明らかに犬とは違った。

体格は大型犬の二回り以上もあり、全身毛羽だった灰色をしていた。

犬と言うより、いつか図鑑で見た狼に近かった。

そういえば、以前、学校でも地震の後に地面から出てきた巨大な蟻の集団に襲われたことがあった。

警察に事情聴取された際にも、その様な巨大な黒アリは見つからなかったと言っていたし、その後も学校で誰もその事を話すことは無かったのですっかり忘れていたけど、あの時と同じような状況だった。

その狼が不意に食べるのを止めたかと思うと、ゆっくりとこちらに振り向いたのだった。

その目は、動物のような眼球ではなく、赤くぼんやりと光っている様だった。

その場で動けずにいた俺たちをジィーっと見ていたかと思うと、徐に顔を空に向けて大きな咆哮を放った。

「ワォォォーーーーン!!!」

その咆哮は体の奥底が震え上がるような途轍もない恐怖を呼び起こした。

(ヤバい、逃げなきゃ、ヤバい、逃げなきゃ、ヤバい、逃げなきゃ、…!!!)

頭の中で警鐘が鳴り響いて、すぐに逃げることを選択した。

体が逃げようと強張ったところで、目の前で震えて動けずにいる母さんが目に入った。

「母さん!!!」

(母さんを連れて家の中に逃げるんだ!!)

恐怖でまともな思考もできなかったが、母さんだけは守らなければと母さんに叫んだ。


ビクッと母さんは体を震わせて、俺の方に向いた。

しかし、母さんも恐怖で体が動けない様だった。

俺はようやく母さんの腕を掴んで、家の中に引っ張り込もうと力を込めて思い切り引いた。

「い、痛い!!」

力任せで引っ張ったせいか、母さんは悲鳴の様に痛みを訴えた。

でも、引っ張るのをやめるわけには行かなかった。

まだ咆哮を上げている狼が、いつこちらに飛びかかって来るとも限らないからだ。

しかも、狼の遠吠えは仲間を呼ぶためだと聞いたことがある。

この咆哮がその為だとしたら、俺たちにはどうにもならない。

だから、母さんと一緒に何としてでも家に逃げ込まなければならない。

そう思っていたが、母さんも痛みで我に返って状況を理解したのか、ふらふらとしながらも俺に引っ張られるまま家に向かった。


狼も俺たちが逃げる事に気が付いたのか咆哮をやめて、こちらに向かってグルルルと唸り始めた。

玄関を開け、母さんと一緒に家に飛び込んだ。

すぐに玄関のドアを閉めようと手を掛けた時だった。

唸っていた狼がこちらにもう突進する様に走ってきた。

(ヤバい!!!)

俺は慌ててドアを閉め鍵を掛けた。

その瞬間、ドォーンともの凄い衝撃と音が俺にぶち当たったのだった。

ドアは肉眼でもはっきりわかるほど大きく歪んで、ミシィッ!!と音を立てた。

硬い木でできたドアとは言え、何度も体当たりされたのではドアは壊されてしまうだろう。

むしろ今の一撃に耐えたことが不思議なくらいだった。

俺は衝撃と音に吹っ飛ばされたが、不思議と冷静に考えていた。

「母さん、とにかく奥に逃げるんだ!早く!!」

「でも!!」

「もう一度、体当たりされたらこのドアはもたないから、とにかく奥に逃げて隠れるんだ!」

「でも動けないのよ!!」

恐怖と混乱で体が動かないらしい。

でも、このままではドアが壊されてさっきの男の様に二人とも殺され食べられてしまう。

「母さんは俺が守るから!絶対にここで俺が守るから、とにかく隠れるんだ!」

「嫌!!賢一から離れたくない。お願いだから一緒に…」

叫びとも嗚咽ともわからない声で、母さんは俺に訴えていた。

(俺だって一緒に逃げたいよ。でも、ここでアイツを何としてでも食い止めないと、母さんが殺されてしまう。)

そして、どうしても動こうとしない母さんを抱きしめた。

どうにもならない状況で、死ぬことよりも母さんを守れない事を深く悔やんでいた。


しかし、その時は来なかった。

そして、アイツの気配は消えていた。

今回は家と玄関先だけで話が終わってしまった。

地震が発生して得体のしれないものに襲われるパターンになっていますが、もちろんこれには訳があります。

追々話は書きますけど、いつになることやら。


もう少し表現とかテンポとかうまく書けたら良いのですけど、なかなか難しいですね。

温かい目で読んでもらえると嬉しいです。

それでは次回をお待ち下さい。

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