表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fiction  作者: 神門志御
4/6

怪異

ある時から不思議な事件に遭遇した高校生の尾崎賢一だったが、事件の事情聴取をした刑事が、その日のうちに死体で発見された。

また、事件は登校時間帯に学校の門近くで起きたにもかかわらず、翌日学校では誰からも事件について触れられることが無かった。

その状況に疑問を持った尾崎は、昼休みに友達と話をしていた。

空には薄暗い雲が広がっていた。

 午後の授業が始まる頃には、外はシトシトと雨が振り始めていた。

 5時限目は生物の授業であった。

 生物の授業は、あまり好きでは無いのだが、先生が面白い話をすることが多く、先生の話は好きだった。

 今日も授業の内容が脱線し始めた。

 「みんなは昨日のテレビを見たか?生命に関する科学的な研究の特集をやっててな、先生は録画もしたし、中々面白い内容だったな。」

 そう言えば、そんな番組があったな。

 俺は見なかったけど。

 「その中で、そもそも『死』とは何かと言うのがあってな。」

 《死》と言えば、昨日のニュースであの刑事が殺されたと言っていたよな。

 ちょっと話した程度ではあったけど、見知った人が死んだのは衝撃的だったな。

 そんな事を考えていると、先生が話を続けていた。

 「死ぬとどうなるのか。逆に言えば、生きていると言うのはどういう事なのか。お前たちは、両親がエッチな事をして出来たわけだが…。」

 しれっと下ネタ入れたなぁ。

 周りもワサワサしている。

 「生まれる前や死んだあとは、どうなっているかと考えた事はあるか?」

 そんな先生の問いに、

 「魂になっているとか?」

 生徒から声が上がった。

 「じゃあ、魂って何だ?」

 先生がそう切り返したが、特に生徒からは何も発言はなかった。

 「先生が思うには、だ。」

 先生は続けて、

 「魂は、生命が活動するために必要なエネルギーの様な物じゃないかと思ってる。そのエネルギーがある事で生命として活動するようになるんじゃないか。」

 また、突拍子もない事を言うなぁ。

 「その証拠、と言う訳でもないが、幽霊とかはそのエネルギーの様な物が滞留してできた物じゃないかとも考えている。」

 「じゃあ、幽霊は実際には居ないと言う事ですか?」

 今度は女子生徒から声が上がった。

 「生物には、その特別なエネルギーを感知するセンサーがあるんじゃないか?それを説明できないから『幽霊』とか漠然とした事象として扱っているだけじゃ無いのかな。ただな…。」

 相変わらず変な話をする先生だが、教科書には書いていない事だからか、いつも凄く興味をそそられる。

 「生命として活動していたエネルギーは、その記憶を何かしらの形で記録しているのではないだろうか。だから、幽霊になる前の生前の状況を、生きている人間が感じ取ってしまうと、その状況とか見えてしまうんじゃないか。例えば、事故死した人の幽霊とかだと、全身血だらけに見えるのは、そういった記録が残っているかと考えられる。皆も楽しかった事や辛かった事は、より鮮明に覚えているだろう。インパクトがあるからだが、事故にあって死んだとなると、本人にして見ればどれだけ強いインパクトを受けるか。」

 理屈はわかるけど、死んじゃってるんじゃ記憶も何も無いような…。

 同じ様に考えていたらしく、男子生徒から意見が出た。

 「でも、死んでたら記憶なんて出来ないですよね?」

 先生はそれに対してこう答えた。

 「普通の記憶なら脳に記憶されているわけだから、死んだら確かに消えるかも知れないが、死ぬほどの衝撃的なことや強い想いは、魂に記憶されるんじゃないか?魂がさっき言った生命に必要なエネルギーと同じだとするなら、エネルギーに何かしらの記録がされる事になるわけだ。」

 更に先生は話を続けた。

 「もし先生が考えている事が正しいとするなら、輪廻転生による生前や幽霊などの説明もできるし、サイコメトリーも可能になる。更にカメラやビデオにも、霊現象が記録されるのも説明できる事になる。熱や電気と同様のエネルギーであるなら、熱にしても電気にしても、物質は透過するし、滞留とか伝導する事が可能なのだから。」

 だとするなら、確かにいろいろな事の説明がつく。

 他の生徒も、興味津々で聞いているようだった。

 「とまあ、話が脱線したが、結局『死』はそのエネルギーが無くなってしまった状態で、『生』はエネルギーがある状態。ただ、エネルギーが出たり入ったりしても、エネルギー保存の法則に従って、消失する事はなく、何処かに何かしらの形で存在していると言える。それがたまたま、お前たちの両親が口では言えない恥ずかしい事をして、お前たちと言う形になった訳だ。」

 だから、下ネタ入れるなよ。

 周りも妙に盛り上がっている。

 「じゃあ、気分を取り直して授業を始めるぞ。教科書の37ページを開いて…。」

 相変わらず切り替えが早いな。

 でも、妙に気になる内容だった。

 (何処かに何かしらの形で存在している、か。)

 外の雨は、先程より激しくなっていた。

---------


 6時限目の授業も終わり、俺が帰り支度をしていると新谷が近づいて来て話しかけてきた。

 「尾崎君、今日はうちに来るよね?」

 そう言えば、今日は新谷の家に行く約束だった。

 しかし、外を見ると雨が降っていて、出来れば別の日にしたいと思っていた。

 「明日とかじゃ、駄目か?…雨も降ってるし。」

 新谷の家は、いつも使っている路線で途中下車したところから、歩いて10分程度の所だった。

 とは言え、わざわざ途中下車して雨の中を歩くのも嫌だし、行かないで済むならそれが良い。

 「う〜ん。」

 新谷は、いつもなら直ぐに諦めるか強引に誘ってくるのだが、今日は珍しく悩んでいた。

 1分程度が経過しただろうか。

 「やっぱり来てほしいな。」

 (まあ、仕方ないか。)

 「わかったよ。」

 渋々、新谷の家に行く事にした。

 …

 新谷の家に着くと、誰も居ないらしく電気が点いていなかったが、廊下脇にあるスイッチを押して明かりをつけた。

 新谷の部屋は、何度か来ているので知っているが、廊下から階段を登った2階にある。

 毎度の事だが、部屋に入るとそこはアニメのポスターやフィギアがズラリと並んでいて、正直引いてしまう。

 こんなオタクと付き合う様になったのは中学からなのだが、俺が好きなラノベを新谷が図書室で読んでいるのを見かけて声を掛けたのがキッカケだった。

 始めて遊びに来た時は、圧倒的な趣味の前に帰ろうかとも思ったのだが、本当に楽しそうにラノベやアニメなどの話をしてくるので、帰ってしまうのが可愛そうになってしまうのだった。

 (まあ、今日に関してはファインプレーだったので仕方ない。)

 「で、何で呼んだの?」

 俺はそう言いつつ、不意に嫌な空気が漂っているように感じたのだった。

 なんとも言えない違和感を感じていると、

 「ようやく見つけた…。」

 何処からか、少女の様な可愛らしい声が聞こえて来た。

 「こっちの世界に居たんだ…。」

 また声が聞こえた。

 同じ様な少女の声だが、別の声だと判った。

 キャハハ、ウフフ…。

 キャッキャッキャッ…。

 いつの間にか、そこかしこから多くの声が聞こえてきていた。

 姿形は見えないが、すぐ周りを囲まれている様だった。

 「新谷、新谷っ!これはどういう事だ!?」

 周りの状況に恐怖しながら、新谷に叫ぶように問いかけた。

 が、新谷を見るとうつろな目をしたまま、ゆらゆらと体を揺らしていた。

 直ぐに新谷は直立のまま横に倒れて、壁に頭を打ったようだったが、そのまま昏倒していた。

 新谷に近寄って見たが、意識を失ったままだった。

 異常な状況にパニックになりそうになったが、不思議と冷静に周りを見渡した。

 辺りには、光の様な物がスーッと通っていったり、飛び跳ねるような動きだったり、赤や緑、黄色や青の小さな光の粒が無数に存在していた。

 俺は直ぐにカバンを振り回し、その光の粒を追い払おうとしたが、光の粒は振り払われるどころか、揺らぐ様子すらなかった。

 「無駄だよー。」

 少女の声は、こちらの動きを見ても動じることがなく、バカにするように話しかけてきた。

 今度は部屋に飾ってあったフィギア達がカタカタと動き始めた。

 ギギ…グギギ…。

 不気味な音を立てながら無数のフィギア達が、俺に向かってきていた。

 「人形達が襲いに行くよぉ。ほらぁ、逃げてみなよぉ。」

 何十体のフィギア達が俺の周りに集まって来たかと囲うように綺麗に並んだ。

 「行っけぇ!」

 少女の声が号令をかけると、一斉に俺に飛びかかってきた。

 小さなフィギアとは言え、一斉に襲い掛かって来ると一気に恐怖が増した。

 「うわぁ。止めろぉ。」

 俺は恐怖に慄いて、叫び声を上げていた。

 襲い掛かってきたフィギア達を振り払おうと手をバタバタと振り回し必死になった。

 「痛っ!!」

 腕や足に強い痛みが走った。

 人形達を振り払いながら痛みのあった場所を見ると、カッターの刃で切り裂かれていた。

 切り裂かれた箇所から、血が出始めた。

 傷は浅いのか、大量ということは無いが、ズボンには十分な血のシミが広がった。

 腕からも血がたれて来ていて、指先にヌルッとした感触が広がった。

 「止めてくれぇ。」

 フィギアの一体を掴み壁に投げつけるが、直ぐに動き出してまた襲ってくる。

 体は何箇所か切られている様だったが、恐怖で痛覚が麻痺していた。

 今度は、コンセントのケーブルをハサミで切ったあと、俺の体に剥き出しの動線を触れさせた。

 「ぐぁ!!!」

 感じたことの無い痛みが、ケーブルの触れた箇所から全身に広がった。

 一瞬、意識が飛びそうになったが、ここで気を失ったら確実に殺されると思って何とか意識を保っていた。

 また、ケーブルを俺の体に触れさせようと、襲ってきた時だった。

 「止めろぉーーー!」

 襲ってきた人形に右手を向けて防ごうとした時だった。

 自分の体に不思議な感覚が襲われた。

 体の隅々から右手に向かって血液が凝縮するように向かっていき、手の平が熱くなるのを感じていた。

 俺に向かってきていたフィギアが急に動かなくなったかと思うと、ケーブルを持ったまま横に倒れたのだった。

 「こいつぅ、反撃して来たよぉ!?」

 (反撃?何もしていないぞ。)

 しかし、その手を自分の意志とは無関係に、動いているフィギアや光の粒に向けていた。

 すると、さっきは気が付かなかったのだが、薄っすらと光の粒子がチラついたかと思うと、空中に消失していった。

 (何だかよくわからないが、この力がこいつらに効果があるらしい。)

 体中が熱くなっているのが良くわかる。

 だが、今ならこいつらをやっつけられる。

 今度は意識を集中して辺りに向けて力を使った。

 いや〜。

 キャー。

 助けてぇー。

 死んじゃうよぉ。

 逃げようよ。

 さっさと逃げよう。

 周りから騒がしい声が無数に上がっていた。

 騒がしい少女の声はやがて静まっていき、動かなくなったフィギア達が散乱していた。

 俺の脇をすり抜けようとした光の粒を右手で捕まえると、光の粒は小さな妖精のような姿になった。

 逃げ出す為に俺の右手を抉じ開けようとしていたが力は無いらしく、藻掻いているだけだった。

 「なぜ、こんな事をするんだ。俺になんの恨みがあるんだ。」

 俺は手の中で藻掻いている小さな妖精に無駄だろうと思いつつも質問をした。

 すると、

 「あの人があなたを探して殺せって言ってたし、せっかくだから遊んでみようかと思って…。」

 (はあ、何だ、どういう事だ?)

 「あの人って誰だよ。」

 「知らない。怖い人…。逆らったら殺されちゃうもん。」

 (俺は殺されるほど恨まれる事なんてしてないぞ。唯の高校生に…、人違うじゃないのか?)

 よくよく考えてみれば、こんな不可思議なことが起きても冷静に考えているなんて、夢でも見ているのかと疑ったが、体中の痛みや右手に掴んでいる妖精の感触は紛れもない現実だった。

 どちらにしても許すつもりはなかった。

 先ほどと同じように右手に集中すると、フワッとなんとも言えない熱が右手を包んだ。

 「いやぁ、熱い、あつい、アツイ、焼けちゃうよ〜!………」

 暑いフライパンに垂らした水が一瞬で蒸発する様に、妖精は光の粒子になって空中に消えていった。

 俺は、手の平を広げて見てみたが、何も無くなっていた。

 ふぅっと、意識が遠くなって行った。

---------


 「…尾崎君、尾崎君、目を冷ましてよ。」

 薄っすらと目を開けると、新谷が俺の体を揺すって起こそうとしていた。

 体中が痛い。

 ゆっくりと手を上げて目が冷めたことを新谷に伝えようとした。

 「良かった。死んだのかと思ったよ。」

 見れば涙やら鼻水やらでぐしょぐしょになった顔が俺を覗き込んでいた。

 体中のそこかしこに痛みがあるが、新谷に「大丈夫だよ。」と伝えた。

 しばらく横たわったままだったが、少し意識がハッキリしてくると、体を起こして周りを見渡した。

 散乱したフィギア達。

 自分の腕や足にいくつかの血のシミがあった。

 (夢じゃなかったんだな。)

 それから、新谷にこれまでの状況を話していた。

 どうも、新谷は学校から帰る頃から記憶が無いらしい。

 あの妖精たちに操られてたのだろうか。

 落ち着いて恐怖がなくなったからなのか、体中の痛みが激しくなってきた。

 傷口を見るとそれ程深くはないようだが、数えると7箇所も切られていた。

 あと、剥き出しのケーブルを当てられた場所は黒く焼け焦げていた。

 その時の痛みは思い出しただけでも、気がおかしくなりそうな程の恐怖が込み上げてきた。

 思わず新谷に話をしてしまったが、おかしくなったとか思われないだろうか。

 見ると、部屋に散乱したフィギア達を見て、意気消沈してそれどころでは無かった様だった。

 その後帰ろうとしたのだが、新谷が一人では怖いからと、母親が帰ってくるまで一緒に居ることなった。

 新谷の母親には見つからずに済んだのだが、結局、俺が家についたのは夜の9時を過ぎていた。

---------


4話目です。

急展開な感じになってしまいました。

これまでは学園での不思議な出来事であったのが、明らかにファンタジックになってしまいました。

しかも、主人公の尾崎が使った不思議な力の正体は?

まだまだ話は続けますが、文才がないのが相まって、毎回苦労しています。

なるべく脈絡の無いような展開にはしたくないのですが、これからどうなる事やら。

頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ