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Fiction  作者: 神門志御
2/6

殺人事件

■あらすじ

私立高校2年生の尾崎健一は、クラスメートの中澤、新谷とともに、地震の後、突然の巨大アリの大群に襲われそうになった。

同じ学校の女子剣道部の藤井玲奈の猛攻で、無事危機を脱することができた。

安堵したものの、あまりに信じられない出来事に…。


 あの後は特に異変もなく、腹部に怪我を負った生徒は、誰かが呼んだ救急車に運ばれ病院に行ったようだった。

 俺、中澤、新谷と黒アリに応戦していた女子生徒、藤井玲奈ふじい れいなと言うらしいが、その他何人かの人は、今警察署に来ていた。

 「で?」

 目の前の風格のある髭面のおじさん(刑事?)が、俺らに向かって事情聴取とでも言うのだろうか、状況を聞いてきた。

 「で、地震のあと、体長1m程もある巨大な黒アリが、地面から這い出て襲ってきた…、と。それも、何十匹も…。」

 その刑事?は、今この場にいる中で一番年が上らしい男性に向かって話し掛けていた。

 「お名前は、賀川…、さんでしたっけ。年齢は…、29歳で会社員と…。」

 「ええ、そうです。」

 賀川さんと言う人は、ボードを見ながら不躾に質問する刑事?さんの態度に、少々ムッとしながら答えていた。

 他の人たちは押し黙っている。

 「まず、体長1mの黒アリなんていないよね。そもそも、地震なんてなかったぞ。」

 「そんなはず、無いだろぉ。」

 中澤が刑事?さんの物言いを、間髪入れずに否定して、

 「そうだよ、地震はともかく、学校の門のところに…、その剣道女子がブチのめしたアリンコの死骸があっただろぅ!」

 中澤が興奮したように、刑事?さんにまくし立てた。

 (気持ちはわかるけど、ガラが悪くなってるぞ。)

 などと心の中でツッコミを入れていたが、

 「その事なんだが…。」

 と刑事さんが切り返す。

 「他の目撃証言でも、同様のことは聞いているんだが、…彼女が使ったであろう木刀も竹刀も、調べた限り、何か硬いものを殴らなければ、こんな風にはならないと聞いていてな…。」

 刑事さんは困ったように頭をひと掻きすると、

 「そのアリンコの死骸が見当たんないんだよ。」

 (…エッ?)

 「そんな筈無いだろ!?」「そんな筈ないわ!?」

 中澤も藤井さんもハモる様に驚きの声を上げていた。

 俺も信じられず、思わず険しい顔をしてしまった。実際、大型犬ぐらいあった、あの黒アリの死骸が見つからない訳がない。

 もしかして、実は生きてていつの間にか逃げてしまったとか…、いや、確かに死んでいたと思う。

 しかし、

 「あの後、実は黒アリは生きてて逃げたとか?」

 誰に対してでもなく、疑問を思わず口に出してしまっていた。

 「そうかとも考えたのだが、その死骸があっただろう場所の周辺を探してみたんだが…、それだけ滅多殴りしたら破片や体液ぐらい、普通は残っているもんだが、特にそのような物は見つけられなかったし…。」

 続けて、

 「こんな物が落ちていたくらいだった。」

 と、徐にジャケットのポケットから、一枚の何かの写真を取り出した。

 「石のようなビー玉の様な、見た目は綺麗なんだが、よく分からないものが落ちていてな、…今調べているとこなんだが…、誰かの持ち物かも知れないし…。」

 写真には、(大きさは判断つかないが)虹色に光るほぼ球体の何かが写っていた。

 何となく見覚えが無くもないと思ったが、声に出しては言わなかった。

---------


 ドアが「ガチャ」と開いて、別の刑事が部屋に入ってきた。

 「川上さん、ちょっと…。」

そう言って、川上さんと呼ばれた、先程から俺らと話をしていた刑事が、部屋に入ってきた刑事と共に部屋を出た。

 ドアの前で話しているらしく、ドア越しに川上さんと呼ばれた刑事の声がわずかに聞こえてきた。

 「…こんな時にか…、何?、…」

 話の内容は分からなかったが、緊張感のある話をしているのは何となくわかった。

 程なくして、再びドアが開いて、川上と呼ばれた刑事が入ってきた。

 「えー、皆さんご協力いただきありがとうございました。とりあえず状況は分かりましたので、お引き取りいただいて結構です。後はこちらの者が出口まで案内しますので、お帰りください。」

 ぶっきらぼうに、そう俺らに話をすると、「こちらです」と隣にいた刑事が案内した。

 「そうそう。お腹に怪我していた生徒は特に命に別状はないらしいぞ。数日は病院らしいが…。」

 とりあえず、あの生徒が無事で良かった。

 警察署を出て時計を見ると既に午後2時を過ぎていた。

 「お腹空いた〜。何処か食べに行かない?」

 ラノベオタクの2Dマニアな新谷が、お腹を擦りながら、俺と中澤を誘ってきた。

 「なあ、藤井さんだっけ?一緒にどう?」

 一人だけ立ち去ろうとしていた藤井さんに、ちょっと声を掛けてみた。

 巨大な黒アリに立ち向かう彼女は、正直少々引いたけど、おかげで助かったわけだし、良く見れば、まあまあ可愛い。

 下心がある訳じゃないけど、昼飯ぐらい誘ったってバチは当たらないと思う。

 「そうね。どうせ学校行っても、わあわあ騒がれるだけでしょうし。良いわよ。」

 (よっしッ)

 「そう言えばさぁ…。」

 新谷が何かを思い出した様に、不意に立ち止まって話しかけてきた。

 「何だよ、腹が空いていたんじゃないのか?」

 中澤が茶化すように返すと、

 「あの写真に写ってたものって、もしかして魔石なんじゃないの?」

 突然の突拍子もない発言に、一瞬皆が凍りついたように止まった。流石の中澤も返す言葉に困っていた様だが、すぐさま、

 「そんなわけ無いだろ。」

 と、突っ込んだ。

 「だってさ、ラノベとかでモンスターとか倒すと出てくるじゃないか。今朝の巨大な蟻だって、言ってしまえばジャイアント・アントでしょ。モンスターだよ。」

 いつになく興奮して、中澤のツッコミもスルーしていた。

 新谷の奴、ラノベの見過ぎだろう。

 代替、アレは魔石ではなくて…。

 (あれ?)

 ふと、自分が考えていた事に疑問を持っていた。

 魔石ではなくて…、その先は「生錬石と言うものだ」と答えは出ていたのだが、そもそも生錬石なんて物をなんで知っているのだろうか。

 生連石とは、生物が寿命を迎えずに死を迎えたときに、残りの生命を凝縮してこの世に残す事で発生するものだ。

 俺は、自分に対して自分でない様な感覚に襲われていた。

 「どうしたの?」

 俺の様子に気がついた藤井さんが、心配そうに声を掛けてきた。

 「あ、ごめん。何でもないよ。」

 何でもないわけでは無いのだが、考えていた事を口に出したところで、答えが見つかるわけでもない。

 「ふ〜ん?なら良いけど。とりあえず、こんな所で話をしていても仕方ないから、ご飯を食べに行こうよ。」

 「そうだよ、ケイが話すと止まらなくなるから、チャッチャと行こうぜ。」

 藤井さんの提案に、中澤も賛同して、みんなで駅の方に歩き始めていた。

---------


 食事をした後、みんなはそれぞれ自宅に帰って行った。

 俺も特に寄り道することも無く、いつもの電車で自宅に向かっていた。

 俺の家は、金持ちとは言わないが、俺を私立高校に入学させてくれたり、家も一軒家だし、貧乏という事もないのだと思う。

 そんな家に着くと、何故か鍵が開いていた。

 (なんでだ?まだ、誰も帰って来ない筈なのに…。)

 いつもと違う状況に、今朝の学校での事が重なって、強い警戒心を抱いていた。

 (母さんが、鍵をかけ忘れたのか?)

 母さんは、近くのスーパーにパートとして働きに行っている。

 朝家を出るのは俺よりも遅いため、鍵をかけ忘れたなら母さんしかありえない。

 (でも、もし違ったら…。)

 強盗か何かで、入った途端に襲われたりしたら、今日は今までで最悪な日になってしまったと、悪い方向へと想像が偏っていった。

 (警察に連絡した方が良いか?)

 すると、「ガチャ」っとドアが自然に開いた。

 「うわぁ。」

 想像に耽っていた為か、思わず大げさに驚いて、ドアから急いで後退った。

 すると、ドアの裏側から、母さんがぬっと顔を出して言った。

 「何?今の声?」

 「母さんこそ、何で居るんだよ。」

 「何よ。居たらいけないの?」

 「そう言う意味じゃないけど、急にドアを開けたら驚くだろ。」

 「今日は少し早く上がれたのよ。」

 ハッと、思い出した様に、急に心配そうな顔で、

 「それより、体は大丈夫なの?怪我とか無い?」

 母さんは俺の体を触り始めた。

 「何すんだよ。急に…」

 一瞬、何の事か分からなかったが

 「だって、いま留守電聞いたら、警察の人の声が入ってて、今朝学校で事件に巻き込まれたって…。」

 ああ、その事か。

 どうせ説明しても信じてもらえないだろうし、適当に話しておくか。

 「ああ、その事なら、特に何も無かったよ。たまたま、学校の前で他の生徒に、何だかの手配犯だったらしいけど、そいつが絡んで来て、その生徒が殴られたんだよ。」

 我ながら適当すぎる設定だな。

 「で、中澤と新谷と、何人かがその場をたまたま目撃していたから、警察で事情を聞かれただけだよ。」

 「そう。何も無かったんなら良いけど。」

 ホッと安心したらしく、俺を弄るの手を止めた。

 「その生徒さんは大丈夫だったの?」

 「ああ、2〜3日は病院にいるらしいけど、特に問題ないって。」

 まあ、本当の事だ。

 実際は、腹を巨大な黒アリのあの大きな顎で噛まれて結構な血が出てたみたいだけど。近場で見なくて良かったな。

 そう言えば、中澤の奴、良く平気だったな。

 まあ、あいつは正義感ありそうだし…。

 などと、思い出したくもない事を、思い出していた。

 「それより、家に入りなさいよ。」

 (いや、玄関の外に立たせていたのは母さんなんだが…、まあ良いか。)

 手に持っていたバッグを背中に背負い直して、母さんの後を追うように、俺は玄関に入った。

 リビングにあるテーブルの椅子に座って、何気なくテレビのスイッチをリモコンでつけた。

 ちょうど夕方のニュースが流れていた。

 何気なく時間を見ると、いつの間にか18時を過ぎていた。

 (もう、こんな時間なんだ…。)

 ずいぶんと長い時間、中澤達と一緒に話してたんだな。

 ふと藤井さんの事を思い出していた。

 ちょっと性格はキツそうだけど(木刀で何度もアリを殴っていたのは凄かったし)、まあ、可愛いかな。

 妄想に耽っていると、テレビのニュースで、

 「次のニュースです。本日午後4時頃、桜上水東署の川上巡査部長34歳が、杉並区和田堀公園の公衆トイレで、何者かに殺害されている所を、たまたま通りかかった近くの住人が発見しました。死因は…。」

 (えっ!?何で?)

 今日、俺らを事情聴取した刑事だった。

---------


2話目も無事書き上げることが出来ました。

やはり、慣れない事をするのは、とても疲れます。

しかしながら、どうやったら書きたいストーリーに沿って盛り上げられるか、どうやったら読者が興味を持ってくれるか、あれやこれやと考えるのはとても楽しいです。

3話目も頑張って書きたいと思います。

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