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聞けなかった想い  作者: よう
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(4) 将来の夢

高校生活もとうとう三年生になり、みんな志望校目指して勉強している頃。

私たちはまだなんとなく、志望校が決めきれていませんでした。

そろそろ美術部の活動も引退しないとね、なんて言いながら絵を描いている私を見ていた理恵は言い出しました。


「大学もさ、典子と一緒のとこに行けたらいいなぁ。」

「うーん、それも面白そうだねぇ…。」


私の答えを聞いて、理恵は嬉しそうに微笑みました。


「大学行ってもさ、典子と一緒に過ごせたらな、って思ってたんだ。」


そう言いながら私の腕に寄りかかってくる彼女の肩が私に触れた時、いつも以上に体温を感じました。


理恵とはこれからも親しい友達でいたいと思うけど…この子はなんでこんなに私と一緒に居たいと思ってくれるんだろう?


そんなことを考えていたら、いつの間にか絵を描く手が止まっていました。



ところが、そのほんの少し後から、私の思いが少しずつ変わって来ます。


二年の時に応募していた作品がコンテストで賞をとり、理恵や先生だけではなく、多くの人から評価もされる経験をしました。

自分の絵に手ごたえを感じ始めた私は、趣味としてではなく、絵を仕事にする事を意識し始めたのです。

どんな形でもいい、絵に関わって生きてみたい。

そのためには、好き勝手に描いているだけではなく、美大に進んできちんと絵を学んでみたいと思うようになって来ました。


ちょっと前に、理恵と一緒の学校に行く話をしたのを思い出し、私はある放課後、若干遠慮がちに彼女にその事を伝えました。


「え、典子、美大に行きたいの?」


きっと、同じ大学に行けると思っていたのが覆る事は面白くないだろう、と彼女の表情が曇る事を想像していましたが、拍子抜けする程明るい声が返ってきました。


「いいんじゃない?典子の描く絵はいいなっていつも思ってたもん、そう言う事を本気でやってみるってのもいいと思う!」

「でもさ、一緒の学校行こう、って話してたじゃない?」

「いいよ、そんなの!そりゃあさ、典子と一緒に学校通って、授業受けて、ってのも楽しいだろうなって思うけど、将来の話だもん、真剣に考えないと。」


何で一緒に行けないの、とか約束と違うじゃん、とか言われると思っていた私はホッとしました。


「いいの?美大だと結構授業も多そうだし、一緒に遊ぶ時間減っちゃうかも知れないけど…。」

「でも、将来は絵の関係で働いてみたいんでしょ?そのためには仕方ないじゃん。実はさ、私もやってみたい事あってね。」

「やってみたいこと?」

「うん、通訳の仕事してみたいなって。英語は結構好きだったんだけど、もっと喋れるようになったら、面白いだろうなって。」


理恵が英語が好き、と言うのは初めて聞きました。むしろ、授業中はあまり楽しく無さそうだし、なんなら、居眠りしているところを見かけたこともあります。


「英語、好きなんだ。授業中の様子考えると、なんかそれって意外かも…。」

「いやそれ失礼でしょ?私だってやってみたい事、あるんだからね。」


拗ねた顔でふくれている理恵がなんだか面白くて、笑ってしまいました。


「そっか、私は英語苦手だから、理恵に教えてもらおうっと!それで一緒に海外旅行に行こうよ?」

「いいねぇ!海外旅行、行こう行こう!」


嬉しそうにはしゃいでいる理恵を見て、高校生の私たちが、これからどんな道を歩んでいくのか、ほんの少し期待と不安を感じるようになってきていました。

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