セロお坊ちゃまの優雅な一日
やぁみんな、いい朝だね。
窓から吹き込む爽やかな風に、ちょっとだけ眩しい太陽。
ベビーラックの柵ごしに見える外の景色はとても色鮮やかだ。
清々しく目覚めるのにこれほど適した環境はそうそうない。
今日の空模様は快晴、穏やかに過ごすことができそうだ。
さて、それじゃあ今日も素晴らしい一日にしようじゃないか。
・・・・・・
おれの一日は、まずおっぱいから始まる。
朝起きると大抵いつも腹ペコなのだ。
「・・・あう、ううう・・・おんぎゃあああああ!!」
お腹がすいたときは泣き声でナースコールよろしくイリシアを呼ぶ。
こちらの世界にやってきたばかりの頃は、なんだか申し訳なくて腹が減っても泣くのを我慢していたけど、
ある日ガーベラが「セロ坊ちゃんはちっとも泣かないのですが、それが逆に心配です」と言っていたのを聞いてからは泣くのも仕事だと思って我慢はしないようにした。
おれが起きだすころにはもう家族全員が起きだしているので遠慮なく泣き叫ぶことができる。
「あらあら、セロお腹すいたの?」
おれが泣き出すと、台所で洗い物をしていたイリシアはすぐに駆け付けてきてくれる。
どうやら朝ごはんが終わったばかりのようだ。ということはここはリビングか。
エプロンの裾で手を拭きつつやってきたイリシアに優しく抱きかかえられソファへと移動する。
「はーい、ご飯ですよ~」
そういうとイリシアは、エプロンを脱ぎ服のボタンを外して少しだけはだけさせた。
綺麗な曲線を描いた豊かな双丘が露わになる。片方だけでおれの顔と同じくらいの大きさがあるから圧迫感がすごい。
イリシアはおれの頭を起こして飲みやすい位置で支えてくれる。おかげで肌色の暖かいふくらみがすぐ近くまで迫っている。わーお、すごいながめ。
視線を上げるとおれを眺めているイリシアと目が合った。
にこり、うなずきながら微笑みかけてくる。
・・・よし、それじゃ朝ごはんにするとしましょうか。
いただきます!
・・・・・・
ご飯の時間が終わると、次は夜の間で湿りきったおむつの交換だ。
おむつはおれが気持ち悪くなって泣き出す前にイリシアかガーベラが気づいて換えてくれる。
気づいていなかったときは、ぐずってアピールだ。そうすればすぐにささっと交換してくれる。
最初はおむつに垂れ流すことにやはり抵抗があったがすぐに慣れた。
他に方法もなかったしね。慣れてしまえば楽なものだ。むしろトイレに行かずに済ませられる分こっちのほうが良いまである。
おれがつけているのはガーベラが縫った(らしい)布おむつだ。
パ◯パースじゃなくて大丈夫か?と思ったけど、吸水性は案外悪くない。
思いっきりぶっ放してもしっかりと受け止めてくれている。生地が上質だからか、感覚としては分厚いパンツをはいてるといった感じで、違和感や不快感はあまりなかった。流石ガーベラ、いい仕事をするね。
あ、ちなみに昔おれが日本のほうで履いてたおむつはメ○ーズだったらしいです(母親談)。
今日のおむつ交換はガーベラの番だ。
おれをマットの上に寝かせて、慣れた手つきでおむつを取り替える。
ささっと履いていたおむつを外し、湿らせた柔らかいハンカチでおれの股間を拭きとる。
なんかくすぐったいな・・。
拭きとったハンカチを汚れたオムツの中にくるみ、新しいおむつを手早く装着させたら完了だ。
交換を終えたおれはのびをするように体を左右に揺らす。
そんなおれを、おむつを片付けながらガーベラが見つめている。
「坊ちゃんはほんとに大人しい子ですね・・・。この仕事ももう長いですが、こんな子は初めてです。」
ふと独りごとのようにガーベラが呟いた。
そして、小さく笑みを浮かべながらおれの頭をさらりと撫でた。
・・・やっぱりおれはこのお姉さんが大好きです。
洗面所へ向かう彼女の背中を眺めながら、そんなことを思った。
・・・・・・
そんなこんなで一通りの日課を終え、おれに自由な時間が訪れる。
赤ちゃんというのは基本的になにをしようと自由だ。しかし一日の大半は睡眠へと費やされるため、暇な時というのは意外と貴重だったりする。
今までならこの時間は言語勉強の時間なんだけど・・・
最近、おれの日常に新たな日課が加わった。
ハイハイだ。ハイハイができるようになったんだ。
きっかけはふとしたものだった。たまたま地面に降ろされたとき、出来るかどうか試してみたところあっさりとできることが判明した。
でも、これはとても大きな進化だ。
これまでずっと揺りかごの中だったのが、自力で移動する手段を手に入れたことによっていろんなところに行けるようになったんだから。
これでもっと多くのことを知ることができる。
ひとまず当面の目標はこの家を隅々まで探検することだな。
この世界で生きていくうえで重要な拠点となる場所だからね、早めに内部を把握しておくに越したことはない。
よし、決めたぞ。
今日は起きている間、ずっと探索をすることにしよう。
というわけで、さっそく出発だ!
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