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 華やかなパレードは滞りなく終わり、帝は花束を受け取って城へ戻った。通りには花びらが散り、赤い旗と影が踊っている。露店が並び、人々は歌う。

 疲れた人々が小休止と飯屋酒場に集い、一時の静寂からざわめきと笑いが生まれる。

「おう、見せて貰ってもいいかい?」

「ああ、あんたか。どうだい調子は」

「おや、知ってる顔だったかな」

「いや、あんたは知らんだろうな。だが妙に憶えててな。確かあの、なんだったか。飯屋で話してるのを見た。この町の堅気と砕けてるってことは旅商人だろ? あんた」

「ああ、どの飯屋かはわからんけどもね」

「なんか美味いもん売ってるのかい?」

「そうだな。お近づきにどうだ。土産に貰ったんだがまだ温かい。腸詰めは嫌いか?」

 シャジーチは店主に炙った腸詰めを挟んだパンを差し出した。

「俺も食いたいから全部はやれんが」

「ははは、そこまで食い意地はっちゃいねえよ。カミさんの弁当もあるしな」

 店主は立ち上がってパンを受け取ろうと手を伸ばした。

「しかし、こいつぁあんたらの昼飯じゃねえのかい?」

 店主は三人を見て聞いた。

「ああ、さっき食べてきたんだ。俺の分だけしかやれねえ。そこの男は小食でね。味見くらいはさせてくれるだろうよ」

 シャジーチはなあと男に振った。しかし男は表情なく穏やかに頷くだけだった。

「おまけに無口でな。おう、ちょっと周り見て歩いてもいいぞ。三人揃ってな。日が赤くなるまでには宿に帰っとけよ」

 そう言ってシャジーチはスーウェンに金を分けて渡した。大仰な買い物はできないが少しばかり食べ歩くことはできるだろう。

「ミハージィ、はぐれるなよ。二人とも頼むぞ」

 二人は頷き、ミハージィは二人の間で手を繋いで喜びながら歩いて行った。スーウェンとミハージィはパンを受け取ったが男は首を横に振って二人に続いた。

「おう、悪かった。これ以上冷めないうちに」

 店主がパンを受け取って半分ちぎって口にする。シャジーチもそれに続いた。塩と肉と油。パンが程良く落ち着いた味にしている。数がないのが惜しまれる。もう一袋買っておけばよかった。

「こりゃあ、美味いな。その袋貰えるかい?」

「この紙袋をか?」

「ああ。こりゃあカミさんにも食わせてやんねえとな」

 店主はそう言って紙袋を受け取り丁寧にパンを包んで畳んだ。弁当箱にはパンと漬け物、燻製とゆでたトウモロコシが入っていたようだ。

「どこの店でいくらなんだ?」

「向こうの角にあるヒーマーンって飯屋なんだが、値段はどうだろうな」

「高いのか?」

「いや、俺が届けた腸詰めなんだがおまけみたいなもんでね。数がねえから言ってもあるかどうかわからん。高いと残るから半分にして安くって話をしたんだ」

 店主は大袈裟に落ち込んだような振りをした。

「かー、そりゃあ今から行っても残ってねえなぁ。どこで仕入れたか教えてくんねえか」「そいつはできねぇな」

「はー、そうだよなぁ。こんだけ美味けりゃなあ」

 店主はそう言いながらも笑顔だった。普段なら妻にこんな気の利いた買い物をしてやることもなく、喜ぶ顔を見るのも苦労するのだから。偶にこういう出会いがあると良縁を感じてわけもなく嬉しくなる。

「この壺とか箱はどういう客が買うんだ?」

「ああ、そのへんはおまけさ。目の利かねえやつに売りつけたりな」

「なるほど。厄除けか」

「そういうこった。くだらねぇもんに高い値札がついてりゃ貧乏人は帰っていくし目の利く客はよくよく見て他のもんには割合いの値段がついてることに気付く。あんたみたいに話しかけてくることもまあ、多くはないがそれなりにある」

「買ってくれれば儲けもんか」

 店主は顔を寄せて小声で付け加える。

「まあ、やんごとなき身分の方々には一言添えるけどな。これが結構、値札しか見ねえのが多くてね」

「そりゃ一大事だな」

「だろ? 一度なんざ成金相手に騙りだって騒ぎになったこともあってな」

「あんたがか?」

「いやいや、向こうの通りらしいんだがよ。ま、この街じゃそういう店は少なくないってこったな。客が多いから一々貧乏人の値切りに付き合っちゃいられねえ」

「この皿」

 シャジーチは話しながらも品に目を走らせて惹かれた皿を指差した。

「お、あんた分かるねぇ。そいつは古かあないがなかなか値打ちもんだぜ。巡りの金持ちからの取り置きさ。倍の値段出されたら売ってもいいってことになってんだ」

「そうか」

 シャジーチは顔を寄せてよくよく見た。スーウェンの皿もこれに近い出来だ。文様こそ違うが独創的とは言い難い。無難に良い。これを良しとするならスーウェンの皿も良い物として扱って貰えるだろう。それとも身内びいきが過ぎるだろうか。

「見て欲しいものがあるんだが」

「ん? なんだ?」

「この皿なんだが」

そう言ってシャジーチは背負った袋から皿の箱を一枚選んで取り出し、店主に手渡した。

「こりゃあ……」

 店主は恐る恐る触れ、底を眺めて薬指で優しく触れる。日にかざし、最後に薬指の爪でチンと弾いた。

「あんた、これどこで……?」

「卸してるんだ」

「……いくらだ?」

 店主は表情を消して聞いた。譲れないやりとり、仲が良かろうと悪かろうと商いとはそういうものだ。縁を繋げるかは懐次第。

「今でいいのか?」

「ああ、善は急げだからな」

 そう言って店主は商談中の札を立てた。


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