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夏の樹  作者: 粥
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四十五

少し大人になった藍那について、ちょっとずつ語っていこう。

藍那の交友範囲は極めて小さく、学校で喋る者は居ないに等しい。

そんな事を藍那に言った所、


「失礼な、一人はいる」


と、言ってきたのでご紹介頂いた。


名前は遠山(とおやま) 露華(ろか)

家庭的で気立てが良く、思いやりがあって何より巨乳。

そんな露華と藍那は中学からの仲で、高校生なった今でも藍那の唯一の女友だちである。と、同時に藍那のセクハラの的になっている。


「藍那、次移動教室だよ。一緒に行こ?」

「んー」


藍那と露華は教材を持って、別の教室へ向かった。

基本的に二人でいることの多いこの二人。露華は部活をやっていて、その部活仲間とご飯を食べたり、一緒に帰ったりと忙しい身のせいでいつも一緒というわけでもないのだ。


「そうだ藍那、今日一緒に...あ、今日部活だ...」

「なに?」

「部活じゃなかったら、クレープ食べに行こうって言いたかったんだけど...」

「ふーん、別に部活終わってからでも良いよ。まぁ店がやってたらの話だけど」

「ほんとっ!?全然やってるよ!なんかね、美味しいって有名なんだ〜」

「へー」

「もしかして興味ない?」

「無いけど、露華が行きたいなら付き合うよ」

「やたぁー!」


藍那は露華の部活が終わるまで時間を潰す事になった。

教室に一人残って携帯をいじっていると、幼馴染の凛がやってきた。


「藍那ちゃん、どして残ってるの?」

「露華と街中のクレープ食べに行くから」

「へぇ〜美味しいの?」

「らしいけど。てか、あんた今日バイトは?」

「無いよ〜お休み。そっか〜二人ともクレープ食べに行くのかぁ」


凛は藍那をチラチラ見て、誘って欲しそうにこちらを見ている。


凛は緩いパーマを当てたような天パで、身体中から放出されるフワフワした雰囲気と非常にマッチです!していた。

タレ目で、涙ボクロが左目にあって、重めの前髪、袖で口元を隠す癖があって、特徴を数えだすとキリがない。

とにかく、とても美形である。それだけは分かって欲しい。

実は女子から結構人気があるようだが、本人は藍那しか見ていないのでその事を知らない。


「何?あんたも行きたいの?」

「うん!」

「好きにすれば?つか、露華が良いって言ったらね」

「やった!うれしぃ!ありがと藍那ちゃん!」

「くっ付くな鬱陶しい!」


凛は恥ずかしげもなく藍那の首に手を回して抱きついた。

ついでに藍那にだけ距離が近いのは、本人は知らない。藍那は凛をそういう生き物だと思って接している為、実はそういった貞操観念的なものはゆるゆるだったりする。


「それで、藍那ちゃんは何を見てるの?」

「クレープ屋の場所。人混みの中を迷いながら歩きたく無いし」

「用意周到だね。その後用事でもあるの?」

「無い」

「そか、じゃあ一緒に帰ろーね」

「はいはい」


すると、急に凛が藍那の背後に回って藍那の髪の毛を弄り始めた。


「藍那ちゃんの髪の毛って枝毛無いし、ツヤツヤしてるし、綺麗で、良い匂いがして好き」

「てんこ盛りだな、私の髪の毛は」

「もちろん藍那ちゃん自身も好きだよ」

「聞いてねぇ〜」

「染めたりしないでね?」

「今んとこする予定は無いかな〜」


三つ編みを作り終えて、少しだけ満足そうな凛は、藍那に後ろから抱きついた。


「重いんだけど」

「我慢して欲しいところ」

「何で私が我慢せにゃいかんのじゃ、離れろ」

「ぶぅ〜」


二人は机を挟んで向かい合いながら座って時間を潰していると、部活を終えた露華が帰ってきた。


「お待たせ〜!ってアレ?凛もいる〜どして?」

「一緒に行きたいんだってさ」

「ん〜」

「そっか、まぁ多い方が楽しいと思うし良いんだけど...。じゃあ行こっか」


三人は夕方と夜の間の街中を歓談しながら歩いていく。

露華は余程楽しみだったのか道中その話しかしなかった。

露華と藍那が二人並んで前を歩き、その後ろを凛が歩いていく。


(意外と同年代も悪酔いしてる大人もいないか)


凛が付いてきた本当の理由はクレープが食べたかったのではなく、藍那と露華が悪い人たちに連れて行かれないかとかそういう心配の元でやって来たらしい。

常に周りを警戒していて、いつものフワフワした凛はそこにはいなかった。

すると、急に藍那が振り向いて来たので、凛は慌てていつものニコニコした表情に戻した。


「................」

「何?どうかした?藍那ちゃん」

「...ちゃんと着いて来てるか心配しただけ。逸れんなよ」

「ん。ありがと、藍那ちゃん」


凛は藍那の頭を撫でた。藍那はそれには一切気にする様子もなく、無表情で歩いていく。

だが、それを見ていた露華はそれについて言及して来た。


「ね、ねぇ!今のって良いの!?藍那的には屁でも無いの?」

「何が?」

「今の頭なでなで!」

「別に?ただ頭撫でただけじゃん」

「えぇ...そっかぁ〜。そういうアレなんだぁ〜」

「何?アレって」

「い〜やぁ〜?ただ、凛は苦労するし、藍那も凛みたいな対応を他の男子に取っちゃダメだよって話」

「しないよ、するわけないじゃん」

「あら意外。藍那ってそこら辺ズボラなのかと」

「失礼な。凛に許してるのは、あいつが幼馴染だからってだけだし」

(ホントにそれだけかなぁ〜?何て漫画にありがちな伏線を貼っておく)


三人はクレープ屋に着いたのだが、本日定休日だったらしく無駄足感を味わいつつ、次の機会にまた来ることにした。


「ね、用意周到なんかじゃなかったでしょ?」

「人混みは避けられたから結果オーライ?」

「休みって知ってたらそもそも来ないわ」

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