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夏の樹  作者: 粥
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四十二

夏休みも後もう少しで終わるという頃、宗介はいつものように秋穂の家にご飯を作りに来た。


「おいーっす!お邪魔しまーす」

「........」


相変わらず薄着で出迎えてくる秋穂にも流石に慣れて動じなくなって来た宗介は、来て早々冷蔵庫の中身を確認した。


「相変わらず何もねぇな〜自炊出来なきゃ将来ヤベェぞお前」

「宗介がいる」

「流石に大人んなってもここ来て料理は出来ねぇよ。嫁さんだって出来るだろうしな」

「........」


秋穂は宗介のその言葉に落ち込む反応を見せた。

ソファの上で体育座りをして膝に顔を突っ伏す。


(お嫁さん...。いつか宗介にも彼女が出来る...)


そう考えると自分と宗介の間にあるこの関係は邪魔になる。もし仮に居るとすればよくは思わない筈だ。

そう考えると、甘えてばかりはいられないのかも知れない。


「やだ...」

「え、ハンバーグ嫌か?そっか暑かったもんなぁ今日。じゃあ冷やし中華とか素麺にするか?」

「そっちじゃない、ハンバーグで良い」

「ん?そうか?まぁいいなら良いんだけど」


宗介はスーパーに行って夕飯の材料を買いに行った。今夜は秋穂は家でお留守番をすることにした。ついでにアイスは買って来るよう頼んである。


ソファに寝転がり、テレビをつける。

夜のバラエティ番組のMCの陽気な声が、今日はやけに寂しさを増幅させる。


「...宗介、早く帰ってこないかな...」


秋穂はそう小さく呟いた。

まだ家を出て10分も経ってないのに、もうそんな事を言い始めている。今夜の秋穂はいつも以上に寂しがりになっているようだ。



しばらくしてようやく宗介が帰って来た。

ソファから飛び起きて玄関の方へ走っていく。すると、ビニールを持った宗介が靴を脱いでいる所に出くわした。

いつもならゆっくり歩いて迎えてくる秋穂が今日は走って来たので宗介も少し驚いていた。


「ん?どした?ゴキブリでも出たか?」

「........(フリフリ)。待ってた」

「そか。...そんなお腹空いてたんなら菓子の一袋くらい食べてよかったんだぞ?」

「........(フリフリ)」


宗介はキッチンでハンバーグを作っていると、秋穂が周りをチョロチョロし始めた。


「〜〜!あぶねぇからリビングでテレビ見てろって」

「........(フリフリ)」

「何?手伝いてぇの?」

「........?」

「え?マジ何でこっち来たん?」


宗介は包丁も使っているので正直危ないから秋穂には離れてほしいのだが、秋穂は頑なに宗介の周りをうろちょろしている。というか、某RPGの様に後ろにピッタリくっついて付いてくる。

仕方がないので、宗介は秋穂でも出来る様な簡単なお手伝いを頼んだ。


「秋穂、このハンバーグのタネを捏ねてて欲しいんだけど出来っか?」

「........(コクリ)」

「じゃ、よろしく」


秋穂は手を洗ってハンバーグのタネを捏ね始めた。

タネが冷たかったのか感触に驚いたのか一瞬体をビクッとさせた。


「ちゃんと捏ねろよ」

「........(コクリ)」


秋穂が捏ねている間に宗介はサラダや味噌汁、お米を炊いたりと作業を進めていった。


十分捏ねたところで、宗介は秋穂の捏ねたタネの空気を抜いて、油を引いたフライパンで焼き始めた。


「うまく出来た?」

「おう、出来てるぜ」

「真ん中凹んでる」

「こうすると火の通りが良くなんだよ。わざとだから気にすんな」


油が跳ねたりして危ないので今度こそリビングに返そうとしたのだが、秋穂はまだ宗介の近くに居ようとした。


(なんで今日こいつこんな近くに居たがんだ?)


宗介は疑問に思いつつ気にせず作業を続けた。すると、秋穂は宗介のお腹に手を回して後ろから抱きついて来た。


「うぉっ!?ビックリしたぁ...。え?何しとぉ急に?」

「........」

「えー...ここでだんまりとかマジかお前...。おっぱい当たってっから離れて欲しんだけど」


宗介に抱き着いたまま離れようとしない秋穂。そんな秋穂に構っていては夕飯も出来ないので放っておいて夕飯を作り終えた。ただおっぱいの感触だけはちゃんと楽しんだ。


「よしっ!完成!離れろ〜食うぞ」

「........(フリフリ)」

「はぁ!?食わねぇの?」

「...離れたくない」


今夜の秋穂は随分と積極的だ。

宗介は打開策として自分の足の間に秋穂を座らせて、二人重なり合って食べることにした。


「食い辛ぇ〜」

「美味し」

「ソリャ良カッタデース」


会話を挟みつつ夕飯を食べ終わって、洗い物も終えて帰ろうとした時、急に大雨が降って来た。


「あ!?おいマジか!」

「...雨だ」

「おいおいおい、確かに買い物行った時怪しいとは思ってたけどよぉ...」


雨はどうやら明日の朝まで続くらしく、宗介はどうしようかと悩んでた。

流石に同年代の女の子(しかもめちゃくちゃ可愛い)の家の泊まるのは男として相当危ない橋を渡ることになる。

かと言ってこの雨の中外へ出たら確実に風邪を引く。


「そうだ!傘!傘貸してくれたら帰れるわ!」


玄関には傘が無かった。

秋穂曰く、夏休み中の台風の日に外へ出たら傘が即ぶっ壊れてそのまま新しいのを買わずに今日を迎えたらしい。


「かっ〜!どうすっかなぁ、家までちょっとあるし...」

「泊まれば?」

「言うと思った...。あのなぁ秋穂ちゃん、お前はもっと自分の可愛さとナイスバディを見直したほうがいいぞ」

「........?」

「正直学校一の美少女と夜通し一緒に寝るとなったら結構な覚悟が必要だ」

「別に宗介なら良いけど?」

「やめろバカ!嬉しくなっちゃうだろ!」


ただ雨は先ほどよりも勢いを増していく。

泣く泣く宗介は秋穂の家で寝泊まりすることになった。

続けようかな...?とは思ってます。

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