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夏の樹  作者: 粥
36/64

三十六

「おかーさん!遊ぼー!」

「んー?良いよぉ〜何して遊ぼっか?」

「かくれんぼ!」

「どっちが鬼?」

「おかーさん!」

「じゃあ30数えたら探すよー」

「うん!」


とあるマンションの一室でそんな親子の会話が広がる。


「もーいいかい?」

「もーいいよー!」


返事を受けて、母親が子供を探し始める。


「どこかな〜?」


色々な場所を探しているうちに、何処からかクスクスと笑い声が聞こえた。

それを辿っていくと、服をしまっているタンスの陰に隠れている事がわかった。


「見つけた〜!」

「きゃー!見つかったー!」


男の子は楽しそうにキャッキャッと笑っている。釣られて母親も笑ってしまう。


「おとーさんまだかなぁ?」

「もうすぐ帰って来るんじゃないかなぁ?」

「もうすぐってどのくらい?」

「んーあそこの時計の針が、6を指したらかなぁ?」

「え〜長い...」

「意外とすぐかもよ?」

「ほんと〜?」


男の子は項垂れてソファの上に寝転がった。


そして言っていた時計の針が6を指した時、ちょうど誰かが玄関を開けて帰って来た。


「おとーさんだ!」

「迎えに行こ〜」


二人で玄関へ向かうと、スーツを着た父親が帰って来ていた。


「おかえりー!」

「おかえり那月」

「ただいま二人とも」


これは、槐と那月とその二人の子供のお話。


「お母さんと仲良く待ってた?」

「かくれんぼしてた!」

「どっちが鬼?」

「私」

「見つかっちゃった?」

「見つかっちゃったー」

「そっか〜次は俺とやるか?」

「やるー!」

「の前にお風呂入って来て二人とも」

「「はーい」」


仲良く同じ顔の二人が返事をしてお風呂場へと向かった。

その間の槐はご飯を作る為に台所へ向かった。


大和(やまと)、明日水族館行こう」

「えっ!明日水族館行くの!?」

「ん?友達と遊ぶ約束してたか?」

「んーん!してない!」

「じゃあお母さんと、俺と大和の三人で行こうか」

「行くー!」


そんな約束をしてお風呂から上がると夕飯が出来上がりそうだった。


「さっぱり〜。今日のご飯何?」

「ハンバーグ、今回形崩れなかったんだ〜」

「おぉ〜凄い」

「えへへぇ〜」

「おかーさん凄ーい!!」

「いやはや照れるな〜」

「いやはや〜」


三人で食卓を囲み、談笑しながらご飯を食べる。


「明日、実家に水族館へ行こう。ついでに実家寄ろうと思ってるんだけど、良い?」

「随分急だね、いや行けるけどさ」

「良かった、水族館へ行く前に実家寄るから」

「りょーかい」



次の日、三人は車に乗って那月の実家に向かった。


「おばあちゃ〜ん!」

「あら〜よく来たねぇ大和くん!」


ちょこちょこ家に来てはいるが、全く老いた様子が見えない那月の母。


「久しぶり母さん」

「お久しぶりです」

「二人も久しぶり〜元気だった?」

「藍那は?」

「いるよ〜」


那月が家を出てから六年。藍那は現在16歳で高校一年生だった。

今日は休日だったので、藍那も家にいた。


「藍那、久しぶり」

「お兄ちゃん、久しぶり」

「元気してたか?」

「まぁね」

「学校どうよ?」

「退屈。お姉ちゃんいたらなぁ〜っていつも思ってる」

「だってさ」


二人で話をしているつもりだったが、大和と一緒に槐もやって来ていて、藍那の今の言葉を聞いていた。


「嬉しいなぁ、今でもそんなこと言ってくれるなんて」

「お、お姉ちゃん...。いたんだ」

「いたよ〜。元気そうで良かった」

「藍那ちゃん!藍那ちゃんだ!」

「おぉ〜大和元気?」

「元気ー!」


大和は藍那に抱きついた。


全員居間に集まって、久しぶりの再会を喜んだ。


「もう大和くんも4歳か〜あんたたちいくつ?」

「藍那が16で俺らが12歳差だから...28か」

「大人になったねぇ」

「藍那ももうあの時の俺らと同い年だからなぁ」

「藍那ちゃん彼氏できた?」

「いないし、いらない」

「相変わらず擦れてるなぁ。あの幼馴染はどうしたの?」

「あいつの事は良いじゃん別に。私は一人が好きなの!それでいつかお姉ちゃんみたいな綺麗な人になるの」

「わぁ嬉しい」

「まぁ好きにすれば良いんだけどさ」


その後ちょっとだけ時間を潰した後、那月たちは水族館へ向かった。


どうやら大和は楽しんでくれたみたいで、帰りの車の中ではスースーと寝息を立てて眠ってしまっていた。

二人の子供である大和(やまと)くんの名前は、もちろん槐の名字から取りました。

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