三十三
「宗介、今から部活?」
「おー秋穂じゃん、そうだぜぃ。お前も?」
「ん」
「あそ、今日は授業中めっちゃ寝たからすげぇ目が冴え渡ってんだ〜」
「寝ちゃダメ」
「勉強出来るから良いんだよ」
そんな会話をしながら二人は体育館へ向かった。
今日も今日とて練習を終えて家路を歩いていると、秋穂が前を歩いていたので宗介は後ろから声をかけた。
「よっ!秋穂!」
「........っ!...宗介」
「一人で歩いてんなよ。危ねぇぞ〜不審者とかいたらどうすんだ」
「別に襲われない」
「自分の顔の完成度を再確認してから言ってくれ〜」
そこから宗介と秋穂は並んで一緒に歩いて帰った。
「で、今日そんなに上手くいかなかったんだ」
「練習で良かったね」
「やっ!練習でも出来なきゃ試合でも出来ねぇんだ!」
「ふーん」
そんな話をしてると宗介もっとバスケがしたくなってきてしまい、槐の言ってたバスケコートのある公園に向かう事にした。
「と、言うことで秋穂を家に送ったら行くから、さっさと帰んぞ」
「...うん」
秋穂はなんか、『別に放っといて行ってくれて構わない』といった顔をしている。
女の子を一人で帰らせるわけにはいかないと考えている宗介は、秋穂を家に送った。
秋穂の家に送り終わると、秋穂が何故かずっと立ち止まっている。
「どした?帰んねぇのか?」
「...私も行っちゃダメ?」
「は?ダメだろ。つか来てどうすんの?」
「宗介見てる」
「それの何が楽しいの?」
「良いの」
「はぁ〜...まぁいいや、良いけど俺も初めて行くところだからあんま離れんなよ?」
「ん」
秋穂が行きたいとごねたので、仕方なく秋穂も連れて公園に向かう。
公園に着くと、およそ良い人そうには見えない人たちがたくさんいて、その中に見覚えのある人が二人いた。那月と槐だった。
「那月〜大和さ〜ん」
「ん?」
「あれ?赤石くんだ」
二人は宗介に気付いて来てくれた。
「久しぶりだね、赤石くん」
「久しぶり大和さん。那月も元気?」
「まぁね、その子誰?どうして来たの?」
「部活じゃ足りなかったからこっち来てやろうと思った。こいつは俺の友達の秋穂、何故か一緒に行きたいって言ってたから連れて来た」
「そっか〜初めまして、大和 槐と言います」
「長谷 那月です」
「古谷 秋穂」
「そして俺が...」
「お前は良いよ」
「知ってるからね」
「大丈夫」
「........あそ」
全員の自己紹介が終わったところで、俺と大和さんはコートにいたチームで試合を始めた。
那月と秋穂はコート脇のベンチに座って同じ顔で同じ体勢で観戦していた。
俺と大和さんは敵対しているので、ようやく大和さんの実力を身を以て知ることが出来ると思うと、少し楽しみだった。
そして早速宗介の元へボールが回って来て、槐が相手に来た。
「文化祭以降気になってたんだ〜。どんだけ上手いのか」
「マジか〜俺も気になってたけど、期待に添えなかったらごめんな〜」
「じゃあやろうよ」
「だな」
悠長に喋っていた二人は、急に真剣な顔になって激しい攻防を始めた。
それを見ていたベンチに座っている那月と秋穂の両名は、お互い別々の反応を見せた。
宗介は槐が怪我しないか不安そうに見てて、秋穂は宗介のバスケをしている姿を始めてちゃんと見て驚いていた。
(言うだけある、上手い...!)
(進学校のバスケ部...どれくらいのレベルかと思ってたけど流石)
点を入れたり入れられたりの繰り返し、どちらか二人にボールが回れば必ず二人だけの対決になる程で、周りが介入できる隙が無いほどだった。
「槐...頑張れ」
「宗介...」
ベンチで見守る二人も固唾をのんで見守っている中、二人は全然気付かず目の前の相手に集中している。
終わりの掛け声と共に二人は那月と秋穂のいるベンチに戻った。
「なぁなぁ!見てたか秋穂!俺の綺麗なスリー!」
「スリー...?分かんないけど凄かった」
「今日はシュートいっぱい決まったと思う」
「うん見てたよ、いっぱい点入れてカッコ良かった」
「「えへへ〜」」
二人とも褒められて嬉しそうに笑っている。
その後は二人ともまた試合したり、那月と秋穂は少しだけ親睦を深めていた。
「宗介の友達?」
「まぁ...あなたは?」
「友達」
「あそ」
「秋穂さん...だっけ?」
「ん」
「宗介をよろしく。あいつ面白い奴だから、近くにいてあげてよ」
「........」
「友達としてだったり、もっと深い関係でだって良いけど」
「...何それ」
「あれ?てっきり宗介の事好きなのかと思ってたけど」
「...分かんない。から、確かめてる」
「そか、まぁ何かあったら相談乗るよ、あいつの事なら何かしら教えてあげる」
「ありがと...?」
「どういたしまして」
二人は同じ温度同じ波長なのかもしれない。
明日の3時には三十四話をあげます。




